ウイスキーの定義とライスウイスキー《ライスウイスキー:最終編》
■ライスウイスキーの定義
前回までライスウイスキーというものついてご紹介しました。
では、ウイスキーの定義も確認してみたいと思います。
※1の部分をもう少し詳しく解説してみます。
■ウイスキーの定義
「ウイスキーの定義」で、「麦芽の使用を必須」としている国は多いです。
2024年4月から正式適用となった「ジャパニーズウイスキーの定義」でも、麦芽の使用は必須となっています。
「なぜ麦芽の使用が必須なのか」は、すでにご紹介しましたが、麦芽を使わずに「麹菌で糖化後に、発酵・蒸溜したお酒」は、ウイスキーではなくて、それは焼酎だからです。
逆に言うと、米を原料にした蒸溜酒の場合、これが「ライスウイスキー」と「米焼酎」の決定的な違いとなるのです!
◾️日本だけのウイスキーの定義
日本の酒税法では、課税対象としてのウイスキーというお酒の定義に「スピリッツの混和率」というものを定めています。
これは産業として始まった「日本のウイスキーの歴史」を背景とした日本独自のレギュレーションです。
(カナディアン・ウイスキーなどにもスピリッツ混和の規定がありますが、日本とは程度が異なります)
ただ、世界基準でウイスキーと言った場合、「ウイスキーにスピリッツの混和」は認められていません。
(この混和の規定や、ウイスキーの等級制度については、またいつか記事にしたいと思います。)
一方で前述の通り、日本の酒税法上の定義では、ウイスキーにスピリッツのプレンドが認められているので、ウイスキー原酒に「醸造アルコール」などスピリッツをブレンドした日本独自のウイスキーも発売されています。
中には、「焼酎」や「泡盛」といった日本独自の蒸溜酒(スピリッツ)をブレンドしたウイスキーもあります。
ただ、このスピリッツをブレンドしたウイスキーは、世界基準では「ウイスキー」とは呼ぶことができません。
■とはいうものの①
繰り返しとなりますが、日本の法律では、ウイスキーとして販売するにあたり、スピリッツの混和は認められています。
そのレギュレーションを最大限に生かすのであれば、「日本のお酒(焼酎・泡盛など)とウイスキーの融合」という視点で、それをブレンドはしたものは『日本オリジナルのウイスキー』と言えるかも知れません。
■とはいうものの②
5大ウイスキー(スコットランド・アイルランド・アメリカ・カナダ・日本)の中で、アメリカでは、法律上の「アメリカン・ウイスキーの定義」の中に「麦芽の使用」が明記されていません。
そのため、しばらく前は、「木樽熟成をさせた焼酎」を、「ジャパニーズウイスキー」としてアメリカで販売していたケースもあったようです。
これはモラル的にNGでしょう。
■麹ウイスキー
ただ「麦芽」を使用した上で、+αする形で「麹菌による糖化」も併用することは認められているケースは多いです。
カナディアンウイスキーなどでは、結構、この技術が使われているそうです。
カナディアンウイスキー 日本の麹を使いこなして進化 世界5大ウイスキーの一角・ジャパニーズ(17) - 日本経済新聞
そして、この「麹菌によるウイスキーづくり」を提唱したのが、タカジアスターゼにその生を残す高峰譲吉博士です。
高峰博士は、鳥井信治郎が竹鶴政孝を山崎の工場長に据えて1923年に、日本初のウイスキーをつくりはじめるはるか前、1890年代に請われて「麹菌によるウイスキーづくり」のために渡米しています。
高峰博士の各方面での功績は凄すぎるので、もっと広く知られて良いと思いますし、いつか記事化したいと思います。
ちなみに、この高峰譲吉の功績を称えた上で、麹菌をつかったウイスキーを提案している会社もあります。
高峰譲吉の「麹ウイスキー」、130年の時を経て実現 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブスジャパン)
■最後に
麹ウイスキーという考え方はあれど、やはり
のは、ウイスキーというものの世界的な共通認識だと思います。
最近は「ウイスキー原酒」と「米焼酎や泡盛」をブレンドしたものが、『ライスウイスキー』というネーミングで売られているのを見かけます。
「日本の酒税法上のウイスキー」としては認められているレギュレーションですし、『ライスウイスキーの定義』が定められているわけでないので、何ら法に触れるものではありません。
ただ、ウイスキー愛好家として「ライスウイスキー」と聞いたなら、
を想起します。
余計な誤解を生まないためにも、「ライスウイスキー」の言葉の定義を、きちんと定めた方が良いかも知れませんね。
■余談
ただ、ジャパニーズウイスキーの定義は、定めらています。
仮に「ライス・ジャパニーズウイスキー」を、グレーンウイスキーの1つとして国際的なコンテストに出品するには、
の要件が必須となります。