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存在感を増すインドの巨大ウイスキー市場 《インド②》


■インドのウイスキー市場

前回の要点です。

実は他国の追随を許さないウイスキー大国『インド』 《インド①》 | 記事編集 | note

◇インドウイスキー市場 要点

・世界でダントツのウイスキーの消費量!
(世界販売量の上位10銘柄のうち、6銘柄がインディアン・ウイスキー)

・ただ、
①インド国内でのみ消費されてきた。
②最近までウイスキー消費量の統計がきちんととれていなかった。
③もともとモラセス=廃糖蜜を原料としているケースが多く、その場合は世界的基準ではラムだから。
といった理由で、マイナーな存在であった。

・しかし、最近、本格的かつ高品質なウイスキーもつくられるようになり、品質面でもその存在感を増してきている。


■ところでインドでお酒を飲んで良いの?

インドは、ヒンズー教徒が、約80%と大半を占めます。
そして、それに次ぐのがイスラム教徒が約14%です。

そのヒンズー教・イスラム教のどちらでも、飲酒はNGです。

ただ、ライフスタイルの変化とともに、若者を中心にお酒を飲む文化が広がりつつあるそうです。

#26 ヒンズー教五大罪の「飲酒」がインドで急拡大している理由 | 「日本人が知らないインド経済」佐藤大介 | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

もちろん、いまだに禁酒州があるなど、まだまだ飲酒については、文化的配慮がマストとなります。


私もかつて、インドやバングラディッシュ、モロッコ、チュニジアといった飲酒NGの国を、バックパッカーで一人旅をしたことがありますが、どの国でも入念に探せば、外国人なのでアルコールを飲むことはできました。

しかし、国や場所によっては、レストランでビールを飲んでいる時に、

「お前は飲んでも良いけど、その瓶ビールはテーブルの上に置かずに、床に置いておけ」

と言われたり、酒屋さんで缶ビールを購入した際には、そのままでは「缶ビール」が公衆の面前に晒されてしまうので、新聞紙に包んでから渡されたりと、何度か注意を促されたことがあります。

まるで、「麻薬の密売みたい!」と思いましたが、確かにご当地ではそのようなイメージなのかも知れません。

やはり、その土地の文化・風習を知って、現地の人に嫌な顔をされないように振舞わないといけないと勉強させてもらいました。

話が逸れてしまいましたが、禁酒国:インドでも徐々にアルコールが売れてきているという事実があります!


■世界No.1の人口に躍り出るインド

2023年に中国を抜いて、世界No.1の人口になる見込みのインド。

インド人口、中国抜き世界最多に 今年半ばに14億2860万人=国連 - BBCニュース

そのインドでは、中国と違い、今までお酒を飲む文化がなかったところに、徐々に「飲酒文化」が広がりつつあります。

現時点ですでに、インディアン・ウイスキーは、ダントツの世界No.1販売実績ですが、

人口増加 × 飲酒文化の普及

という掛け算によって、今後はますますその販売量が伸びることでしょう。

そのため、世界中の酒類メーカーが、インド市場に注目しています!


■インディアン・ウイスキーには、すでに世界大手が参入

こちら↓は、前回記事でも引用した世界のウイスキーの販売量ランキングです。(イギリスのDrinks International社が毎年公開している、蒸溜酒の販売量データをまとめている日本語サイトから引用。)

図解■ ウイスキーの販売量ランキング2021【世界】 | alcholog -アルコログ-

実に上位10品目中の6品目がインデイアンウイスキー。
そして、そのメーカーに目をやると・・・

◇インディアン・ウイスキーをピックアップ

①McDowell’s (ディアジオ)
②Imperial Blue (ペルノリカール)
③Officer’s Choice (アライド・ブレンダーズ&ディスティラリーズ)【インド】
④Royal Stag (ペルノリカール)
⑦Hayward’s (ディアジオ)
⑧8PM (ラディコ・カイタン)【インド】

世界のウイスキー業界の2強「ディアジオ」、「ペルノリカール」、凄いですね!

すでに、しっかりとインドのウイスキー市場を押さえています。


■世界売上No.1ウイスキー McDowell’s マクドウェル

インディアン・ウイスキーは、もともとはモラセス(廃糖蜜)を原材料としたラム的なウイスキーが多いと前回ご説明しました。
しかし、先ほどの世界売上10位に入る6品目のインディアン・ウイスキーは、穀物(grainグレーン)が原材料となっているものが多いようです。

特に、売上No.1のMcDowell’sは、スコッチモルトと、インドのモルトとのブレンドだそうです。

ちなみに、2018年からインド国外で販売されるMcDowell’sマクドウェルについては、MrDowell’sミスタードエルと、チョー似ている名前へと変更となりました。

なぜ、この微妙な商品名変更をしたというと、

「McDowell’sって、スコッチ・ウイスキー風の名前だから、ちょっと勘弁してよ~」

という話が、スコッチ・ウイスキー協会から、ディアジオ社へ届いていたそうです。

◇Mcマクとはどいう言う意味??
《知るほどに面白い》 ウイスキー好きのための『ゲール語講座』|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)

すったもんだの挙句、

「インド国内で販売する分は、McDowell’sマクドウェルのままで良いけど、海外に輸出する分はMrDowell’sミスタードエルという商品名に変更する」

ということに決まったそうです。

他のインディアン・ウイスキーと同様に、McDowell’sもインド国内でほとんど消費されていて、輸出分は全体の2~3%程度のため、仮にMcDowell’sマクドウェルとMrDowell’sミスタードエルが、違うブランドだとカウントしても、McDowell’sが世界一ですね。


■インディアン・ウイスキーも本格派へ

No.1販売量を誇るMcDowell’sが穀物(グレーン)を原材料とするように、安価なモラセスを原材料(世界基準ではラム)のウイスキーにはじまったインドのウイスキー文化は、穀物を原材料にする「世界基準でのウイスキー」へと進化を遂げています。

これは、

市場が成熟してくると、
より「本物」を求めるようになる

ということだと思います。

日本のウイスキーも、イミテーション・ウイスキー(原料アルコールに、香料などで色と香りを添加したもの)にはじまり、その後、鳥井信治郎が山崎の地で、麦芽を原材料とする本格ウイスキーづくりをはじめていますので、流れは一緒ですね。


■インドもプレミアムウイスキーの時代へ

今後も、所得水準が上がって行くでしょうから、飲まれる商品の「プレミアム化」が進行するものと思われます。

次回は、インディアン・ウイスキーの本格派・プレミアム化について、ご紹介したいと思います。

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