【ついにバブル崩壊】パティソン兄弟の2つの過ち《パティソン事件:③》
■パティソン事件とは
パティソン事件の記事の最終回です。
まずは、パティソン事件の概要から!
稲富博士のスコッチノート 第101章 バランタイン・ウイスキーの話-その2.バークレー・マッキンレーからハイラム・ウォーカー(スコットランド)の時代 (ballantines.ne.jp)
■パティソンズ社 不正への道
パティソンズ社の悪行として挙げられるのは、大きくは2点です。
それぞれについて解説します。
◇粉飾会計
「ウチは、優良なウイスキー原酒をいっぱい持っているし、スコッチ業界も、俺の会社も絶好調なんで、この持っている原酒もバンバン値上がり予定ですわー。 笑いが止まりませんなー。 ウチに投資したら、ハイリターンを得られまっせ!」
こんな感じで、不正な粉飾会計をすることで利益が出ているように装った上で、資金集めを繰り返していたみたいです。
◇ウイスキー中味偽装
パティソンズウイスキー-ウィキペディア (wikipedia.org)
これはどうも、パティソンズ社が破産して、半年間ほどその事業を再建や清算をするために実態調査をしていた際に、「お前これ、原酒の中身がおかしいやろ!」と判明したみたいです。
ウイスキーの中味偽装!
これはいけません!!
それにしても「粉飾会計」と「中味偽装」って今も昔も、悪者ワルモノがやることって変わっていないですね・・・
なんちゃって商品を正式排除! 唯一無二のザ・グレンリベット!|チャーリー / ウイスキー日記|note
■パティソンズ社 急転直下の破産
結局、不正な粉飾会計がバレはじめ、未払いを理由にDCLに口座を凍結されると急展開。
同社が粗悪な会計処理により利益を大幅に水増ししていたことが判明!
1898年12月初旬に莫大な負債を抱えて、ソッコーで破産しました。
実は、数か月前の1898年7月に、
していたばかりで、まさに急転直下の破産でした。
破産から半年以上に渡って再建が試みられましたが事態は好転せず、破産手続きが本格的に始まった頃には、資産の2倍にのぼる負債を計上。
パティソン兄弟は詐欺と横領罪で1901年に投獄されたのです。
■パティソン事件(=バティソンズ社の破産)が与えた影響
バティソンズ社の破産で、大きく分けて2つの大きなインパクトがありました。
◇パティソンズ社に関わる業者の連鎖倒産
パティソンズ社に原酒を買ってもらっていたポットスチル蒸溜会社をはじめ、販売業者やブレンダーなど、同社に直接的な取引のある業者10社が連鎖倒産。
◇スコッチバブルの崩壊
1860年頃から「ブレンディッドウイスキー人気」&「フィロキセラによるワイン用ブドウの壊滅」により、ずっと好調だったスコッチ・ウイスキー市場が崩壊。
その結果、価格が低迷したため、パティソンズ社に直接関係しない販売業者やブレンダー、ポットスチル蒸溜会社も大打撃を受けました。
この後、50年以上に渡りスペイサイドで蒸溜所が開設されなかったほどでした。
■パティソンズ社の破綻がなくても
当時のスコッチ業界では、ブレンディッド・ウイスキー市場の拡大を背景に、以下のバブル状態となっていました。
スコッチウイスキー業界時代が、このような状況だったので、パティソンズ社の倒産がなくてもバブルが崩壊していただろうことは間違いなさそうです。
ただ、あまりに象徴的な事件であり、ウイスキーバブルに乗っかった過剰生産に加え、
「粉飾会計」&「中身偽装」のダブルパンチ
だったので、悪い意味で歴史に名を刻んでしまったのがパティソンズ社の破産(=パティソン事件)なのです!
《参考文献》
スコッチウイスキーの歴史 国書刊行会:発行
ジョン・R・ヒューム、マイケル・S・モス 著