
日本のお酒と『産地規定』 《産地規定:前編》
■今回は
日本でつくられているお酒の『産地規制』について、「ワイン」「日本酒」「泡盛」「ウイスキー」を比較・確認してみたいと思います!
■「国産ワイン」と「日本ワイン」
これって、「同じじゃないの?」という感じですが、明確に違います!
◇(日本)国産ワイン
日本でボトリング(容器詰め)されたワイン
◇日本ワイン
日本で収獲された葡萄100%で、日本でつくられたワイン
(※ 正確にはもっと細かな規定があります)
日本ワインの基礎知識 | 日本ワイナリー協会 (winery.or.jp)
日本ワインの定義については、2018年から「果実酒等の製法品質表示基準」と言う法律で定められています。
「じゃ国産ワインって何なのよ?」と言う話ですが、
・タンクで輸入したワインを日本でブレンドして瓶詰めしたワイン
・タンクで輸入した葡萄果汁から、日本国内でつくったワイン
などが該当します。
ちなみに下記のような興味深いデータもあります。
◇日本ワイン:生産量No.1県は?
答え=山梨県!

国税庁 2023年 酒類製造業及び酒類卸売業の概況
06.pdf (nta.go.jp)
山梨県・長野県・北海道で、約3/4を占めます。
これって、ざっくりイメージ通りですよね。
ではこちらはどうでしょうか ↓
◇国産ワイン:生産量No.1県は?
答え=神奈川県!?
意外!
実は、ワインの輸入原料が港に荷揚げされて、神奈川県でボトリングされるため、実は日本一ワインをつくっているのは神奈川県になるそうです。
一方で、神奈川県は日本ワインの生産量はゼロです。

■「清酒」と「日本酒」
これも、言葉の定義としては違うんです!
◇清酒
米を原料とする醸造酒で、どぶろくとは異なり「濾して」あるお酒の中で、「酒税法が定める清酒」の規定をクリアしているお酒。
原産地規定なし。
◇日本酒
米を原料とする醸造酒で、どぶろくとは異なり「濾して」ある清酒の中で、「原料の米に日本産米を用い、日本国内で醸造」したお酒。
(※ 正確にはもっと細かな規定があります)
「日本酒」の定義については、2015年に、国税庁が国レベルのGI(地理的標示)に指定しています。
日本酒と清酒は、同じようでちょっと違うって知っていますか?|たのしいお酒.jp (tanoshiiosake.jp)
そのため、海外でつくられる清酒や、日本国内でつくられるものの外国産の米をつかっている場合は「日本酒」とは名乗れず、「清酒(とかSAKE)」と呼ぶこととなります。
最近、獺祭がニューヨークに蔵をつくって醸造していて、日本国内へも逆輸入されていますが、これも「日本酒」とは名乗ることができないのです。
ニューヨークの酒蔵で仕込んだ「獺祭」 日本国内で販売好調 アルコール若干控えめの大吟醸|FNNプライムオンライン
■「泡盛」と「本場泡盛/琉球泡盛」
これも違うんです!
◇泡盛
・米を原料として、そのすべてを麹にする全麹仕込みにて糖化。
・もろみ仕込みは1回のみ。
(→これらが一般的な乙類焼酎との一番大きな違いです)
・その際の麹菌は黒麹菌のみを使用。
・単式蒸溜器で1回のみの蒸溜 をしたお酒
産地規定なし。
※酒税法上は焼酎乙類
1983年に沖縄県酒造組合が作成した「泡盛の表示に関する公正取引規約」を公正取引委員会が承認し『泡盛』のフレーズが使えるようになったが、それまでは1972年の本土復帰以降は「泡盛」のフレーズの使用は認められていなかった。
◇本場泡盛(1983年~)
沖縄県において仕込み・蒸溜・容器詰めした泡盛。
◇琉球泡盛(2004年~)
本場泡盛と同義。沖縄県において仕込み・蒸溜・容器詰めした泡盛。
こちらのフレーズの方が新しい。
琉球泡盛 || 泡盛とは | 泡盛基礎知識 | 「琉球泡盛」が沖縄産の証(あかし) 【沖縄県酒造組合公式】 (okinawa-awamori.or.jp)
■「日本国産ウイスキー」と「ジャパニーズウイスキー」
前回まで4話にわたってご紹介して来た内容です。
◇日本国産ウイスキー
穀物を原料とする蒸留酒の中で、
「酒税法が定めるウイスキー」の規定をクリアしているお酒。
熟成規定なし、原産地規定なし。
◇ジャパニーズウイスキー
酒税法上のウイスキー中で、
「日本国内で、糖化・発酵・蒸留・3年以上の貯蔵・容器詰め」しているお酒。
(※ 正確にはもっと細かな規定があります)
「ジャパニーズウイスキー」の定義については、日本洋酒酒造組合2021年に定義を発表。3年の移行期間を経て、2024年4月から正式施行されています。
■産地規定の根拠
このように、「ワイン」「日本酒」「泡盛」「ウイスキー」は、どれもまずは、
・酒税法としてのお酒の定義
が誕生。
その後、それぞれのお酒の流通が増えとともに、
・産地規制
が導入された流れとなっています。
しかし実は、それぞれのお酒で「産地規制の根拠」が異なります。
これについて、次回、ご紹介してみたいと思います!