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「鷲は舞い降りた」という翻訳

今年はアポロ11号が月に着陸してから丁度50年になりますね:)
というわけで映画/ドラマを紹介しようと思いますがその前に一つ書いておこうと思いまして。

1969年7月20日、アポロ11号の月着陸船イーグルが月面の静かの海に着陸しました。そのときの言葉(アームストロングが月面に降り立った時のじゃないですよ)ですが

「Tranquility Base here, The Eagle has landed.」

これについて日本語では「こちら静かの海基地、鷲は舞い降りた」という翻訳がついていることが多いです。で、この「鷲は舞い降りた」というのがあれこれ指摘されてるみたいなんですが、個人的には単純な言い換えではないような気がするというか、偶然というか要素が重なった結果こうなったんじゃないかなぁと思うのです。

まず最初の前提として、「月着陸船の名前がイーグルであること」「この着陸が歴史的快挙になるだろうこと」があります。
そして原文の「The Eagle has landed.」は「(月着陸船の)イーグルが着陸した」が正確なところでしょう。
しかし「鷲は舞い降りた」としたのは多分、直訳の「着陸した」だと歴史的偉業に対してインパクトが弱いと判断したんだろうと思います。丁度宇宙船の名前がイーグルだったおかげもあって、鷲がふわりと舞い降りるような印象を与える翻訳が可能になったんじゃないかなと。
日本語の語感も良く、少なくとも日本人の心にスッと入ってくる言葉としてはかなり良い翻訳ではないでしょうか。個人的にはとても素敵な表現に思います。
。。。もし宇宙船の名前が他の名前だったら?例えばアポロ9号の着陸船の名前「スパイダー」だと:

「蜘蛛は舞い降りた」

いやいや、想像つかないし絶対採用されないですねw。このような舞い降りる印象のない場合はダイレクトに「宇宙船〇〇は着陸した」にするのが無難でしょうね。まぁ歴史に名を残すであろう船に「スパイダー」と付ける事もないでしょうけど。

というわけで「イーグル」であることが1つ目の要素だと思うんですが、もう一つ要素があると思えるんです。それがその前の言葉「Tranquility Base here」。

ヒューストンと通信するときに使っている一般的な呼びかけ「イーグルからヒューストンへ」をここで使っていないことに注目。NASAの指示なのかアームストロングがそう表現したかったからなのかは分かりませんが、「こちら静かの基地」と発言しています。

月着陸船イーグルは月面に降り立ったその瞬間から「静かの基地」になったんですね。「基地」とした事から「我々は到達した、征服した」という印象を受けます。
この表現はアメリカ的で、英語の表現だけなら「The Eagle has landed」よりもグッとくる言葉に思えます。

しかしまだヒューストンへ呼びかけただけで着陸したことを報告していません。その報告に「我々は着陸した」に当たる部分を「イーグルは着陸した」にしたという形じゃないでしょうか。

つまり最初の呼びかけをイーグルから静かの基地に変えたこと、その結果イーグルを後ろに持ってきたこと。翻訳者はイーグル+着陸をイメージしやすく、また歴史的偉業に値する様に「舞い降りた」と訳した、って事になるんじゃないでしょうかね。

アームストロングが「静かの基地」と表現したことも、日本語の翻訳者が「鷲は舞い降りた」と訳したことも、なんとも詩的で美しい表現だなぁと感じていますし、意訳だと分かっていればこのままでも良いんじゃないかな、と思ってます:)




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