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世界が注目! 本格インディアン・ウイスキー「ポール・ジョン」 《インド③》
■世界最大のウイスキー市場インド
これまでの2回で、世界最大のウイスキーの消費国であるインドの「ウイスキー事情」についてご紹介しました。
実は他国の追随を許さないウイスキー大国『インド』 《インド①》 | 記事編集 | note
存在感を増すインドの巨大ウイスキー市場 《インド②》 | 記事編集 | note
今やインディアン・ウイスキーは、世界5大ウイスキーに「インド」と「台湾」を加えて、世界7大ウイスキーとして、数える人もいるくらいです。
■インドにおけるウイスキー市場の今後の展望
そしてチャーリー的には、今後のインドのウイスキー市場について、以下の2点がポイントになると考えています。
①「人口の増加」「飲酒文化の浸透」により、今後の『酒類市場の拡大』が見込まれる!
② 庶民的な低価格ウイスキーが消費量の大半であるものの、高品質な本格ウイスキーも生産され、世界的評価を得てきている。
①については、前回の記事でご紹介しましたので、今回は②の「インドの本格ウイスキー」についてご案内したいと思います
さっそくですが、インドの本格ウイスキーメーカーといえば、世界的なウイスキーコンペティションで常連の「ポール・ジョン」と「アムルット」の2社が、まず挙げられると思います。(もちろん、他にもあります。)
今回は、ポール・ジョンについてです。
■ポール・ジョン 概要
1992年創業。総合酒類メーカーでワインやブランデーも生産しています。
もともとは、「オリジナル・チョイス」というモラセス原料のウイスキーをつくっていて、今もインドでは売れ筋の商品です。
本格的なモルトウイスキーの生産は、本社のインド南東部のバンガロールから遠く500Km以上離れたゴアの地で、2009年に開始。
ゴアは、ヒッピーの聖地として知られ、2000年代に私がバックパッカーで訪れた時にも、安旅の個人旅行者がわんさかいて、旅のしやすい素敵な土地でした。
そしてゴアには、日本史の超有名人フランシスコ・ザビエエルが眠る教会もあります。
ちなみに、ピッピーの「3大聖地=その後の個人旅行者の聖地」は、インド:ゴア、モコッロ:マラケシュ、アフガニスタン:カブールです。
カブールだけは、今は危なくて行くことができませんね・・・。
話を戻して、シングルモルトのポール・ジョンは、日本でも定番品として、手に入れることができます。
ポール・ジョン クラシック-Paul John Classic|インディアン・ウイスキー ポール・ジョン|ウィスキー|オリジナルブランド|国分グループ本社株式会社 (kokubu.co.jp)
■ポール・ジョンの特徴
ポール・ジョンの特徴としては、以下の2つが挙げられます。
・ビールやウイスキーづくりで一般的な二条大麦でなく、六条大麦をつかっている。
・ピート麦芽は、麦芽を英国から輸入するのではなく、ピートのみをスコットランドから輸入して、製麦所に依頼してスモーキーな麦芽をつくってもらっている。
この2つが、本当に凄いと思うので、チャーリー解説します。
■モルトウイスキーに六条大麦!?
特に「六条大麦からモルトウイスキーをつくる」という情報を知った時には驚きました!
ビールにしても、モルトウイスキーにしても、使用するのは二条大麦以外は聞いたことがなかったからです。
六条大麦は、ウイスキーづくりに使うとしても、バーボンや、グレーンウイスキーをつくる際の「糖化材」としての役割として、少量使うくらいで、メインの原材料としては、味わい的にも、アルコール収量的にも、普通は使わないからです。
日本でも、六条大麦といえば、麦茶くらいですよね!?
で、この六条大麦をつかっている理由が明確で良いのです、
地元インド産の大麦を使いたいから。
超COOLですね。
日本のビール用や、モルトウイスキー用、麦焼酎用の麦芽は、ほとんどが輸入品です。
えっ!と思われる方もいるかも知れまんが、事実としてそうです。
(ちなみに、日本の本格ウイスキーの生産開始の地:山崎蒸溜所で最初に仕込みに使った麦芽は、地元河内産の大麦だったそうです。そこから色々あって麦芽はほぼ輸入に頼ることになるのですが、これについて解説しだすと超長くなるので、また別の機会に! )
ただ、現在は、日本のビールブルワリー・ウイスキー蒸溜所・焼酎蔵でも、クラフトを中心に、日本産の大麦をつかうところ出てきています。
(そして直近では、二条大麦でなく、六条大麦をつかう日本の生産者も出現!)
しかし、生産量全体の中ではごく一部です。
この日本のクラフトが最近になってはじめた「地元産大麦をつかう」ことを、すでに2009年から始めているって、ポール・ジョンは、コロンブスの卵的に、凄いです!
やっぱり新興メーカーで、変に商慣習に引っ張られずに自由な発想があるからこそできるのだと思います。
■ピートをスコットランドからお取り寄せ!
せっかくインドで本格ウイスキーをつくり始めるんだから、地元産の大麦をつかいたいよね?
そういうわけで、インド産の大麦から麦芽をつくりたいから、普通は英国から輸入するピート麦芽も、ピートだけでインドに取り寄せて、インド産の大麦に焚き込むわけです。
そして、そのピートもスコットランド産ということだけでなく、「アイラ島産」「東ハイランド産」のピートで別々に、焚き分けているとのこと。
実に凄いです、これも。
ピートの産地で、ピート麦芽のつく分けをしているケースは、スコットランドでも稀です。
ちなみに、アイラ島産ピートでは、海際のピートをつかえば、ラフロイグ的&アードベッグ的な、ヨード香のある男性的な香りのピート麦芽に仕上がるはずです。
一方で、アイラ島内の少し丘のところのピートをつかえば、ボウモア的な、少し女性的なピート麦芽になると思います。
東ハイランド産ピートでは、山の中のピートを使いますから、アイラ島の海藻的なニュアンスはなく、たき火やような香りをまとった「アードモア」的な、燻製的な煙のニュアンスのあるピート麦芽になると思います。
テンションが上がってしまって、解説がもはやマニアックすぎますね。
■試飲!
プレミアムクラスの『ポールジョン・クラシック』をテイスティングした時には、
パイナポーッ!!
と叫びたくなるくらい、パイナップルのような南国のフレーバーを強く感じました。
熟成環境や、六条大麦由来の旨味成分がそう感じさせるんですかね?
クラシックはアルコール度数も高く(55.2%)、飲みごたえがあり、著名なウイスキー評論家ジム・マーレー氏の著書「ウイスキー・バイブル」にて95点を獲得。品評会での受賞も数知れないです。
BARで見かけることがあれば、飲んでみることをオススメします!
■次回につづく
次は、ポール・ジョンよりも先に、インド初のシングルモルトを発売したアムルットについてご紹介します!
※タイトル写真は、フランシスコ・ザビエルが眠るゴアのボンジェムズ教会です。