ウイスキーがヨーロッパ貴族に広まるキッカケは『ブレンディッド・ウイスキー』 《ブレンディッド史②》
■前回は
19世紀半ば(1860年くらいまで)は、ヨーロッパの貴族階級(フランスやイングランド)で好まれていたのは「葡萄のお酒」というお話をしました。
シェリーなどの酒精強化ワイン、ワインを蒸溜して木樽熟成させた蒸溜酒であるブランデーなども飲まれるようになりますが、基本的にはワインが好まれていました。
では、何がキッカケで、ウイスキーがヨーロッパ各地に広まったのでしょうか?
■大きなキッカケはブレンディッド・ウイスキーの発明!
いきなり答えなのですが、ブレンディッド・ウイスキーの発明が無ければ、スコッチ・ウイスキーが「地酒」から「世界のお酒」へとステップアップすることはありませんでした。
ワイン文化に食い込む過程の詳細はまた後述しますが、まずは「ブレンド」という技術についてお話ししたいと思います。
これ「混ぜるだけやろ」と思っちゃいがちですが、実は『画期的な技術革新』だったのです!
なぜなら、ウイスキー原酒は木樽熟成の過程で、必ず個体差が出ます。
長い間、木樽に入れておくので、その「木樽の木目」だったり、「木樽の置かれた場所(上段or下段 / 熟成庫の入口に近いか遠いか etc.)」だったりで、1樽1樽の熟成が変わってくるのです。
それの個体差をなくして、味わいを平均値化するという画期的な技術がブレンドだったのです!
『ブレンディッド・ウイスキー』、はじまりは雑貨屋のオヤジの閃きから!|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
ブレンディッド・ウイスキーは、3段階で進化しましたので、その流れをご紹介したいと思います。
■《ステップ①》シングルモルトの誕生
1853年に、同じ蒸溜所の異なる年代に蒸溜した原酒をブランドすることが法的に許可されます。
これによって、1つの蒸溜所でつくられた原酒をブレンドすることができるようになり、いわゆる「シングルモルト」が誕生しました。
ここでお伝えしておきたいのは、シングルモルト・ウイスキーは、「原酒をブレンドしてつくる」ということです。
1つの樽からの原酒のみをボトリングした商品は、「シングルカスク=1つの樽」と呼び、「シングルモルト」とは別モノです。
1853年までは、ウイスキーはそのまま樽出し(シングルカスク)で販売されていました。(時代的にまだ瓶詰めではないので、樽からの量り売りです)
そりゃ、購入する度に「味わい」が違いますよね?
1樽1樽、熟成によって味の個体差があるわけですから。
そこで1853年の法律改正があり、同じ蒸溜所でつくった原酒はブレンドしてOKとなると、
ということになり一気にブレンドという技術が広まります。
こうしてスコッチ・ウイスキーは
「シングルカスク ⇒ シングルモルト」
へと進化しました。
■《ステップ②》ブレンディッドモルトの誕生
1860年になると、異なる蒸溜所のウイスキー原酒をブランドすることが、法的にOKとなります。
そうなると今まで1つのモルト蒸溜所の原酒だけをブレンドしていた段階から、複数の蒸溜所のモルト原酒をブレンドする段階へと進化します。
複数のモルト蒸溜所の原酒をブレンドした商品(グレーン原酒はブレンドしない!)を、ブレンディッドモルト・ウイスキーと呼びます。
(※昔はヴァッテッドモルトと言いましたが、現在はスコットランドのウイスキー協会のお達しで、ブレンディッドモルトという言い方に統一されています。)
■日本で有名なブレンディッドモルト
日本ではこのスペックとしては「竹鶴」が有名です。
※ピュアモルトという文言は、「シングルモルト」や「ブレンディッドモルト」という文言が正式に規定される前に、商慣習上使われていたフレーズです(法的なフレーズではない)。
意味的には、「グレーンウイスキーが入っていない」といった意味で、「シングルモルト」や「ブレンディッドモルト」のスペックの商品の名称として、2000年以前に使われることが多かったです。
現在では、新しく発売される商品に「ピュアモルト」の文言を使うことは、通常はありません。
■スコッチで有名なブレンディッド・モルト
これがグレンフィディックで有名なウィリアム・グラント&サンズ社のつくっている『モンキーショルダー』です!
モンキーショルダーは、日本でも流通していますが、国内ではマイナーかつ、そこまで売れているイメージはないですよね。
でも、世界的には「ブレンディッドモルトといえばモンキーショルダー」というくらい有名です!
※モンキーショルダーについては、いつか別途で記事化したいと思います。
こうしてスコッチ・ウイスキーは
「シングルモルト ⇒ ブレンディッドモルト」
へと進化しました。
■《ステップ③》ブレンディッド・ウイスキーの誕生
次回へ続きます!
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