
木樽熟成は突然に・・・ 《5大ウイスキー②》
■5大ウイスキーについての2話目です
《チャーリー流:世界5大ウイスキーの3分類》
◇ウイスキー発祥国系
・アイルランド
・スコットランド
◇移民系
・アメリカ
・カナダ
◇産業としてスタート
・日本
前回は、アイルランドで誕生した「大麦の蒸溜酒=透明なウイスキー」が、すぐお隣りのスコットランドへ伝わった、というところまでご紹介しました。
その続きです。
■ウイスキーに課税
アイルランドでも、スコットランドでも、当初は余剰穀物から農民が自家用に飲む透明なウイスキーをつくっていたと思われます。
そして、その透明ウイスキーの流通量が増え、商業的な売買が行われるようになると、お国がウイスキーに「税金」をかけるようになります。
この「お国がお酒に税金をかける」というのは古今東西、どの国でもほぼ同じ流れです。(日本でも一緒)
そして、アイルランドでも、スコットランドでも、ウイスキーを密造するようになりました。
■密造のメッカ:ハイランド
アイルランドや、スコットランドのローランド(平地・都市部)では比較的大規模にウイスキーの生産が行われていました。
そのためそこで役人の目を盗んで密造することは難しい状況でした。
ウイスキーの密造には、
役人の目の届かない山奥
&
小川のある谷のほとり
がベスポジでした。
ウイスキーづくりには、「大量の水」が必要です。
・仕込み水
・蒸溜したアルコール蒸気を冷却するための冷却水
・そのほか製麦時につかう水 など
そのため「川のほとり」が最適なのです。
で、役人の目の届かない「山奥の小川のほとり」は、その小川によって大地が浸食されているため、自然と『谷あい』に位置することになります。
スコットランドの山奥である「ハイランド」の「谷あい」で、ウイスキーを密造していたので、モルト蒸溜所の名前にはゲール語で『谷』を意味する『GLEN/グレン』が多いのです!
■シェリー樽に密造ウイスキーを隠す!
このスコットランドの山奥=ハイランドで密造が盛んになると、ウイスキー密造の取り締まりに役人が、わざわざハイランドまで来るようになります。
やべ! 役人が来たぞ!!
その透明なウスケボー(ウイスキー)をシェリー樽の中に入れて、山の中に隠しておけ!!
このようなシチュエーションがあって、半年や1年後に、隠しておいたシェリー樽の中の原酒を確認したら琥珀色になっていた。
なんかヤベー色してんなコレ。
飲めるのかな~。
(ゴクッ)
何コレ! メッチャまろやかになって旨くなっているやん!
これが木樽熟成の誕生と、一般的には言われています。
つまり、密造のメッカだったスコットランドのハイランドが、木樽熟成の発祥地であるという説です。
(個人的にはこの密造説だけでなく、いくつかの要因で複合的に各所で木樽熟成が始まったと思っていますが、本題からずれるので、まずはこの通説をベースに話を続けます。)
■木樽熟成は伝播する!
ハイランドで誕生した「ウイスキーの木樽熟成」は、あっという間にスコットランド中、そしてアイルランドにも伝わったと考えられます。
「木樽熟成」という工程は時間がかかりますが、作業自体は難しいものではありません。
そして熟成させた方が明確に美味しくなるのであれば、消費者は「琥珀色のついた方のウイスキー」を望むようになります。
また、この「琥珀色」というのは見た目としても超わかりやすい違いです。
消費者はすぐに「より熟成期間の長い琥珀色のウイスキー」を求めるようになります。
ウイスキーがかなり昔から「熟成期間が長いもの=古いもの=OLD」が好まれていたということが、その証拠だと思います。
例えば、確認できる中で一番歴史の古いブレンデッドされたウイスキーの銘柄名ですら、
アッシャーズ・
オールド・ヴァッテッド・グレンリベット
という名前なんですから!
これは以前に記事にしています。
最初から古さが好まれた変なお酒『ウイスキー』|チャーリー / ウイスキー日記
■木樽熟成は伝播する《日本》
日本では「お酒を木樽熟成させる」という文化はありませんでした。
明治期以前には日本酒を「熟成させる」という文化はありましたが、その場合は「甕」で熟成させていたので、「木樽熟成」ではありませんでした。
しかし、1929年に日本初の本格ウイスキー白札が発売され、第二次大戦後には日本国内でもウイスキーブームが巻き起こり、ウイスキーを製造する国内メーカーが増えると、木樽熟成(オーク樽熟成)の技術が「焼酎」にも使われるようになりました。
今では、プレミアム焼酎ではオーク樽で熟成させている商品の方が多いのではないでしょうか?
それくらい木樽熟成は、酒質を明確に円やかにしてくれるのです!
ただし、「琥珀色の焼酎は焼酎としては法律上販売できない」ということは、以前から何度かご紹介している通りです↓
麦焼酎とウイスキーの違いは?|チャーリー / ウイスキー日記
■ウイスキーは新大陸へ!
こうしてウイスキーの老舗2ケ国で確立されたウイスキーというお酒は、大西洋を渡ってアメリカへ伝播します。
次回へ続きます!