スコッチ・ウイスキー業界の川上への垂直統合。でも異端児が現れた!《グレンフィディック》
■前回までのまとめ
『ブレンディッド・ウイスキー』、はじまりは雑貨屋のオヤジの閃きから!|チャーリー / ウイスキー日記|note
有名ブレンディッド・ウイスキーの銘柄は、街の商店発!|チャーリー / ウイスキー日記|note
ブレンディッド・ウイスキー時代がもたらせた『分業化』の影響とは?|チャーリー / ウイスキー日記|note
■ビジネスにおける垂直統合とは?
■スコッチ・ウイスキー業界における垂直統合(川上統合)
恰好つけて少々難しいことを引用しましたが、スコッチ・ウイスキー業態で、わかりやすい事例を挙げるなら、ブレンド会社=ウイスキーメーカーが、原酒をつくる蒸溜所を買収することが「川上統合」にあたります。
例えば、こんなケースです。
このように資金力の強いブレンド会社が、生産者(=蒸溜所)を買収するケースがある一方で、ブレンド会社側が自社で蒸溜所をつくってしまうケースも多くありました。
例えば・・・
このように、スコッチ・ウイスキー業界では、資金力のあるブレンド会社が、生産者である蒸溜所を飲み込んで、一大グループを築くという流れが進行しました。
■業界の異端児、グレンフィディック蒸溜所!
そんなブレンド会社が、ブイブイいわせていた業界で、チャレンジングな蒸溜所が現れます。
グレンフィディック蒸溜所です!
「グレンフィディック蒸溜所」を所有しているのは、ウィリアム・グラント&サンズという、今も数少ない家族経営を続ける、スコッチウイスキーメーカーの超大手です。
(日本に支店がなく、ウィリアム・グラント&サンズ社の商品は、品目によりサントリーや三洋物産などが日本の正規代理店となっているので、日本ではあまり聞かない社名ですが、ウイスキー業界では超有名なので、社名が長いですが、覚えておいて損はないです!)
ウィリアム・グラント&サンズについて書きはじめると、それだけで10話じゃ足りないくらいなので、超絶にコンパクトに解説すると、以下の通りです。
正直、ご紹介したいことがありまくりですが、今回、ここで注目すべきはこれ!
これ、本当に凄いです!
まさに、業界の常識破り、異端児です!!
■何が業界の常識破り、異端児なのか?
資金の潤沢な「ブレンド会社」が、零細な蒸溜所から原酒を買い付けて、ブレンディッド・ウイスキーをつくりあげ、それを「販売する」という流れがあったわけです。
その流れがあった中で、ブレンド会社でなく、生産者としてグレンフィディック蒸溜所を擁するウィリアム・グレアント&サンズ社は、
と、ブレンディッド・ウイスキー「グランツ スタンド・ファスト」を発売しちゃったんですねー。
これ、考え方はシンプルですが、商慣習上はあり得ないことだったと思います。
(正直、これより前にブレンディッド・ウイスキーを発売した蒸溜所があったかは調べきれていないのですが、現存するブレンドでは「蒸溜所発」のブレンディッド銘柄は、グランツが最古のようです。)
それまで、ウィリアム・グレアント&サンズ社をはじめ蒸溜所を運営する生産者は、様々な「ブレンド会社」へ「原酒を納品」し、代金を回収して商売が成り立っていました。
ここで、蒸溜所(生産者)が、自らブレンディッド・ウイスキーを発売したら、どんなことが起こるでしょうか?
と、仕入契約を切られてしまうことが、予想されます。
こういう「生産者が直販を始めたら、中間業界者が怒る&イジメにあう」というのは、どの業界でもある話だと思います。
しかし、当然、商品の品質が良ければ生き残るわけです。
現に、グランツという商品は、(日本ではそこまで知名度が高くないですが)ブレンディッド・ウイスキーの中で、世界売上トップクラス!
本場スコットランドでは、ベル、フェイマスグラウスなどとともに、常に売上No.1を争っている人気銘柄で、コスバ抜群です!
■グランツ発売の歴史的意味
この蒸溜所側(=生産者)が、ブレンディッド・ウイスキーを発売したことの意義は、以下の2つが上げられると思います。
農業でいうところの産直市や、6次産業化がうまくいったような感じでしょうか?
単に、つくった原酒をブレンド会社へ出荷するだけでなく、
こういう気持ちが生まれることで、最終的に仕上がるブレンディッド・ウイスキーの品質にプラスの影響を与えると思うのです。
この品質への影響は、最初は小さいかも知れませんが、歴史を経るにつれ、大きな違いとなって、他社製品との大きな差別化になっているのではないでしょうか?
■まだまだ異端児っぷりを発揮! ウィリアム・グラント&サンズ
ウィリアム・グラント&サンズ社については、ご紹介したい内容が多いので、追々記事にして行きたいと思います!