インド初のシングルモルト「アムルット」、そして。 《インド④》
■インドの本格ウイスキーの2トップ
個人的には、インドの本格ウイスキーの2トップは「ポール・ジョン」と「アムルット」ではないかと思っています。
前回、ポール・ジョンについてご紹介したので、今回はアムルットについてです。
世界が注目! 本格インディアン・ウイスキー「ポール・ジョン」 《インド③》|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
■アムルット 概要
アムルットも、ポール・ジョンの本社と同じインドのバンガロールにあります。
高原都市のバンガロールで、まず製薬会社を1948年に創業。
薬の製造現場で大量のアルコールを使用するので、同じアルコールという延長線上で、1985年にウイスキー蒸溜所を建設。ブレンディッド・ウイスキーの販売を開始します。
1985年は、まだ世界的にもシングルモルトブームの前なので、ブレンディッドでの発売は当然だと思います。
3代目社長のラクシュット・ジグダリ氏は、スコットランドのビジネス・スクールで学び、MBAを取得している、やり手経営者です。
早くから、シングルモルトに可能性を感じていました。
この3代目が、インド初のシングルモルトの発売を決意します。
2004年のことです。
ただ、発売した場所がふるっています。
そのシングルモルト・アムルットを発売したのはインドではなく、なんと本場スコットランド!!
いきなり、本場で勝負!
やりますね、アムルット。
■アムルット 商品詳細
アムルットも、ポール・ジョン同様に、インド産の六条大麦を使います。
六条は、アルコールの収率は悪くなりますが、逆にタンパク質が多いため、旨味成分が多くなり、独特のオイリーな味わいのウイスキーとなる傾向があります。
二条大麦以外の「でんぷん質の少ない他の麦」の味わいが現れるので、考え方としては、アイリッシュウイスキーのポットスチル・ウイスキーとかに近い味わいとなるため、オイリー感を感じるのだと思います。
ちなみに、アムルットとは、サンスクリット語で『人生の霊酒』という意味だそうです。
■将来有望なインドのウイスキー市場
もともと、
それに加え、
さらに加えて
によって、徐々に単価の高い本格ウイスキーの消費が増えてきています。
その状況下で、インド発祥のポール・ジョンや、アムルットが、インディアン・ウイスキーの味わいと名声を、世界的に高めています。
これだけ、有望なインドのウイスキー・マーケットがあるのに、世界の大手ウイスキーメーカーも、黙っているわけがません!
存在感を増すインドの巨大ウイスキー市場 《インド②》 | 記事編集 | note
ただ、世界大手は、エコノミークラスだけでなく、今後有望なプレミアムクラスにも進出して来ています。
■世界最大手ウイスキーメーカー:ディアジオ
世界販売量No.1ウイスキーは、インディアン・ウイスキーのマクドーウェル(輸出名:ミスタードウェル)で、ディアジオがつくっています。これは、スコッチ産モルト原酒とインド産モルト原酒をブレンドしているそうです。
ただ、これに留まらず、インド産ウイスキーのプレミアム商品も展開を始めました。
さすが世界最大手のディアジオ社のブランド戦略で、まずは地元インドのジャイプールで発売発表。
その後は、2022年のカンヌ映画祭でお披露目。その後、ドバイで発売というラグジュアリーっぷり!
職人技を感じるインドのシングルモルト、Godawanがドバイへと羽ばたく | Diageo India のプレスリリース | 共同通信PRワイヤー (kyodonewsprwire.jp)
インドの新作シングルモルト「ゴダワン」がドバイでリリース!ディアジオインディアが仕掛けるラグジュアリーウイスキー (barrel365.com)
ラジャスタン州でつくられているという以外、蒸溜器をはじめとした蒸溜所の情報などがあまりないので、今後の情報発信を期待したいですね。
■ビームサントリー
2019年にインド向けに「オークスミス」というウイスキーを投入しています。
構成原酒とブレンド技術から見たら、これに「ジャパニーズ」「アイリッシュ」「カナディアン」の原酒を入れたら、コンセプトはワールド・ブレンディッド・ウイスキー碧Aoになりそうですね。(当然、そんな簡単なものではありませんが)
サントリーが「インド専用ウィスキー」発売!気になるその味は?~記念セレモニーへ参加してきた~ | インドで働くという選択 (yurindia.com)
ビームサントリーは、もともと自社ブランドの「ティーチャーズ」や「ジムビーム」も、ブレンド後の瓶詰前の状態で輸入し、現地で瓶詰めをしていたそうです。
その応用編で、「原酒をインドでブレンドをした上で、瓶詰め」となります。
この輸入原酒を「ブレンド&瓶詰め」は、インディアン・ウイスキーでは、非常にポピュラーな方法だそうです。
なぜなら現地でブレンド・生産する「IMFL (Indian-made foreign liquor)ウイスキー」のカテゴリーに属する商品は、関税が低くなるため、比較的安価で販売できるからです。
サントリー「ウイスキー大国」インド参入の勝算 市場規模は日本の10倍、専用商品で開拓狙う | 食品 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
そういう意味では、ゴダワンの富裕層向けとは違い、オークスミスは中間層向けの商品ということになります。
サントリー社長、インドでウイスキー生産「5年以内に」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
今後どうなるかわかりませんが、インドに蒸溜所ができたら、メチャクチャ面白いですね!
■インドのウイスキーの高品質化が楽しみ
これだけ、インド国内外からの色々なプレーヤーが、インドの地で、本格ウイスキーのマーケットを競っているとなると、今後のインディアン・ウイスキーの発展が楽しみですね!