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アメリカのウイスキー庫:カナディアンウイスキー 《5大ウイスキー④》

■5大ウイスキーについての4話目です

《チャーリー流世界5大ウイスキーの3分類》

◇ウイスキー発祥国系
・アイルランド
・スコットランド

◇移民系
・アメリカ
・カナダ

◇産業としてスタート
・日本

前回は、「ヨーロッパ生まれのウイスキーが移民とともに大西洋を渡って、アメリカでもつくられるようになった」というお話までしました。

その続きからです。


■カナディアンウイスキーの歴史:導入期

アメリカと同様に、カナダにもヨーロッパからの移民が移り住みました。
ただ先にアメリカへ入植したので、カナダへの入植は、その後ということになります。

いよいよカナダへの入植者が増え、またウイスキーづくりも盛んになったのは、1776年のアメリカ独立宣言後のことです。

1776年:アメリカ独立宣言。独立を嫌った英国王室支持派がカナダに移入してライ麦や小麦などを栽培。五大湖周辺で製粉業が発達し、余剰穀物からウイスキーを蒸留。初期の頃は製粉所がウイスキーの蒸留所を兼ねていた。

ウイスキーコニサー資格認定試験教本2021下巻 P156
発行:ウイスキー文化研究所

その後、1840年代にはカナダ全土で200以上の蒸留所が開設されたそうです。


■カナディアンウイスキーの歴史:巨大企業の誕生

カナダでは19世紀に、後に世界最大にすら成長する2つのウイスキー企業が、産声を上げました。

《ハイラム・ウォーカー社》
1858年に蒸溜所を開設。
1882年にのちにカナディアンクラブとなるウイスキーを発売。

《シーグラム社》
1857年に蒸溜所を開設。
1939年にクラウンローヤルを発売。
(現在の売上No.1カナディアンウイスキー)

この19世紀に創業した2社は、1920年~1933年のアメリカ禁酒法時代に、「アメリカのウイスキー庫」として大量のウイスキーを製造。
それをアメリカへ密輸し、カナディアンウイスキーの全盛期を築きました。

アメリカ禁酒法時代に圧倒的な力をつけた両社は、本場スコットランドにも進出し、ウイスキーで世界トップクラスの超巨大企業へ成長。
(シーグラム社は1974年頃に世界最大の酒類企業になったようです。)

《ハイラム・ウォーカー社》
1936年にバランタイン社を買収。

《シーグラム社》
1949年にシーバスブラザーズ社を買収。


■カナディアンウイスキーの歴史:巨大企業の消滅

栄枯盛衰は世の習い。

ハイラム・ウォーカー社も、シーグラム社も、1970年代以降のアメリカのウイスキー離れ(ホワイト・レボリューション)が直撃。
1974年にウォッカの消費量がバーボンを抜くと徐々に業績が悪化。(今もウイスキーの消費量が一番多い国はアメリカ)

また、多角経営の失敗なども重なり、両社とも、無くなってしまったのです。
(ウイスキーブランドは、他の企業へ売却されたので残っています。)

《1987年》ハイラム・ウォーカー社が、アライド・ライオンズ社に買収。

《2001年》シーグラム社が酒造部門撤退。ペルノ・リカールとディジオに売却。

この巨大企業の消滅については、私も非常に興味があるため、もっと勉強した上であらためて記事化したいと思います!


■カナディアンウイスキーとは

超ざっくりいうと、アメリカンウイスキーと同じく、

・原材料
麦芽100%でなくトウモロコシなどの穀物も用いる。

・スチル
連続式蒸溜機を使用。

というスペックとなっています。

※教科書的にはカナディアンは、フレーバリングウイスキー(バーボン原酒的)とベースウイスキー(スコッチのグレーン原酒的)のブレンデッド・ウイスキーが大半を占めているのですが、今回はその説明は省略します。


■アメリカンとカナディアンの共通点

細かいレギュレーションはもちろんカナディアンとアメリカンウイスキー(≒バーボン)とは異なるのですが、以下の2点が共通しています。

◇アメリカンウイスキーと
  カナディアンウイスキーの共通点

・麦芽100%でない(他の穀物も用いる)
・連続式蒸溜機を使用する

つまり、アメリカンウイスキーもカナディアンウイスキーも、スコッチウイスキーのレギュレーションで考えると「グレーンウイスキー」ということになります。

《スコッチウイスキー》
 ◇モルト/グレーンの法定義

稲富博士のスコッチノート 第103章 サントリーHP

稲富博士のスコッチノート第103章バランタイン・ウイスキーの話―その4.ストラスクライド蒸溜所


逆にいうと、スコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーに存在する
モルトウイスキー原酒
(=麦芽100% & ポットスチル蒸溜)

は、基本的にはアメリカンウイスキーやカナディアンウイスキーにはありません。

※最近のクラフト蒸溜所などでは、ポットスチルでモルト原酒もつくったりしていますが。


■ウイスキー発祥国系と移民系の違い

この2グループのウイスキーの特徴は、「原材料の違い」「スチルの違い」で説明することができます。

◇ウイスキー発祥国系
 (アイルランド/スコットランド)

モルトウイスキー原酒がある!
 (グレーンウイスキー原酒も使うが)

◇移民系 (アメリカ/カナダ)

グレーンウイスキー原酒しかない!
 (連続式蒸溜機しか使わない)

これは、ウイスキーづくりの「歴史の違い」から来ているものと思われます!

移民系2ケ国では新天地で生き抜くのに必死で、
「昔からの作り方はこうだ!」とか、
「味わいを重視して、非効率なポットスチル蒸溜」とか
言っている場合でなかったのだと思います。

その土地で栽培しやすい穀物で、
手っ取り早く蒸溜できる連続式蒸溜機
ガンガン蒸溜してウイスキーをつくった。

その中で、バーボンウイスキーやカナディアンウイスキーといった特徴が生まれてきた。

こういうことだったのでないでしょうか?


■そして日本!

5大ウイスキーの最後の1ケ国:日本。
日本のウイスキーは、他の4ケ国ともっともっと歴史が異なります。

次回へ続きます!

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