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Blade Runner 2049感想(ネタバレあり)

ようやく観ましたよ。。。!(遅い

面白かった!と言いたいところなんですが、ん?あれ?的な感じだったのでその辺を書き出してみました。映像は素晴らしかったんですけどね。

。。。の前に、2049の前日譚3本を載せておきます。これを見ると理解が深まるところがあるので。

2022年、ブラックアウト。レプリカントが行動を起こす。
(冒頭の出だし、字幕には2022年にNEXUS6が絶えNEXUS8出荷とあるが原文には日時は書いてないので無視してよいかと。もっと前にNEXUS8は出荷してるはず)

2036年、ウォレスが新型の従順なレプリカントの製造を開始。

2048年。サッパーが犯罪を起こす。

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感想(ネタバレあり)

他人を理解すること、共存、正義、親子の絆なども含まれているが、それをひっくるめて人間とは?生命とは?を問う作品。

人間とレプリカントの争いが主だが、その延長として、データのキャラクター(いわゆる2.5次元キャラ)も愛せるのかという話にもなっている。結局人間もデータであり、アーサー・C・クラークの小説「3001年終局への旅」にあるように「(作品ではなく)芸術家一人がすっぽり入るのだ」も暗示している。
それくらいホログラムのジョイは洗練されていると思われる。肉体の人間とレプリカント、精神の人間とデータのキャラクターの対比、どちらも描いている点も面白い。

そしてこの「ホログラム」が多用されているのがまた面白いところ。この辺は「新スタートレック」で登場した「ホロデッキ」に似たようなエピソードが沢山あるが、それを更に一歩進めた感じ。特にラブシーンは作品内でも最近のSF作品でも突出した演出であろう。

今までKのリビングでしか現れる事が出来なかったジョイが、エマネーターで狭かった行動範囲から解放された時の喜びは、レプリカントが受けている抑圧と対称的な部分がある(レプリカント解放の暗示として捉えられなくもないかなと)。

人工生命体の妊娠、出産という点も含め、人間と人工生命体の違いという点では、ドラマ「バトルスター・ギャラクティカ」でも描かれている。
面白いのはガフ役のエドワード・ジェームス・オルモスが主演ウィリアム・アダマを演じていること。
そしてウォレスがデッカードに「子供はいないだろう?」と聞かれたときに答えたセリフ「数百万いる」。この言葉は「ギャラクティカ」でも使われているのだが、状況としてはウォレスも子供居るかと聞かれればこう答えて問題はないし、インパクトあるセリフなので、わざわざリスペクトのために用意されたセリフではない可能性は大いにあるものの、やはり共通項を感じざるを得ない。
(ちなみに、ギャラクティカではこの点についてもっと壮大な答えを提示している)

またラスベガスの巨大な像は、個人的には「プロメテウス」と「DUNE」(ホドロフスキー版も含め)を連想させた。DUNEにはショーン・ヤングも出てましたね:)
(ホドロフスキー版は構想だけで終わって映像化はされていないのだが、その時の製作スタッフが集まってエイリアンを手がけている。意外と繋がっているものだ)

しかしながらこのあたりの原点はブレードランナーに戻ってくる所も多いはずだ。(まぁもっと昔の「2001年〜」のHAL、、もしかしたら「メトロポリス」まで遡れるかもしれないけど。。。。w)

あと印象に残っているのは女性たちが涙を流す所。ラブ、ジョイ、アナが涙を零している。理由はそれぞれだが、ストーリーの根底で繋がっているのかも知れない。
そしてアナの涙が一番つらい。

気づいた点、疑問点など。

街に明かりが乏しい=活気がない。

ウォレス社に至っては明かりが一つもない。2022年以降は環境破壊が進んだせいなのかはわからないが、日中のシーンは曇りばかりなんだし、もう少し夜景を派手にしてほしかった。薄く霧を通して霞む町並みでも良かったと思う。
逆に地上の雑多なストリートやウォレス社内のセットは素晴らしい。タルコフスキーの影響らしい(タルコフスキーについては昔「惑星ソラリス」を観た程度なのでよく分からないのだが)。
また太陽光発電施設、ゴミ処理場、ラスベガスの設定も良い。が、ラスベガスがなぜ放射能汚染されてるのかは解らない。ブラックアウトのせいだろうか?
あと一箇所だけ妙に拘っているところがあって、Kがレジスタンスに助けられて焚き火の火の粉が舞い上がるシーン。火の粉が街明かりになり雨が降る市街地に移り変わるのはさすがだなぁと思う。

・Kはレプリカントが自明なのになぜ普通に生活しているのか。

レプリカントは奴隷の様に売買され、所有されるものだと思っていたのだが。。。LAPDが所有して生活までを管理しているのなら理解できるのだが、ブレードランナーに配属されるレプリカントなど一部の職業では雇用契約されるものの、「主人に従事する」という形態は必要ないのだろうか。
(これはデッカードがレプリカントなのか?の疑問にも通じる。ブレードランナーはレプリカントというのがこの世界での一般的常識なのかも知れない。まぁリドリー・スコット自身がレプリカントだよと公言しているらしいのだが、製作陣営内でも意見が別れているとのこと)

・アナの記憶はいつどこでKに埋め込まれたのか?

これが最大の疑問。レジスタンスもKにアナの記憶があることを知らないか、新型全てに移植されている可能性もある。ここを議論するのが面白いのかも知れない。一つのヒントとして、フレイザのセリフ「皆、自分だと思いたい」に注目したい。

ところでこの記憶の中でK(実際はアナ)だけ髪を伸ばしている。
孤児院のシーンをじっくり見ると、どうやら男の子は丸坊主で、女の子は髪を伸ばしている。つまり記憶の子供は(記憶がアナのものであると判明する前から)女の子を示唆している可能性が。
(最初見た時「Kだけ髪はやしてるなぁ主演だからかなぁ」と思ったけど、ちゃんと設定があるのかもしれない、あるんだろうな)

・結局Kはデコイ(偽物)に過ぎなかったのか?なぜKが選ばれたのか。

Kは残念なことにデコイだろう。しかしKが選ばれた理由は解らない。上記の通り、もしかしたらKと同じ製造ラインのレプリカントまたはブレードランナーは全員同じ記憶を持っているのかも知れない。

追記:このデコイが有効になるためには、サッパーの農場にある木の根元の日付を見つけないといけない。
前日譚2048でサッパーは重大なミスを犯してしまいLAPDに目をつけられ、その結果レイチェルの遺骨まで発見されてしまうが、そうなった時の次のプランとして木の根元に日付を刻印しておくことで、アナの記憶を持つ人物に自ら疑惑をもたせ、アナから目を逸らすという算段なのだろう。

そしてその状況に遭遇する人材として、、ブレードランナーが最適ではなかろうか。

結果、K個人をデコイに仕立てたのではなく、少なくともブレードランナーとして製造されたレプリカント全員がアナの記憶を持っていると推測される。
(さらに日付が公表された場合を考えると、記憶を持つ全てのブレードランナーが俺だ俺だと(映画「スパルタカス」のラストの様な事態に)なり、より混乱するというパターンもあったのかもしれないねw)

・娼婦のマリエットがタイミングよく現れた理由と発信器を仕込んだ理由。

ここもちょっとした疑問。マリエットを呼んだのはジョイだが、そのマリエットはレジスタンスの一員でKの服に発信器を仕込む任務を持っていた。
なぜジョイは娼婦の中からマリエットを選んだのか?
(勿論前半の部分にあるKとマリエットの出会いでKが彼女を気に入ったのを知った、またはマリエットが気に入らせたのかも知れないのだが。。。デッカードがレイチェルに恣意的に惹かれたのでは?というウォレスの推測と被るし)

そもそも、なぜマリエット(というか娼婦)を呼んだのだろうか?
実はそのシーンの後、意味深にジョイの看板が大写しになる。ここに何か伏線がありそうな。。?(ちなみにここは前作でデッカードとレイチェルのキスシーン直後に強力ワカモトの看板が映し出されるシーンと被る。理由はそれだけかもしれない。。w)

その次の朝のシーンでも、木彫りの子馬を手にするマリエット、そしてマリエットがジョイに言ったセリフ「あなたの中を覗いてみたけど〜」。
もしかしたら、ラブがジョイの位置情報を得ていたように、レジスタンス側もジョイを通してKを監視していたのかも知れない。またはジョイ自身が。。。?
(ラブもマリエットもKがジョイを持っていることをジョイの起動音?通知音?を聞いているため知っている)

・ジョイがKに「自分も連れて行って」と懇願した理由。

純粋にKの事が好きだからというのもあるが、サーバーとのリンクを断ちバックアップを消し、スタンドアロンになってでもKに付いていくことが彼女の「使命」だったのかも知れない。

・ウォレスはデッカードがレプリカントか人間かを判別していたか?

ブレードランナー公開後から30年間くらいずっと疑問になっている謎だが、これはもう「どっちでもいいんじゃね?」である。というのはデッカードがレプリカントだろうが人間だろうが、「奇跡」は起きてしまったのだ。レプリカントの繁殖条件として科学的考証をするのはいいが、物語の趣旨から外れていっているし、さほど重要ではない。
野暮な話だが、PR活動という商業的視点からすると、ここを伏せておいたほうが話題になるから謎のままにしといたほうが映像業界的にもオイシイのだ。

とはいいつつ、、、ここで少しばかり気になる点を。
まずウォレスがデッカードに「もしあなたが創られた存在なら」と問う。
この時ウォレスはレイチェルの繁殖能力の実証の為にデッカードが選ばれたという推測を語っている(多分これは真意で、タイレルが仕組んだと思われる)。そこにわざわざこのセリフが入っている点に注目したい(ファンサービスかも知れないが)。
(なぜデッカードが選ばれたのかという疑問に繋がるがここでは割愛)

そして次にラブが意味深な発言をしている。
ウォレスが「オフワールド(植民星)に口を割らせるすべてがある」と発言している。つまり植民星にある施設に移送される事が解っているのに、その後デッカードが移送中にラブに「どこに行くんだ」と聞く。ラブは「故郷よ」と答えている。故郷とはどこを指すのだろうか?

・デッカードがKに訊く「俺は君にとって何だ?」への返答

Kははにかんだだけで答えず、それが絵的にもベストだと思うのだが、もし何かセリフを入れるとしたら「他人に乾杯」というセリフがしっくりくると思う(ラスベガスでの発言の前のデッカードのセリフも含めて)。

・ウォレスが目指したもの

「2036」で新型レプリカントに自殺をさせ、本作品でも生まれたてのレプリカントの腹を割くという非情さを見せるウォレスだが、実は人類存続の心配をしている。実際オフワールドの環境改善事業をし、その成功でタイレル社を買取り、更にレプリカントに困難な仕事をさせようとしている。人間至上主義ではあるのだが、それは人間存続のためでもある。
しかしそれは、前作で生き延びたいが為に殺人を繰り返してきたNEXUS6たちと同じでもあるなぁと思える(もっとも彼らには時間がなかったのだが。。)。

・ブラックアウト(大停電)の真意は?

特典2022の通り、大停電はレプリカントの仕業なのだが、アナが生まれたのが2021年なのでレイチェルが出産したのがきっかけかもしれない。
ついでにアナの痕跡も?とも思ったのだが、考えてみたら彼女は逃亡先での自然分娩で生まれたのでデータは無いはず。なので目的は、特典映像にある通りNEXUS8達のデータ消失だろうが、最重要なのはレイチェルのデータを消すことだろう。

・デッカードとレイチェルがレプリカント達とどうやって出会ったのか?

この辺描いてほしいですね;)

・この先の未来は?

あくまでネタで。
レジスタンスはウォレス社か、少なくともウォレス本人を倒すだろう。しかし反乱はここまで。レプリカント達はブレードランナー達に狩られ、もしくは人間界に溶け込んでいく。もしレイチェルのデータ=レプリカント繁殖の鍵があったとしても、今度は扉がないのだ。
そしてウォレスの遺産はウェイランド社が得る。。。w

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映像芸術、退廃的未来の描写としてはなかなか見どころはあるんですが、ストーリーを追うとなるとあちこち引っかかってしまって、上手く感情移入出来ませんでしたかね。。シーン毎には納得、感動するんだけど、それぞれのシーンの繋がりや理由がよく分からないというか。。。

逆にそこを理解するために何度も見返すという価値がついた作品と言えるかもしれません。


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