チャレンジしまくり! 『樽の魔術師』グレンモーレンジィ
■グレンモーレンジィとは?
グレンモーレンジィ蒸溜所については、説明しだすとそれだけで、いくつもの記事になるので、蒸溜所の概要を超ざっくり説明すると以下の通りです。
■個人的に凄いと思っている点
LVMH社の「ブランディング戦略の巧みさ」が、凄いと思います。
さすが、ルイ・ヴィトンやディオールといった超有名ファッション・ブランド、ドン・ペリニヨンやモエ・エ・シャンドンといった超有名シャンパン・ブランドを持っているだけあって、この会社のプレミアム商品の「世界的なブランドのつくり方」は勇逸だと思います。
LVMH社の保有するスコッチウイスキー蒸溜所は2ケ所です。
どちらも、超人気銘柄ですが、ブランド・イメージがはっきり分かれていて、ブレンド名を聞くだけで、それが飲まれているシーンがイメージできます。
グレンモーレンジィは、「洗練された」「スタイリッシュな」「若者に向けた」というブランド・イメージを感じさせます。
一方で、アードベッグには「秘密結社的な」「神秘的な」「コアなファン層に向けた」という異なったイメージがあります。
■個人的に超凄いと思っている点
特に、アードベッグについては、1997年にグレンモーレンジィ社が買収し、そのグレンモーレンジィ社がLVMH社に買収され、リブランディングされるまでは全然人気がなかった銘柄です。
1997年までは、「操業したり、やっぱり売れないから操業を止めてみたり」を、ずっと繰り返していました。
正直、「お前さん、やる気あるんかい!」と言われても仕方ないような状況でした。
それが、今や人気が出すぎて出荷調整が続き、世界中にアードベッグのファンクラブ(アードベッグ・コミッティー)のメンバーを持ち、「アードベギャン」と呼ばれる熱狂的なファンによって、しっかりと支えられています。
正直、わずか25年くらい前まで、閉鎖寸前だった蒸溜所が、現在はここまで支持され、商品の売上も伸び続けているという事実を知ってしまうと、あらためて『ブランド戦略』の重要性を痛感します。
ちなみに、LVMH社は酒部門の日本支店を持っていないので、日本においては、スピリッツ世界No.1メーカーのディアジオ社と共同で、MHD社(モエ・ヘネシー・ディアジオ社)という販売会社(いわば酒問屋さん)を立ち上げて、商品を流通させています。
したがって「MHD社という大きなスピリッツ&ワインのメーカーがあって、その日本支店がある」と言うわけでなく、MHD社は日本にしかない会社(メーカーではなく販売会社)ということになります。
■スコッチウイスキー界の鬼才ビル・ラムズデン博士
このLVMH社傘下のグレンモーレンジィ蒸溜所とアードベッグ蒸溜所の「生産」の最高責任者がビル・ラムズデン博士です。
現在も、現役バリバリで、つい最近もグレンモーレンジィ蒸溜所内にライトハウス蒸溜所(直訳で灯台蒸溜所)というパイロット蒸溜所を立ち上げ、今までにも増して、新しい製造方法を試したりと、チャレンジを続けています。
このラムズデン博士の行ってきた「革新的なチャレンジ」は、これはこれで、またいくつもの記事になってしまうくらいなのですが、もっとも代表的なものが「ウッド・フィニッシュ=カスク・フィニッシュ=後熟」させた商品を、一般化したことです。
和風な例えになり恐縮ですが、「最初から最後まで同じ樽」で熟成させた原酒は、『炊き込みご飯』的に原酒の奥深くまで樽材の個性が入り込みます。
一方で、「ウッド・フィニッシュ」で後熟させた原酒は、『ふりかけ』的にそれまでと違う樽の個性をフワリと纏うイメージです。
ただ、この「樽詰め替え」の手間をかけることで「ふりかけ的アクセント」が加わり、消費者側としては、今までになかった面白い原酒を楽しめるようになったのです。
一方で、つくり手側としては「樽詰め替え」による「木樽熟成の可能性」の無限の広がりを得て、よりクリエイティブな原酒づくりに挑戦できるようになったと思います。
■「樽の魔術師」グレンモーレンジィ
今では、世界中の蒸溜所がウッド・フィニッシュさせた商品を発売しています。
そして、このウッド・フィニッシュ商品を、『定番商品として大々的に売り出した=有名にした』のが、グレンモーレンジィなのです。
(ウッド・フィニッシュという手法自体は、どうもバルヴェニー蒸溜所などが先に着手していたようです。)
そのため、グレンモーレンジィは「樽の魔術師」とか「樽のパイオニア」などと呼ばれています。
その樽の魔術師は現在、以下の「ウッド・フィニッシュ商品」を定番として発売しています。
グレンモーレンジィのラインナップ | グレンモーレンジィ スペシャルサイト (mhdkk.com)
■ビール × グレンモーレンジィ
グレンモーレンジィにはシグネットという定番品があり、これは焙煎麦芽(=黒ビールに使う麦芽)が使われています。
ウイスキーは、そもそも「ビールを蒸溜して木樽熟成させた」ような存在です。
そして、グレンモーレンジィ蒸溜所自体、もともとビール工場があってそれを改装してできた蒸溜所なので、ビールとの親和性は、極めて高いです。
ただ、「焙煎麦芽」をつかったウイスキーというのは非常に珍しいです。
こういう、他のお酒のエッセンスの入っているウイスキーって、グッと来ますね。
■チャレンジしまくりグレンモーレンジィ
これは、さらに色々な樽でウッド・フィニッシュさせた「個性的」かつ「斬新な風味」を持つ商品で、樽の魔術師の真骨頂を味わえるものでした。
(例えば、ライウイスキーの樽やアメリカンホワイトオークの新樽で後熟)
こちらは「物語」をイメージしてつくられる限定商品です。
■そして2023年:物語シリーズ第3弾
「そう来たか!」という商品スペックでしたので、次回はこちらをご案内します。