ウイスキー/アイルランド起源説 『蒸溜技術』と『ビール』の起源《歴史の授業②》
■ウイスキーの発祥を探る旅
前回からの続きです!
このアイルランド発祥説の解説の1回目が前回でした。
「蒸溜技術とビールとの出会い」を推測するには、そもそも『蒸溜技術』と『ビール』が、どこで誕生して、どのタイミングで、「アイルランドやスコットランドに伝わったのか?」ということを調べなくてはなりません。
まずは『蒸溜技術』と『ビール』の起源について確認してみたいと思います!
■蒸溜技術はアラビアから!
蒸溜器は、今のところアラビアで発明されたと言われています。
これは、今から約5500年前のメソポタミア北部の遺跡から発掘された「二重構造の土器」が、おそらく「香水用の蒸溜器」だと推定されているからです。
【前編】蒸留器の歴史を知る! |起源はメソポタミア – クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン (shochu-next.com)
この「香水用蒸溜器」が、今のところ「最古の蒸溜器」と言われています。
(歴史は塗り替えられるものなので、いつかもっと古い蒸溜器が発見されるかも知れませんが。)
ただ、アルコールというフレーズ自体が、アラビア語が語源ですから、蒸溜技術にアラビア人が大きく関与したことが伺えます!
そしてこの蒸溜技術は、紀元前4世紀頃にはエジプトのアレキサンドリアに伝わり、学問として体系化されて行きます。
■エジプトと蒸溜技術
古代エジプトのアレキサンドリアは、ギリシャの哲学者:アリストテレスを師とするマケドニアのアクサンドロス大王が、紀元前332年に建設した都市です。
そこにはギリシャの知識階級の人も住んでいて、文化・学問・技術の最先端CITYでした。
ちなみに文献に蒸溜が登場するのは紀元前4世紀のことで、そのアリストテレスさんが、
と記しています。
この頃、蒸溜技術は『錬金術』と結びついた形で、研究・進歩していきます。
◇錬金術とは
錬金術 - Wikipedia
そのため、この時は「飲料用アルコールをつくるため」に蒸溜技術が用いられていたわけではありまません。
学問的研究として、一部ではワインやビールを蒸溜してみたりはしていたようですが、「飲用を目的とした蒸溜酒」が誕生するのは、もっと後の時代で、この頃ではないのです。
■エジプトとビール
ビールの歴史は5000年というのが通説です。
紀元前3000年頃、メソポタミア(またもメソポタミア!)のシュメール人が、ビール醸造についてくさび形文字で粘土板に残していて、これが「最古のビール醸造の記録」とされているからです。
その後、ビール醸造技術もエジプトに伝わります。ちなみに、紀元前2700~2100年頃の古王朝時代の墓の壁画に、ビール醸造の一コマが描かれています。※
※ 参照:日本ビール検定公式テキスト[2022年5月改定版] 監修:一般財団法人日本ビール文化研究会 発行:マイナビ出版
■ビールと蒸溜技術
このように「ビールと蒸溜技術」は紀元前に、メソポタアやエジプトで出会っていたと思われます。
しかし、そこでは「麦(≒ビール)を原料とする蒸溜酒」は誕生しませんでした。
「嗜好品として飲むためのお酒」に、蒸溜技術が応用されることはなかったのです。
これは、おそらく
※ 賢者の石とは?(ドラクエに出てくるアレです)
賢者の石 - Wikipedia
などが原因として考えられます。
これについては、こちら↓の書籍に超詳しく書いてあります!
いずれにせよ、紀元前のエピプト・アレクサンドリアでは、ビールは日常的に飲まれている一方で、蒸溜技術は(ビールとは出会わずに)学問的な体系化が進みました。
■「ビール」と「蒸溜技術」の伝播
次回へ続きます!