モルトウイスキーは2回蒸溜《その3/最終回》初溜釜と再溜釜の大きさは違う?
■モルトウイスキー 初溜と再蒸の違い
2回の蒸溜をしてつくるモルトウイスキー。
その蒸溜『1回目(初溜)』と『2回目(再溜)』の違いの最終回です。
今回は違い③「張り込み量」について解説します!
■ヘッズ(前溜)とテイルズ(後溜)も捨てるわけではありません
2回目の蒸溜である「再溜」において、ミドルカットという作業で蒸溜液の「良いとこ取り」をすると前回解説しました。
モルトウイスキーは2回蒸溜《その2ー2》 ミドルカットを深掘り!|チャーリー / ウイスキー日記|note
その時に分別されたヘッズとテイルズですが、捨てるわけではありません。
どうするかというと、ここで分別された「ヘッズ」と「テイルズ」は、次に行われる再溜に加えられるのです!
■秘伝のタレ方式
再溜のミドルカットでは、蒸溜液の「良いとこ取り」をして、それ以外の「アルコール分を含む蒸溜液」は、次に再溜する初溜液(1回目の蒸溜が終わった蒸溜液)に加えます。
これを繰り返すわけで、2回目に蒸溜するポットスチル(再溜釜)の中には、常に前回の再溜液の一部が加えられるわけです。
なんかうなぎ屋さんの「秘伝のタレ」方式みたいですね!
常に前回分の再溜液が入るこの『秘伝のタレ方式』は、「品質の安定化」の観点で、意味のあることだと思います。
ちなみに、新しく設置された再溜器(ポットスチル)を使い始める場合、この『秘伝のタレ方式』による「酒質の安定」の効果がきちんと発揮されるのには、10回程度の蒸溜回数が必要になる、と書いてある書籍を読んだことがあります。
■蒸溜されるごとに「アルコール度数=3倍」「量=1/3」になる!
モロミ(=ビール的なもの)を蒸溜すると、初溜液(=ローワインといいます)という麦焼酎的なものが得られます。
その際に、
・アルコール度数=約3倍
・容量=約1/3
になります。
そして、初溜液(ローワイン)を蒸溜すると、再溜液(=ハイワイン/ニューポットといいます)というアルコール度数の高い麦焼酎的なものが得られます。
その際にも、
・アルコール度数=約3倍
・容量=約1/3
になります。
そのため、2回の蒸溜を経ることで、モロミは以下の通りとなります。
蒸溜毎に、正確に3倍や1/3というわけでないので、2回の蒸溜を経ることで、蒸溜する前のモロミ(=ビール的なもの)は、ざっくり
・アルコール度数=約10倍
・容量=約10分の1
となります。
そして、ウイスキー用のモロミ(=ビール的なもの)は、ウイスキー専用酵母を使ったりすることで、ビールよりもアルコール度数の高いAlc.7%程度であることが多いです。
(ただし、昔ながらの作り方をしている、スプリングバンクなどは、Alc.4.5%程度だったりするようです。)
モロミとニューポットの関係を超単純化すると、以下の通りとなります。
◇チャーリー流
『Alc.&容量』バランスの考え方
■実はさっきの説明には間違いがあります!
これは先ほどの文章の引用ですが、ここに間違いが存在しています。
これがわかったらもはやプロフェッショナルです!
◇チャーリー流
『初溜・再溜』容量バランスの考え方
あくまで、容量のバランスをざっくり理解するために数字を丸めています。
(正確な「蒸溜のマスバランス」については、「ウイスキーコニサー資格認定試験教本」などに載っていますので、そちらをご確認ください!)
■初溜釜と再溜釜のサイズは違う!
上記の通り再溜釜(2回目の蒸溜)に投入する蒸溜液(麦焼酎的なもの)の量は、初溜釜(1回目の蒸溜)に投入するモロミ(ビール的なもの)の約6割となります。
そのため、
となります。
初溜釜と再溜釜ってサイズが違うんです!!
この事実、正直、私は知りませんでした。
・ただ、日本国内では初溜釜と再溜釜が同じサイズであることも多いです。
そして、蒸溜所見学でも気づきませんでした。
・蒸溜所見学でも、ここまでマニアックな「容量バランス」の説明までは聞いたことがありませんし。
でも、これを知っているとより蒸溜所見学が楽しくなるかも知れませんね。
■蒸溜工程での容量バランス まとめ
◇2回の蒸溜を経て得られるニューポット
◇初溜釜と再溜釜の張り込み量
■モルトウイスキーの2回蒸溜
今回で「モルトウイスキーの2回蒸溜」については終了です!
特に今回の内容はちょっと難しく、わかりずらかったと思います。スミマセン。
しかし、せっかく「容量バランス」の話になったので、次回は「投入する麦芽量」と「できあがるニューポッドの量」について、解説してみたいと思います。
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