カスタマイズ商品が多いバーボン業界。そのバーボン、実は「日本限定品」の巻 《アーリー⑪》
■前回までのまとめ
今回は『1蒸溜所で多ブランド生産』できるバーボン業界だからこそ、「商品毎のカシタマイズ製品がムチャクチャ多い」というお話です。
■ウイスキーのカスタマイズ製品
ウイスキーの定番品からカスタマイズされた商品としては、「数量限定品」「地域限定品」「復刻盤」などがあります。
◇数量限定品
エッセンス・オブ・サントリー シリーズ
THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY サントリー
ニッカ ディスカバリー シリーズ
シングルモルト余市・シングルモルト宮城峡 アロマティックイースト|商品紹介|NIKKA WHISKY
ともに原酒づくりの多様性を表現している限定品です。
◇地域限定品
例えば、発売地域によってアルコール度数の異なる商品なんてものは結構あります。
43%は元々のイギリスでのウイスキーの法律で定める最低瓶詰アルコール度数でした。(75ブリティッシュ・プルーフ)。
エクスポート・ストレングスとも呼ばれるようで、スコッチウイスキーの伝統的な最低アルコール度数です。
一方で、アメリカやEUは40%が法定の最低瓶詰度数です。
この前までEUに加盟していたイギリスも、法律上は、今はそれに倣っています。
◇復刻版
数量限定品の1種ですが、現在の商品は色々な味のマイナーチェンジを経て、その味になっているわけですが、「元々の方の味の方が良かった」というような声に答える形で発売になる商品です。
ザ・グレンリベット イリシットスチル
『ザ・グレンリベット12年 イリシット・スティル』2月15日(月)から数量限定発売 - お知らせ - ペルノ・リカール・ジャパン (pernod-ricard-japan.com)
このように、ウイスキーに限らず、飲料・食品には「色々な限定品」があると思います。
ただバーボンでは、群を抜いてカスタマイズ品が多いように感じます。
それは、「1蒸溜所・多ブランド生産」をしているので、「商品のカスタマイズが得意だから」ではないかと思います。
ヘブンヒル社のバーンハイム蒸溜所なんて、200以上のブランドをつくり分けているはずなので、1ブランドの中での味のカスタマイズなどは、楽勝なのではないかと思ってしまいます。
■日本限定商品が多いバーボン業界
このようにカスタマイズが得意なバーボンでは、「日本限定」の商品がたくさんあります。
この12年ものは本国アメリカで1961年に発売となりましたが、当時、バーボンとしては異例の超熟モノとして人気を博しました。
(バーボンは、スコッチに比べ、「高温・乾燥」の環境下+「新樽」で熟成をさせるので、熟成が早く、10年以上といった長期熟成をさせることは、それまで一般的ではありませんでした。)
この12年は残念ながら現在の製造元:ディアジオ社より、原酒不足&包材不足(独特なゴージャスな瓶)により終売が発表され、2022年6月頃にメーカー出荷が終わっています。
ここで重要なポイント!
このI.W.Harper 12年、2022年の終売時にすでに本国アメリカでは存在していなかったんです!!
そう、いわば「日本限定商品」だったんです!
この日本でよく見かける定番バーボン「I.W.Harper ゴールドメダル」ですが、これも本国アメリカでは、かなり前から売っていません。
こちらも、いわば「日本限定商品」!
えっ!?
という声が聞こえて来そうですが、少し解説をします。
■1蒸溜所・多ブランド生産によるブランドの整理整頓
バーボン業界が、「業界の再編」、「再編時の蒸溜所の閉鎖」、「バーボン・ブランドの売買」による、『1蒸溜所・多ブランド生産』をするようになった、というのは、前回まで何話かに渡ってお話ししてきました。
その後、バーボン業界のトレンドが下がると、
「手持ちのブランドが多すぎて、整理整頓しないと、どうにもならんわ!」
という状況になってしまいます。
それが、ビッグ4が消滅する1980~2000年頃です。
元々、「I.W.Harperブランド」は、ビッグ4の一角:シェンリー社が所有していました。
そのシェンリー社は、アメリカのコングロマット企業に買収された後に、最終的に1987年にギネス社に売却され、現在のディアジオ社(ギネス社とグランドメトロポリタンが合併した会社)へと繋がります。
ギネス社は、1990年代半ばに、
という戦略を決め、アメリカでの販売を終了してしまったのです!
これは、下記に起因すると思われます。
※1 ホワイト・レボリューションと呼ばれる1970年頃にはじまった米国のウォッカ・ブーム。1974年、米国でウォッカがバーボンを抜きました。
※2 当時、正規ルートでなく、米国現地で安く買ったハーパーを日本に持ち込んで高く売るという「海外並行品」が蔓延したそうです。
こんなわけで、我々が日本で良く目にするバーボン:I.W.Harperは、2000年頃以降は「日本でしか飲めないバーボン」となっていたわけです。(※3)
※3 アメリカでは現在、バーボン・ライウイスキーブームのため、2015年年、I.W.Harperが日本とはまた違う仕様で、米国内で発売になっています。さすが、カスタマイズが得意なバーボン業界ですね!
■そしてアーリータイムズ
実は、「I.W.Harper」とまったく同じような話があるんです!
しばらく前に日本終売になってしまった、ど定番バーボン
この2つとも、「日本限定商品」だったんです!!
簡単に言うと、本国アメリカでは販売されていないバーボン!
えええっ!?
という声が聞こて来そうです。
これについて次回、解説したいと思います。
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