ブレンディッド・ウイスキー時代がもたらせた『分業化』の影響とは?
■前回までのまとめ
『ブレンディッド・ウイスキー』、はじまりは雑貨屋のオヤジの閃きから!|チャーリー / ウイスキー日記|note
有名ブレンディッド・ウイスキーの銘柄は、街の商店発!|チャーリー / ウイスキー日記|note
■ブレンディッド・ウイスキー全盛の時代が意味するもの
消費者が求めるウイスキーが、「圧倒的にブレンディッド・ウイスキー」という時代になると、「ウイスキー原酒生産者=蒸溜所」は、原酒をつくっては、せっせと「ブレンディッド・ウイスキーをつくっている街の商店(後のブレンディング会社)へ納品する」という流れが確立します。
この「生産会社」と「購入会社」の『分業化』の流れって、何かに似ていませんか?
そう! 個人的には、
に、とても似ていると思います。
一旦、この分業が確立されると、バランス的に「購入者側=ブレンディング会社」の力がドンドン強くなります。
生産者自身では、つくったものを現金化できないため、購入者側に頼らないといけないので、自然とパワーバランズがそうなって行くからです。
一方で、生産者側は、「購入者側に原酒を納品する」という『作業的な仕事』へ陥ってしまう傾向もあります。
なぜなら、生産者が「自分のつくった商品」を、『ブランド認知』してもらって、「お客様が口にする姿」を見ることが難しいため、自分の仕事に『やりがい』を見出しづらいと思うのです。
■自分の生産した原酒が「ブランド認知」されないことによる弊害
例えば、クセの強いアイラ島のモルトは、スコッチのブレンディッド・ウイスキーには少量だとしても、「味のアクセント」として、必ずと言って良いくらい入っているものです。
ここで、ボウモア蒸溜所でつくった原酒が、すべて、ブレンディッド・ウイスキーをつくる会社へ納品されると仮定します。(=シングルモルトとしては販売しないと仮定)
ボウモア蒸溜所の製造スタッフがBARに飲みに行った際に
というのでは、「ウイスキーづくりへのモチベーション」を高い状態で保ち続けることは難しいのではないでしょうか?
そして、ブレンディッド・ウイスキー用の原酒供給だけしているとしたら、お客様に「自分のつくったウイスキー原酒」のブランドが認知されないため、仕事へのクリエイティビティが刺激されず、どうしても作業的になってしまう傾向がある気がします。
■自分が生産した原酒が「ブランド認知」されることによるやりがい
一方で実際には、ボウモア蒸溜所からはシングルモルト・ボウモア12年が販売されています。
同じくBARに飲みに行った際に、ボウモア12年を飲んでいるお客さんと見かけたらしたら、
と、おなじウイスキー原酒づくりでも『仕事へ取り組む姿勢』が変わってくると思うのです。
そして、
というのでなく、
と、お客様が飲んでいるシーンを思い描きながら原酒をつくるでは、仕事への
が全く違ってくると思うのです。
実際、20世紀の100年間は、スコッチといえばほぼ「ブレンディッド・ウイスキー」のことであり、「ブレンディッド・ウイスキーしか存在しなかった」と言っても過言ではありません。
もちろん、「これはうちしかつくることのできない原酒だ」と高いモチベーションと矜持を持って、原酒づくりをされていた人も大勢いたことは間違いないでしょう。
しかし、「ブランド認知の有無」はその仕事が「作業的」になるのか、「クリエイティブ」な仕事になるのかに、かなりの影響を与えるものだと思うのです。
そのため、「シングルモルトウイスキー」が存在せず、ほぼブレンディング会社による「ブレンディッド・ウイスキー」しか存在しなかった20世紀は、スコットランドのモルトウイスキー原酒の生産者にとって、厳しい時代だったのではないでしょうか?
■そんな中、業界の商慣習に立ち向かう会社が現れます!
このように「強い購入者=ブレンディング会社」と、「弱い生産者=モルトウイスキー生産会社」の関係に、大きな一石を投じる会社が現れます。
次回へ続きます!