カフェモルト / カフェグレーンを深掘り! 『ニッカ・ザ・グレーン』④
■引き続き、限定品「ニッカ・ザ・グレーン」について解説します!
前回は、「カフェモルト」「カフェグレーン」について、
の観点からご説明しました。
でも、ずっと出てきている「カフェスチル(=カフェ式スチル)」の『カフェ』とは、なんなんでしょうか?
これについて解説してみたいと思います。
■カフェスチルって?
ウイスキーには、大きく分けて2種類のスチル(蒸溜器/蒸溜機)が存在します。
ちなみに、単式蒸溜「器」、連続式蒸溜「機」と表現していますが。その表記する漢字の違いは、まさにそのスチルの性質・機能の違いによるものです。
話を戻して、「カフェスチル」とは、②の連続式蒸溜機の1種で、もっとも古いタイプに当たります。
ちなみに、カフェとはスタバ的なCAFÉではなく、COFFEYという綴りです。
これは、「イーニアス・コフィ(カフェ)Aeneas Coffey」という、このタイプの連続式蒸溜機を開発した人物の名前です。
なので、私が新しいタイプの連続式蒸溜機を開発したとしたなら、チャーリースチルとなり、
それでつくった原酒は、
「チャーリーモルト」
「チャーリーグレーン」
になるわけです。
悪くないですね~。
実は、本場スコットランドでも、現在、カフェスチルを使っているグレーン蒸溜所は少なく、基本的にはもっと純度が高いアルコールを得られるアロスパス式などがメインです。
ただ、日本人で初めてスコットランドで本場のウイスキーづくりを学んだ竹鶴政孝は、この旧来型のカフェスチルこそ、
「連続式蒸溜機(大量生産&コストダウン可能)でありながら、穀物の風味もある程度残ることのできる連続式蒸溜機」
だとして、このカフェ式にこだわりがありました。
また、竹鶴は、スコットランドでウイスキーづくりを学んだ際、なかなか『秘伝のウイスキーづくり』について教えてくれる職人がいない中、ボーネス・グレーンウイスキー蒸溜所で、このカフェスチルの操作を、老齢の職人から教わったそうです。
それも、ひっそりとした夜の時間帯に、かの職人さんから「実際に機材に触れながら学ばせてもらった」という貴重な体験をしています。
そういう体験から、カフェスチルへの思い入れが、竹鶴は非常に強かったのではないかと思います。
こういう経緯があり、竹鶴が日本で最初の「本格的グレーンウイスキーの製造」をする1963年当時、スコットランドでもすでにあまり使われることのなくなったカフェスチルを導入したわけです。
■ジャパニーズウイスキーとカフェスチル
ちなみに、1972年開設のサントリー知多蒸溜所は、アロスパス式の連続式蒸溜機をつかっています。
それが、2022年に100億円を投じて、カフェ式の連続式蒸溜機を追加導入しました。
(ちなみに、山崎蒸溜所に2013年にポットスチルを4基、白州蒸溜所に2014年にポットスチルを4基を増設した際の投資金額が、それぞれ10億円です。 それからすると100億円とは、ボットスチル40基分です。 ポットスチルが40基あれば、もはや世界最大級のモルト蒸溜所ですから、連続式蒸溜機の巨大さと投資金額の大きさがわかるかと思います。)
実はこれに先立ち、2010年に白州蒸溜所に比較的規模の小さいカフェスチルを導入しています。
この白州では試験生産を重ねたのち、2013年から本格稼働をさせています。
定番商品として、この白州グレーンウイスキーは発売されていませんが、「エッセンス・オブ・サントリー・シリーズ」で、限定品として発売されたことがあります。
THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY サントリー
繰り返しとなりますが、旧型のタイプである「カフェスチル」によってつくられる「グレーンウイスキー」というのは、今となっては世界的にも珍しい存在となっています。
そういう意味では、近い将来、ジャパニーズウイスキーのグレーン原酒の特徴のひとつに、「カフェグレーンがいまだに現役で生産されていれケースがある!」というのが、挙げられるようになるかも知れませんね。
■これで
ニッカ・ザ・グレーンを構成する
「4蒸溜所・7グレーン原酒」のうち、
・宮城峡蒸溜所(現工場)
・西宮工場(旧工場)
それぞれの
・カフェモルト
・カフェグレーン
の2蒸溜所/4グレーン原酒のご紹介が終わりました。
次は残りの2蒸溜所/3グレーン原酒について解説したいと思います!