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実は他国の追随を許さないウイスキー大国『インド』 《インド①》
■《世界》銘柄別ウイスキーランキング
こちら↓が、世界のウイスキーの販売量ランキングです。
(イギリスのDrinks International社が毎年公開している、蒸溜酒の販売量データをまとめている日本語サイトから引用させていただきます。)
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ウイスキーの販売量ランキング2021【世界】
図解■ ウイスキーの販売量ランキング2021【世界】 | alcholog -アルコログ-
1位~4位を、インディアン・ウイスキーが占拠!
7位・9位にもインディアンが入っているので、世界で売れている上位ブランド10のうち、過半数の6ブランドは、インディアン・ウイスキーということになります。
インド、マジですごい!!
■インドから少し話は逸れますが
ちなみに、前出のトップ10リストで、インディアン・ウイスキーをとりあえず横に置いておいて、世界5大ウイスキーだけをピックアップすると、
① ジョニーウォーカー(スコッチ)
1,920万ケース
② ジャックダニエル(テネシー)
1,350万ケース
③ ジムビーム(バーボン)
1,090万ケース
④ ジェムソン(アイリッシュ)
960万ケース
個人的には、この20年ぐらい、ずっと2桁増レベルで、伸び続けているジェムソンが気になります。なぜこんなに伸び続けているのかは、また調べてみたいと思います。
そして、日本でもよく見かけるウイスキーブランドの世界販売順位は、以下の通りです。
※ Drinks International社発表のデータ
※()はインディアン・ウイスキー込みの順位
⑦(15)角瓶 520万ケース
⑪(22)ブラックニッカ クリア 330万ケース
⑭(25)トリス 290万ケース
⑯(27)デュワーズ:スコッチ 280万ケース
⑱(30)ホワイトホース:スコッチ
260万ケース
角瓶が健闘していますが、インディアン・ウイスキーと比べると、いかにインドがウイスキー大国であるかがわかります。
でも、インディアン・ウイスキーってあまり聞きませんよね?
「なぜこれまで、あまりインドのウイスキーについて情報がなかったのか」を、解説したいと思います。
■なぜインディアン・ウイスキーは、世界的な知名度が低かったの?
その理由は、ざっくり3つあると思います。
◇インディアン・ウイスキー 知名度が低かった理由
①ほぼ全数がインド国内で消費されているから。
②ウイスキーの販売量の統計が、きちんととれていなかったから。
③原材料から判断した場合、それはラムだから。
それぞれについて解説してみたいと思います。
■《理由①》ほぼ全数がインド国内で消費されているから
これはわかりやすくて、ほぼインド国内で消費されるため、国際的には知名度は高くないということです。
日本で見かける輸入ウイスキーのメジャーブランド、例えばジョニーウォーカー、バランタイン、デュワーズ、ジムビーム、ジャックダニエルなんかは、世界的に流通しているので、国際的な知名度は高いと言えます。
一方で、角瓶は、5大ウイスキーで世界7位の売上がありますが、ほぼ日本国内で消費されています。ブラックニッカ、トリスも同様です。
そういう意味では、インディアン・ウイスキーと同様、販売量のわりには、世界的な認知度は低いと言えるかも知れません。
■《理由②》ウイスキーの販売量の統計が、きちんととれていなかったから
これは、ズコっとコケてしまいそうですが、事実みたいなので・・・
2000年頃から、「どうもインドって、ムチャクチャ、ウイスキーを飲んでいるらしいぞ」と噂になっていたようです。
ただ、総計的なデータがなく、「どうもそうらしい」という噂レベルの状況が続いていました。
そして、いよいよ2006年頃、英国のドリンクス・インターナショナル社からインドを含むウイスキーの販売量の統計が発表されると、「インドが1位じゃねーか!」という話になったようです。
■《理由③》原材料から判断した場合、それはラムだから
まず、ウイスキーの一般的な定義について確認したいと思います。
◇ウイスキーとは?
穀物を原料に、
麦芽の糖化酵素をつかって糖化、
発酵・蒸溜を行い、
木樽で熟成させたお酒。
原料には、糖分を含まない
『穀物=大麦・小麦・ライ麦・コーンetc.』
を使用するのが、ウイスキーたりうるための条件です。
見た目的に、ウイスキーと似ているものにブランデーがあります。
「木樽で熟成させているので琥珀色のスピリッツ」という点は、ウイスキーと共通です。
ただ、ブランデーの場合、原料が穀物でなく、糖分を含む葡萄(=フルーツ)です。
フルーツの場合、すでに糖分があるので糖化工程は不要ですし、そもそも原料がウイスキーとは全然違うので、「違うお酒」ということになります。
では、大衆的なインディアン・ウイスキーの原料は、何だと思われますか?
答えは、モラセス(=廃糖蜜)です。
◇モラセスとは
サトウキビ(や甜菜)から、砂糖を精製する時に発生する副産物。
糖分以外の成分も含んだ、ドロッとした茶褐色の液体。
廃糖蜜という呼び名もあるが、「廃」というイメージが良くないため、現在はモラセスと英語のまま呼ぶことが多い。
糖蜜 - Wikipedia
モラセスとは?味や香りの特徴や、活用法について解説! | クラシル (kurashiru.com)
つまり、インドでは、サトウキビから砂糖をつくる時にできる「サトウキビ ジュース 2軍」みたいなものを原料に、インディアン・ウイスキーはつくられて来ました。
ただ、サトウキビは、穀物というカテゴリーにに含みません。
また、最初から糖分を含んでいるので糖化工程が不要なため、麦芽酵素による糖化も行いません。
そのため、モラセス原料のインディアン・ウイスキーは、ウイスキーとしてカウントしないのが、今まで一般的でした。
そしてモラセル原料のインディアン・ウイスキーは、
サトウキビからつくった木樽熟成させた琥珀色のスピリッツ
なので、強いて言えば「ダーク・ラム」と言えなくもないと思います。
■存在感を増すインディアン・ウイスキー
今までのインドのウイスキーは、モラセス原料のウイスキーを、超大量につくっていることで存在感がありました。
ただ現在では、大麦麦芽をつかった高品質な本格ウイスキーもつくられるようになり、「量」だけでなく「質」でも存在感を増して来ています。
5大ウイスキーに、台湾とインドを加えて、7大ウイスキーという言葉もあるくらいです。
次回は、このインドの「ウイスキー市場」について、もう少し掘り下げて解説してみたいと思います。