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マルチショットも悪くない!? 新しいカテゴリーのスピリッツが誕生 《ジン⑩》
■ジンの3つの分類方法
◇ジンの分類①(EUの法律上での規定)
①ジン(≒コンパウンド・ジン/バスタブ・ジン)
②蒸溜ジン=ディスティルド・ジン
③ロンドン・ドライジン
◇ジンの分類②(再蒸溜でボタニカルの香りの添加する製法の違い)
①浸漬法(=スティーピング法)
②ヴェイパー法(=ヴェイパー・インフュージョン法)
◇ジンの分類③(仕上げに水で希釈するのみか、どうか?)
①ワンショット
②マルチショット
前回までで、これら3つの分類方法についての説明が終わりました。
今回はマルチショットについて、深掘りしたいと思います。
■マルチショットも悪くない!
ジンの製法=マルチショットとは?
ジンのボトリング。最後にアレを加えます! 《ジン⑨》 | 記事編集 | note
ジンの原液ができあがって、ボトリングする前に、「水」だけを加えるのが『ワンショット』、水の他に「ニュートラルスピリッツ」も加えるのが『マルチショット』です。
そう聞いてしまうと、
「ワンショットの方が良いんじゃね?」
「マルチショットって、カサ増ししているような・・・」
という印象を受けます。
確かに、良質なジンを安価で大量生産をするためという側面はあると思います。
ただ、『アルコールは、水よりも様々な成分を抽出させやすい』という特徴もあります。
例えば、木樽に水を詰めた場合と、ニューポッド※1を詰めた場合では、アルコール分を含むニューポッドの方が、琥珀色への色付きは、はるかに早いそうです。
(※1 ウイスキーの赤ちゃんであり、蒸溜したての無色透明なもの。ニューメイクともいう。 ニュートラル・グレーンスピリッツとの違いはアルコール度数。ニュートラル・グレーンスピリッツは、Alc.96度以上と非常にアルコール度数が高い。)
このように、アルコール分が原料の風味をより引き出してくれる=感じさせてくれる、という観点から、スコットランド・エジンバラのクラフト蒸溜所であるホーリルード蒸溜所が、革新的な商品を発売しています。
その名もストロングウォーター!
■ホーリルード蒸溜所 ストロングウォーター
ホーリルード蒸溜所は、2019年に100年ぶりにエジンバラに誕生したクラフト蒸溜所で、使用するポットスチルのネックが非常に長いことでも有名です。
その蒸溜所が、『ストロングウォーター』という商品を発売しています。
ショップ - ホリールード蒸留所 (holyrooddistillery.co.uk)
これは二条大麦からつくられたモルトウイスキーのニューポッドに、ニュートラル・グレーンスピリッツを加えた上で加水して、商品化したものです。
ジュニパーベリーが入っていないのでジンではないですし、木樽熟成をされていないのでウイスキーでもありません。
そのため、ホーリルード蒸溜所自らが「新しいカテゴリーの商品=ストロングウォーター」として発売したものです。
使用している麦芽の品種により、「ゴールデンプロミス」と「シュバリエ」の2種類が販売されています。
業界を驚かせているのが、今年新発売した“ストロングウォーター”という、ニュースピリッツだ。これはシュバリエ種、ゴールデンプロミス種という“ヘリテージモルト(昔の品種)”を使ったニューメイクで、それだけでもユニークな製品だが、なんとこれをニュートラル・グレーンスピリッツ(NGS)で割って製品にしたものだ。NGSとジンのベーススピリッツに使われたりするスピリッツで、これを加えたらもちろんウイスキーにはなれない。それを承知で、大麦が持っている穀物本来の風味をダイレクトに伝えるために、あえて水ではなく、NGSで割って(ブレンドして)ボトルングしているのだという。
発行:ウイスキー文化研究所
ジンでも、ウイスキーでもない、新しいスピリッツを開発して発売しちゃうなんて、やりますね、ホーリルード蒸溜所!
ちなみに、ホーリルード蒸溜所はジンもつくっています。
必要最低限の、「ジュニパーベリー」「スカイ島のシーソルト」「天然蜜蝋」のみでつくられた「ハイト・オブ・アロー・ジン」で、以前の記事の《ジン⑦》でご紹介しました。
クラフトのお酒ブームの中で、なぜジンは特に流行っているの?《ジン②》|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
■ストロングウォーター、日本でいうところの・・・
ホーリルード蒸溜所のストロングウィーターは、以下の構成です。
二条大麦100%でつくられた
ウイスキーのニューポッド
+
ニュートラル・グレーンスピリッツ
↓
ストロングウォーター
これって、日本では何に当たるでしょうか?
一番近いのは、これではないでしょうか?
二条大麦100%でつくられた
本格麦焼酎(乙類焼酎)
+
甲類焼酎
↓
甲乙混和焼酎(もしくは乙甲混和焼酎)※2
(※2 甲類焼酎と乙類焼酎をブレンドした場合、使用比率が多い方を、前に表記します。)
厳密には、同じ二条大麦を原料に使うとしても、ウイスキーと焼酎では「糖化酵素」が異なるので、香りや酒質が異なります。
◇二条大麦を原料したしたお酒の糖化酵素
ウイスキー(ビール)→ 麦芽の糖化酵素
麦焼酎 → 麹菌の糖化酵素
原料の風味を伝えるために、あえてニュートラル・グレーンスピリッツをブレンドして、新しいカテゴリーのスピリッツをつくっちゃうという発想には、驚かされますね!
ところで、日本では、焼酎の蔵元の「ウイスキーづくり参入」が相次いでいます。
ストロングウォーター的に、「新しいカテゴリーのスピリッツ」に挑戦するなら、こんなのはどうでしょうか?
二条大麦100%でつくられた
モルトウイスキー
+
自社の本格麦焼酎
↓
新しいモルトスピリッツ!?
うーむ。
マニアックすぎて、商品としては売れないか。。。