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アメリカでは【バーボン】アーリータイムズ・イエローラベルは存在しない!?《アーリー⑫》

■前回までのまとめ

・2021年6月、アサヒビールにより日本国内で販売されていたアーリータイムズ・イエローラベルが突如休売。(そのまま2022年6月、日本での取扱終了)
・なぜアサヒビールの取扱が終了してしまったのか?というと、商品の供給が追いついていないから。
・それは澱が発生した商品があって、その確認のため出荷を止めていたためと言われている。
・なぜ澱が発生したかというと、私チャリーの推測では、「米国での製造元が変わり、製造工程が変わったから」であり、特に「ろ過工程が変わったのではないか?」。
・そして、そもそもバーボン業界では、度々業界が再編されたために、『1蒸溜所で多ブランド生産』するケースが多い。
・その延長線上で、「商品毎のカシタマイズ製品」がムチャクチャ多く、例えばI.W.Harperは近年、日本限定の商品となっていた。

今回は、2022年6月に日本終売になるまで、日本における定番バーボン・ブランドであった「アーリータイムズ・イエローラベル」も、実は日本限定品だった!ということについて解説します!


■アーリータイムズの定番だった2ブランド

2022年6月にアサヒビールから終売される前に、日本で見かけたアーリータイムズには、大きく2種類ありました。

◇アーリータイムズ・イエローラベル
 一番良く見るアーリータイムズです。

◇アーリータイムズ・ブラウンラベル
 BARなどで見かける「こだわり」のアーリータイムズです。

それぞれについて、解説します。
まずはブラウンラベルからです。


■アーリータイムズ・ブラウンラベル

1996年、サントリーが日本の正規代理店をしていた時代に、当時のブランドオーナーのブラウンフォーマン社から、日本市場向けに発売された日本限定商品で、イエローよりも「スモーキーで深い味わい」が特徴とされます。

イエローラベルとの商品スペックの違いは、大きく2つです。

①    マッシュビル
 ⇒ 原材料の穀物の配合比率のこと。

イエローの方がコーンの比率が高く、逆にブラウンの方がライ麦の比率が高い。
(ライ麦の比率が高いと一般的にはスパイシーな味わいになります。)


②    ろ過工程
 ⇒イエローは1回ろ過。ブラウンは2回ろ過。

イエローラベルは、ココナッツの皮から作った活性炭でろ過をします。
ブラウンラベルは、それに加え2回目のろ過を、ピート(泥炭)から作った活性炭を使って行うそうです。

《参考サイト》
アーリータイムズの種類や味わい・おすすめの飲み方などを徹底解説 | ウイスキーを知る (whisky-shiru.com)


ちなみに、ブラウンラベルは、イエローラベル用につくった原酒と、ブラウンラベル用につくった原酒ブレンドしてつくります。

この「ブラウンラベル用の原酒」について、大変参考になる「大胆な仮説」を書いている方がいらっしゃったのでリンクを添付します。

《バーボン、ストレート、ノーチェイサー》
アーリータイムズ イエローラベルVSブラウンラベル : バーボン、ストレート、ノーチェイサー (bloggeek.jp)

ブラウンラベル用の原酒は、オールドフォレスターの原酒ではないか?という仮説です。
(この方のサイトは今回初めて見つけたのですが、バーボン情報のすべてにおいて、他の追随を許さない、ずば抜けて詳しい解説となっています。とても参考になるので、今後、私も読み進めてみたいと思います。)


■アーリータイムズ・ブラウンラベル 終売

この日本限定のブラウンラベルは、アーリータイムズの大元のブランド権がブランフォーマン社→サゼラック社に売却(2020年)されると、2021年に終売が発表されました。

これは、サゼラック社がブランド買収時に、ブラウンフォーマン社からブランドと一緒に手に入れた「ブラウンラベルの在庫」を売り切ってしまったので、そのタイミングで終売にしたのかな?と勝手に推測しています。

なので、サゼラック社としては新たにブラウンラベルを製造するつもりはなく、今後、ブラウンラベルが、サゼラック社から再発売されることは、ちょっと期待薄かなと個人的には推測しています。


■そして、アーリータイムズ・イエローラベル

結論から言います。

◇アーリータイム・イエローラベル
《日本向け》     
バーボン仕様

《アメリカ国内向け》 
ケンタッキー・ウイスキー仕様

アメリカで売られていたアーリータイムズ・イエローラベルはバーボンではなかったということです!
(どうも、このアメリカ仕様のアーリータイムズ・イエローラベルも、ブランド権がサゼラック社に移ってから終売になったようです。)


■イエローラベル、米国でのスペック

では、アメリカで売られていたアーリータイムズ・イエローラベルは、どういう商品スペックなのでしょうか?

これには、アメリカにおける「バーボンの法規定」が絡んできます。

◇バーボンの法規定(の一部)
・原材料に、コーンを51%以上使用しなければならない。
・樽熟成は、内面を強く焦がしたオークの新樽で行わなければならない。

バーボンと呼ぶには、「新樽」で熟成させることがマストです。

話が逸れますが、逆に、スコッチやジャパニーズでは、新樽を使うことは稀です。
「オークのフレーバーが強くつきすぎ」ますし、またこの新樽規制のあるバーボン樽が、アメリカでの1回使用後に「中古でジャンジャン流れてくる」ので、熟成には中古バーボン樽を使うことが大半です。
一方で、ニッカのように(メインではないですが)、原酒のバリエーションを増やす意味で。敢えて新樽を戦略的に投入するケースもあります。

話を戻します。

アメリカで販売されていたアーリータイムズ・イエローラベルには、
「中古樽で熟成させた原酒」
が使われているので、バーボンとは名乗れないのです!(※1)

逆に、日本で販売されていたイエローラベルは法律的に「バーボン」と呼べるスペックになっていたので、「捻じれ現状」が起きていたわけです!

※1 色々なNETの情報を確認すると、「アメリカで販売されるアーリータイム・イエローラベルには、中古樽熟成の原酒を20%以上使用しているため、バーボンとは名乗れない」と書かれています。
ただ、私チャーリーがウイスキーコニサー教本などを確認しても、この20%という数字を見つけることができていません。

色々な日本語サイトにこの20%が書いてあるだけに、多分、
「バ-ボンと名乗るには中古樽原酒を20%以上使用したらダメよ!」
という規定があると思うので、時間のある時に英語サイトを確認してみたいと思います。

そして、ここで思ったのは、そういう規定があるなら「20%までなら中古樽原酒をブレンドして良いんかい!」とうことです。
ひょっとして、今、バーボンとして販売されている商品にも、「中古樽原酒が19%とか入っていたりするのかな?」とか思ってみたり。
この件については、今後、新しい情報がわかったら記事化したいと思います。


■なぜ、本場アメリカのイエローラベルはバーボン仕様でなくなったのか?

次回は、これについて考えてみたいと思います。


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