『マルスウイスキー/本坊酒造』の「2蒸溜所・3熟成庫」体制!
■蒸溜を再開したマルス信州蒸溜所
前回は、ウイスキーブームの波に揉まれながらも、ウイスキーを生産し続けてきた、本坊酒造のウイスキー事業について、2011年に蒸溜を再開したところまでご紹介しました。
今回は、この続きからです!
■日本ウイスキー業界が増産体制へ!
2008年登場の角ジョッキによって、日本のウイスキー市場が25年ぶりに反転すると、2010年には山崎などプレミアム・ウイスキーにもその人気は波及します。
そして2014年には、NHKで竹鶴政孝をモデルとした「マッサン」が放映され、日本のウイスキーブームは一時的なものではなく、ひとつの文化として根付くこととなりました。
こうなるとと今度は逆に「ウイスキー原酒」が足りなくなりました。
25年間、ほぼ毎年二桁減を続けていたので、前年超えの原酒を仕込んでいたメーカーはありません。
ウイスキー人気復活から数年は、それまでの在庫で補えますが、高酒齢(例えば12年モノとか)から順に、「プレミアム・ウイスキーの出荷調整」が始まり、それは「角瓶」などのスタンダードクラスにも、供給のひっ迫が及ぶようになりました。
このウイスキーブームの再来により、各社は反転して増産体制を整えます。
代表的なところで、国内最大手のサントリーは、山崎蒸溜所では、2013年にポットスチルを4基増設。2014年には白州蒸溜所でもポットスチルを4基増設しています。
(その他にも各社の設備投資は盛りだくさん。こちらの記事をご参照ください↓)
ウイスキー蒸溜所は、建てたら終わりじゃないんです!|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
■本坊酒造が2つ目の蒸溜所を開設!
2011年に蒸溜を再開したマルス信州蒸溜所。
(2024年にマルス駒ヶ岳蒸溜所に改称)
そこからの本坊酒造の動きは早いです。
まず2014年、将来を見据えて信州蒸溜所の心臓部分とも言えるポットスチルを新しいものへ更新します。
(元々のポットスチルは、蒸溜所の入口に展示されています。)
さらには2016年、創業の地:鹿児島・津貫に、2つ目のウイスキー蒸溜所=マルス津貫蒸溜所を開設します。
これで本坊酒造は、サントリーやニッカと同様の「2モルト蒸溜所体制」となったのです!
攻めますね、本坊酒造!!
■2つの異なる環境のモルト蒸溜所を持つ意味合い
長野県のマルス駒ヶ岳蒸溜所は、標高798mと日本だけでなく世界的に見ても相当に高い場所で蒸溜所を行っています。
山だぜ日本! ジャパニーズウイスキーの可能性!!|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
標高の高いところで蒸溜を行えば、気圧が低いので、自然と「減圧蒸留」となりますから、沸点が下がり、一般的に酒質は軽くなります。
(常圧蒸溜と減圧蒸溜についてはこちら↓をご参照ください。)
《焼酎 vs ウイスキー》 蒸溜器の違い=減圧蒸留とは? 『ニッカ・ザ・グレーン』⑧|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
また高地の冷涼な環境では、木樽熟成はゆっくりと進みます。
一方で、マルス津貫蒸溜所は、標高約60m。標高が全然違います。
また鹿児島県という温暖な環境は、蒸溜液(ニューポット/ニューメイク)や、木樽熟成に大きな影響を与えます。
特に熟成では、冷涼なスコットランドなどでは考えられないようなダイナミックなスピードで原酒は琥珀へと色付きます。
本坊酒造「マルス津貫蒸溜所」竣工 ジャパニーズウイスキーに南の風を | WANDS (wandsmagazine.jp)
■屋久島にウイスキー熟成庫!
本坊酒造の動きは、津貫蒸溜所・開設だけに留まりません。
本坊酒造は世界遺産の島:屋久島に焼酎蔵「屋久島伝承館」を持っています。
それに併設する形で2016年、屋久島にウイスキー熟成庫「屋久島エージングセラー」を完成させたのです!
【公式】本坊酒造 マルス屋久島エージングセラー (youtube.com)
「屋久島で熟成させたウイスキー」って、なんかそそられますよね~。
多雨で有名な屋久島です。
湿度の高さは、一般的にウイスキーの熟成にプラスに働くとされます。
そしてこの南国の離島では、長野の駒ヶ岳蒸溜所はもちろんのこと、鹿児島の津貫蒸溜所の熟成庫とも、まったく異なる熟成をすることでしょう。
このように、本坊酒造は
を有する体制となりました。
ジャパニーズウイスキーをつくる上で、自社内で多様な原酒を持つ強みが、今後より一層発揮されていくことでしょう。
■今後の更なる活躍を期待!
次回へ続きます。