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どこまでもロールスロイス! マッカランのプレミアム戦略《雷鳥③》
■前回まで
ウイスキーの本場:スコットランドで、数量でトップクラスに売れているウイスキー『ザ・フェイマス・グラウス』。
そのブランド権を所有するエドリントン・グループ(マッカランで有名)
から、
ウィリアム・グラント&サンズ社(グレンフィディックで有名)
へ
ブランドが売却される予定、というニュースが流れたことをご紹介しました。
エドリントン社がザ・フェイマス・グラウスとネイキッドモルトをウィリアムグラント&サンズに売却へ | ウイスキーを好きになるメディア|Barrel-バレル- (barrel365.com)
で、エドリントン・グループは、2010年に買収したブレンデッド・スコッチ「カティーサーク」も、2018年にフランスの会社へ売却してしまいました。
「カティーサーク」や、「ザ・フェイマス・グラウス」といった、『売れているブランド』を、次々に売却してしまったエドリントン・グループ。
一体、何をしたいのでしょうか?
■シングルモルトのロールスロイス
エドリントンの所有するブランドの中で、一番人気はマッカランです。
そのマッカランが、ロンドンの有名百貨店ハロッズに
シングルモルトのロールスロイス
と紹介をされたのは、ウイスキー愛好家の中では有名な話です。
【決定版】ザ・マッカランはどんなウイスキー?種類・値段・味を徹底解説 | 美味しいお酒研究所
つまり「マッカランはラグジュアリーなウイスキーブランド」として、以前から認識されていました。
そして、前回ご紹介しましたが、エドリントンは2018年にマッカランに第3蒸溜所を新設しましたが、まるで美術館や高級ホテルのようなラグジュアリーな蒸溜所となっています。
つまり、エドリントンはマッカランの「ロールスロイスっぽいラグジュアリーな印象」を変えることく、そのままその方向=『高級路線』へ突っ走っているわけです!
ちなみに、マッカランはシングルモルトにおいて世界で3番目に売れています。(上には、グランフィディックとグレンリベットが、常に1位を競っています。)
■エドリントンの高級戦略
このエドリントン・グループの『高級戦略への集中』という戦略を知ると、「カティーサーク」や、「ザ・フェイマス・グラウス」を売却してしまった理由が見えてきます。
つまり、
スタンダードクラスではなくて、
プレミアムクラスのウイスキーの特化する!
というのがエドリントンの打ち出している方向性なのです。
もう少し詳しくお話しします。
■エドリントンの頭の中
ウイスキーは、熟成が必要なお酒です。
そしてウイスキーは原酒をブレンドしてつくるお酒です。
ブレンドにつかう原酒は、数年前に蒸溜して木樽に詰めておいたものなので、数量に限りがあります。
マッカラン蒸溜所でつくった原酒は、エドリントンが持っていた(いる)
▽カティーサーク(他社から買収したブランド)
▽ザ・フェイマス・グラウス(自社が発売した歴史あるブランド)
▽マッカラン(自社の看板シングルモルト)
のどの商品にも使われていた(いる)ことでしょう。
上の2つは安い価格帯のブレンデッド・ウイスキーです。
一番下のマッカランは、高価格帯のシングルモルトです。
3つとも売れている商品ですが、使える原酒の量には「限り」があります。
ということは、一番効果的な(売上&利益が上がる)商品を1つに絞って、それに集中した方が、経営効率が良くなるわけです。
つまり、
カティーサーク/ザ・フェイマス・グラウス
に使っていた若めの原酒を
それに使わずにさらに熟成を進めて、
長期熟成原酒にしてマッカランに使う!
これが、エドリントンの打ち出した方針なのだと思います。
(私の推測なので、全然違っていたらスミマセン)
■それにしても勇気ありますよね
今後もプレミアムウイスキー市場が、伸び続ける保証はありません。
それ以上に、自社で1897年に誕生させ、120年以上に渡り販売してきた「グラウス・ブランド」のブレンデットウイスキーを手放す経営判断は、なかなかだと思います。
だって、現在でも本場スコットランドで、トップクラスに売れているウイスキーなんですよ?
それも思いっきり競合他社のウィリアム・グラント&サンズ社への売却です。
簡単に言えば、
サントリーが、1937年に発売して、
日本で一番売れているウイスキーの
『角瓶ブランド』をニッカに売却。
その分の原酒を
「山崎」「白州」「響」に回して、
高級路線に特化しまーす!
と発表したのと同じことです。
そう考えると、あらためてこの発表には驚かされます。
■もし雷鳥の売却が成立すれば
現在は、当局の承認待ちの状況だと言います。
それはそのはずで、スコットランドでの売れ筋ウイスキーは、この三つ巴です。
▽ベル(ディアジオ社)
▽ザ・フェイマス・グラウス
(今はエドリントン・グループ)
▽グランツ
(ウィリアム・グラント&サンズ社)
「ウィリアム・グラント&サンズのシェアが高くなり過ぎるんじゃね?」
「独占禁止法的にどうなのよ?」
と当局がチェックするレベルの案件だと思います。
それにしても、もしこの売却が成立すれば、「ザ・フェイマス・グラウスのブレンド・レシピ」は変わることになるでしょう。
その時の「新旧飲み比べ」に備えて、今のうちから1本、ザ・フェイマス・グライスをストックしておくのも面白いかも知れませんね!
以上で、3話に渡ったザ・フェイマス・グラウスのお話を終了させていただきます。
お付き合い、ありがとうございました!