3大紙の発行社境界・三重の県版は
仕事の都合で6月下旬まで1か月ほどの予定で三重県伊賀地方に住んでいます。これを好機に2020年6月6日(土)、三重県内で新聞流通調査を行いました。その結果を3回に分けてご報告します。第2回は、発行社境界が県内に存在する三重の朝毎読3紙で、県版はどのようになっているのか見てみましょう。
▼前回記事
三重県内にある本支社境界
朝日、毎日、読売、日経の4全国紙は大阪と名古屋の本支社にそれぞれ発行機能を持ち、各紙面の販売地域境界は三重県内に存在します。
4紙で、大阪本社紙面が配達されているのは伊賀地方(伊賀市、名張市)と熊野地方(熊野市、南牟婁郡)で、その他では名古屋発行の紙面が売られています。ただし読売新聞は熊野地方でも中部支社紙面が販売されます。
伊賀地方は京都や奈良などの都に近いことや、近鉄大阪線で大阪市内に直結することから関西との結び付きが強くあります。また熊野地方は和歌山県新宮市との結び付きが強く、和歌山県南部とともに「南紀」を形成しています。こうしたことから、これらの地方は大阪本社のエリアに含まれています。
県版はどうなる
そうなると気になるのが県版の扱い方です。地域面、地方版とも言いますが、題字、定型記事などの様式は発行本支社ごとにバリエーションが用意されることもあります。また県版は通常、見開きの左側、第1県版がそのエリア密着の情報を載せ、右側の第2県版はより広い複数県のブロック単位で編集されます。
三重県は発行社がまたがり、関西と東海の境ということもあって、このあたりの編集がどのようになっているのかは私も長らく興味を持ってきたものの調べる機会に恵まれませんでした。今回、三重中心部、伊賀地方、熊野地方のすべてで全国紙を入手しましたので、比較検証していきます。なお産経新聞は名古屋に発行拠点がなく、日本経済新聞は三重では県単位の地域面がありませんので本稿では扱いません。
朝日新聞
朝日新聞の県版は、名古屋本社発行の三重版、大阪本社発行の伊賀版と熊野版があります。第1県版のトップ記事は発行本社をまたいでも見出し、レイアウトいずれも同じでした。三重版と熊野版は他にも多くの記事が共通しています。
第2県版も東海地方のスポーツに関する話題を扱う「+Cスポーツ」が3版共通で掲載されました。名古屋本社の企画が大阪本社紙面にも載っていることになります。
記事部分では共通する箇所が多かったものの、広告は三重版と伊賀版・熊野版とでは全く異なっており、こちらは本社別に取り扱われていることがうかがえます。
毎日新聞
毎日新聞は大阪本社管内である伊賀版と熊野版で紙面ががらっと変わります。伊賀版は大阪本社の他地域の県版同様、紙面最上部1段分を使って題字、連絡先、天気、星占いが掲載されます。一方、熊野地方向け紙面は、中部本社発行の三重版と共通レイアウトで、題字も「三重版」となっており、ページ数隣の版数表記で「熊野」と表示されるにとどまっています。ただし第1県版と第2県版の左右は、三重版と熊野向け紙面で入れ替わっています。
三重版と熊野向け紙面の第2県版は「東海だより」ですが、伊賀版の第2県版は「三重」の題字が示され、この日は三重版、熊野向け紙面にはなかった松阪や津のニュースが載りました。
このように二つの三重版で記事は共通している一方、伊賀版は全く別立てで編集されています。ところが熊野向け紙面の広告は、第1県版(「三重」の題字がある方)は三重版と共通しているものの、第2県版の方は伊賀版と同じになっているという複雑な出稿態勢になっています。
編集面で二つの三重版に違いがないか目を凝らしたところ、第1県版右下の天気予報コーナーで差し替えがありました。三重版では洗濯指数、行楽地予報が掲載されている箇所に、熊野向け紙面では星占いが載っています。星占いは大阪本社企画で、先述の通り他の大阪本社の県版では紙面上部に載っていますが、熊野向け紙面ではレイアウトが異なるため場所を移して載せている格好です。
読売新聞
読売新聞は3紙では唯一、熊野地方でも中部支社紙面が販売されています。本来は中部支社発行の三重県内の地域面は、三重北勢、三重中南勢、三重南紀の3地域に分かれるはずですが、この日の紙面は「三重」1種類のみでした。尾鷲市立図書館でバックナンバーを確認したところ、4月10日付に「*紙面制作の都合により、題字を『三重』に統合します。」のおことわりが掲載されていました。
読売新聞の地域面を巡っては西部本社の福岡県内でも新型コロナウイルスの対応として地域面が統合されている例があります。
よって現在、三重県内の読売新聞の地域面は、中部支社の三重版と大阪本社の伊賀版のみということになります。逆に言えば伊賀版は今回統合されなかったということですね。
紙面は各版で記事、広告ともに完全独自編集になっています。県内の児童虐待相談件数が最多になったという記事は両方載りましたが、三重版ではトップ、伊賀版では準トップと扱いが異なります。第2県版も全く異なる内容でした。
次回は県南で入手した地域紙をご紹介します。
※本記事は2020年6月8日にCharlieInTheFogで公開した記事(元リンク)を転載したものです。