見出し画像

『マルスウイスキー/本坊酒造』が蒸溜を再開(2011年)

■前回は

◇前回のおさらい

・マルスウイスキーの本坊酒造が、マルス信州蒸溜所を1985年に開設。

・しかし、日本のウイスキー市場のピークは1983年で、ダウントレンドの局面に入っていた。

・結果的に、マルス信州蒸溜所は、開設からわずか7年、1992年に蒸溜を中止した。

今回はこの続きからです。


■ウイスキーが居酒屋のメニューにない時代

私が社会人になったのが2001年ですが、その頃(2001年~2007年くらい)にOPENした居酒屋には、メニューにハイボールはありませんでした。

それはそうです。
皆さん、ウイスキーを飲まないのですから。

サワーや本格焼酎はメニューにあっても、ウイスキーはメニューにありませんでした。

たま~に、何十年も営業している老舗の居酒屋のドリンクメニューにウイスキーを見つけることはありました。

しかし、「ハイボール」という文言はなく、

ウイスキー(リザーブ) S  700円
            W  900円

みたいな記載があるだけでした。

角瓶がメニューに載っているお店は皆無で、なんとなく、サントリー・リザーブがメニューに残っているお店が多かったような気がします。

サントリーウイスキースペシャルリザーブ 700ml瓶 商品情報(カロリー・原材料) サントリー (suntory.co.jp)


■ウイスキーのS・Wって何?

話は脱線しますが、上記のメニューのウイスキーの「S」「W」って、意味はご存じでしょうか?

今も古くからの居酒屋や旅館、空港のレストランとかで、お目にかかることがあるので、ご説明しておきたいと思います。

《S》シングル= 30ml 
  = 1ショット = 1フィンガー

《W》ダブル = 60ml 
  = 2ショット = 2フィンガー

という意味です。

日本では、ウイスキーを飲むときの1単位(=1杯分の量)は、30mlが定番です。
このウイスキーの「1単位」は、国によって異なります。

◇ウイスキー 1単位(1ショット/1杯分)

アメリカ    = 30ml
    (1ジガーとも言う)

イングランド  = 45ml

スコットランド  = 60ml

今、書いていて気がつきましたが、「1フィンガー」って言い方って、今はしませんね~。
私が社会人になった2001年には、まだこの表現は普通に存在していた記憶があります。

1フィンガーとは、グラスを置いて、そこにウイスキーを注ぐ際に、

人差し指1本分の幅の量 = ざっくり30ml

というところから、来ています。

ウイスキーにおけるワンフィンガーの意味は? ツーフィンガーも解説 | Dear WHISKY

【ウイスキー】ワンショットには何ミリの量のお酒が入っているのか?を解説 | ゲンエキバー (genekibar.com)

「小柄の女性と、お相撲さんのような男性では、指の太さが違うから、入る量が全然違うではないか?」という声が聞こえて来そうですが、まあそのあたりは、ざっくりでご判断ください 笑。


■ウイスキーブームの再来

1984年から約25年間に渡る「日本ウイスキー市場のダウントレンド」の苦しい時期。

メーカーもあの手この手でウイスキー需要を喚起しようとします。

TVCMに元・大関の小錦関(Dハイ=デッカイハイボール)をつかってみたり、木村拓哉さん(リザーブ)をつかってみたりするも、ウイスキー市場の縮小は止まりませんでした。

懐かしいCM サントリーウイスキー 「夏は、Dハイ。」 (youtube.com)

サントリー_リザーブ10年_シェリー樽仕上げ_リラックス篇 (youtube.com)

そんな中の2008年、日本のウイスキー史に革命が起きます。
それが『角ハイボール』『ジョッキで飲む』プロモーションです。

これにより日本のウイスキー市場は反転。ダウントレンドからアップトレンドとなるのです。

なぜこの角ジョッキによって、ウイスキーがここまでバズったのか?には、いくつも要因はあると思います。

個人的な分析としては、以下の通りです。

・ジョッキスタイルで「食中酒」として楽しめるソーダ系のお酒。
 (ビール・サワーの受け皿)

・ビールより健康的。
 (糖質・プリン体=ゼロ)

・ビールより安い。
 (居酒屋での1杯でも、缶モノでも)

・飲食店ビジネス観点としては、ビールよりもハイボールの方が儲かる。  
 (利益商材)

 こうなると、「飲みたい人」と「売りたい人」の思惑が一致します。

◇お客様(消費者) 
= ハイボールを飲みたい
 (健康的で安い!)
  ↓    ↑
◇飲食店側     
= 売りたい(儲かる!)

・この正の循環がぐるぐる回ることで、ハイボールが定番化。

・さらにはハイボール缶で、自宅でも気軽に楽しめるようにもなった。

・そして「エコノミークラスのハイボール人気」から、「セミプレミアムやプレミアムといったウイスキー全体」のブームへと発展した。

この流れが今の「日本のウイスキーブーム」を下支えしていると考えています。

その後2014年にはNHKで、竹鶴政孝をモデルとした「マッサン」が放映され、日本のウイスキー市場の復活が印象付けられました。


■ついに蒸溜再開!

このウイスキー市場の復活の中、2011年にマルス信州蒸溜所は蒸溜を再開します!

次回に続きます。

※タイトル写真は、マルス信州蒸溜所(2024年にマルス駒ヶ岳蒸溜所に改称)のポットスチルです。

いいなと思ったら応援しよう!