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清塚信也とケーキのWA ~私自身も誕生日を祝ってもらえない子ども時代だった~

NPO法人チャリティーサンタは、子どもの貧困や家庭問題における思い出格差の課題解決に取り組んでいます。その中のプロジェクト『シェアケーキ』は、誕生日にケーキを買うことができない(お誕生日のお祝いが難しい)家庭の子どもたちへ、寄付によって誕生日ケーキを贈る活動をしています。
この活動を広めるために、村上信五さんがプロジェクトリーダーとなりスタートした『ケーキのWA』は、世の中には見えづらいこの社会課題に対して、著名人の方々と協力して、幅広い方々に関心を持っていただくことを目的の1つにおいています。

ーー清塚信也さんの11月13日のお誕生日を前に、『ケーキのWA』に参加をしてくださったお気持ちや、チャリティーサンタが取り組む社会的問題についてお話を聞かせていただきました。

清塚さんは「お誕生日のお祝いが難しい」家庭があることをご存知でしたか?

私自身、「社会で困っている人や、子どもの助けになるようなことがしたいな」という考えは、ずっと持っていました。
このプロジェクトのお話をお聞きした時、「経済的困難を抱えている」には単純にお金のことだけなく、社会的な流れの中に日々の生活があって、「知らなかった」というより、「忘れていた」という感覚のほうが近かったように思います。
 
実は、何を隠そう私自身も ”誕生日を祝ってもらえない子ども時代”だったんです。
 
幼少期、音楽に人生のすべてをかけていたので、友達づき合いや文化祭、修学旅行などのそういう思い出は全くありません。音楽にすべてのお金を費やしていたので、自分自身のお小遣いなんかもなかったですし。自転車1つにしても姉のおさがりを使わないといけないとか。
今となっては、母のおかげもあって、その努力が実り、そうでもして頑張ってきてよかったと思えます。
 
ただ、子ども時代を振り返った時、同級生と「同調できない空虚さ」を感じたことは確かにあって。
シェアケーキの活動を聞く中で、家庭の声や誕生日のお祝いを諦めた時の話を聞く中で、そのころの自分の気持ちを思い出しながら、「なぜ忘れていたんだろう」「なぜ”心の支援”に目がいかなかったんだろう」という想いが募りました。

子ども時代に感じていた気持ちが、今の支援に繋がっている部分はありますか?

子どもながら、親が頑張っていると「申し訳ない」と思っちゃうんですよね。
私も、子ども時代は「誕生日、クリスマスなんかこなきゃいいのに」ってどこかで思っていました。いやな気持ちになることはあったんですよね。「またこの季節か」と。
祝ってもらえない、と言いましたが、そんな中でも母なりに頑張って料理したり特別なことをしようという想い自体は感じていました。ただ、それがいたたまれない気持ちになったりもしたんですよね。子どもが感じていることって、大人が思う以上に、大人びた部分を生んだりします。
 
「音楽が人生のために必ずなるから」と母に言われ、それも理解してたし、結果そうなったけど、きっと子育てをする中では母も辛い部分もあったと思います。
私に子どもができて、母の孫への接し方を観ていると、「これが本当の母の愛情のかけ方だったんだな・・」と感じました。大人になってからわかることが、すごくあるんです。あの時、母がどれだけ辛かったか、頑張っていたかが、自分自身が親になってからわかるようになりました。
もし、今、日本の中で誕生日に子どもや親が「申し訳ない」といった気持ちになったなら、そこに誕生日ケーキがあるだけでどれだけ救われるだろうか、と思いますし、そこに寄り添いたいと思います。

清塚さんにとって誕生日ケーキは、どんな力があると思いますか?

誕生日はエンターテイメントの1つですよね。
ケーキという出し物があって、誕生日会という会があってそこでみんなが楽しめる、エンタメそのものだなと。自分にフォーカスされてるっていう気持ち、主役になれる時があるんだっていう自己重要性が誕生日にあるっていうのが大事なんだろうなと思います。 
 
私は音楽を生業にしていますが、音楽の力を借りたり、エンタメが人々に与える影響や力というのは、幸福感だったり、人に優しくなれる気持ちだと思っています。感動して泣いているときに人を傷つける人ってあんまりいないと思うんですね。
そういう気持ちを音楽を通して共有したい。そして、音楽と同じようにケーキを囲んで過ごす時間は、親子が一緒に体感することなので、幸福感や人に優しくなれるそういう経験を増やしてあげたいと思いました。
 
貧しいというのは、子どもにとって選択肢が少ないということなんですよね。今、自分が身を置いている音楽分野や表現の分野で、子どもたちの選択肢を広げてあげたいという想いもあります。
それにまつわる活動はどういうものか・・・具体的な内容はまだ分かりませんが、私自身も今後、考えていきたいなと思いました。

改めて、清塚さんがケーキのWAへの参画されたきっかけや、WA(輪)を広げていく中での想いを教えてください。

今回の参加のきっかけは、村上信五さんという身近な存在からの紹介でした。
村上さんが経済的な厳しさの中にある子どもたちの誕生日支援活動を広げるプロジェクトリーダーに就任し、社会課題の認知を広げようとしていることをご本人からお聞きしました。
村上さんとは82年生まれで同い年。やっぱり同じ年で育っていることは人生の季節感が一致することもあるのかと思います。40歳っていう節目もあったりコロナ禍だったり、社会や自分の人生の節目みたいな空気感があったんですね。
 
コロナ禍で自分を見つめる時間が長くあり、そういう期間を経て、村上さんもちょっと変わったなって思う瞬間があって、雰囲気が変わった、考えがまとまったのかな、みたいな。
一人の表現者としての強いアイデンティティを感じるようになったんです。表現者の同志として彼がどれだけ忙しいのかもよく知っているんですけど、そんな中で社会の支援活動について考え、行動しているんだ、という村上さんへのリスペクトがすごくありました。
 
そして、私は被災地へのチャリティーコンサートなどもやっているけれど、他にやりたいと思っても何から手をつけたら良いのか、全てが出来るわけではないし選択肢が多くて迷うところもあって、その中でこの『ケーキのWA』は、単なるシステムではなく心に寄り添ったものだなとすごく感じたので、自分の中で腑に落ちました。
 
子ども時代、みんなが体験できていることが、できていない。自分がはぐれてしまったような疎外感ってすごく子どもにとってはダメージが大きいんです。この課題に気付いてない方っていっぱいいるなと思ってて。
 
支援をするお金を出すというアイディアは誰でも知っていると思うんですけど、「誕生日のケーキ」というものを届けることで、こんなに助かるんだということは、当たり前が当たり前じゃないという気付きですよね。どこかに貧困があることには気付いていると思うんですけど、具体的に何をすると助かるのか、喜ばれるのかに関してはなかなか知られてないことだと思っています。
 
私が村上さんからのお話で気づいたように、私の周りでもそんな気づきが、今回の「ケーキのWA」の参加で広がっていけばいいなと思います。

清塚信也(きよづかしんや)

5歳よりクラシックピアノの英才教育を受ける。中村紘子、加藤伸佳、セルゲイ・ドレンスキーに師事。桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業、国内外のコンクールで数々の賞を受賞。
人気ドラマ「のだめカンタービレ」他作品で吹き替え演奏を担当し脚光を浴びる。2013年には映画『さよならドビュッシー』で岬洋介役として俳優デビュー。2015年TBS系 金曜ドラマ『コウノドリ』(主演:綾野剛)では、ピアノテーマおよび監修を手掛けるほか、役者としても出演。
知識とユーモアを交えた話術と繊細かつダイナミックな演奏で全国の聴衆を魅了し続け、年間100本以上の演奏活動を展開。2019年8月16日には邦人男性クラシック・ピアニストとしては史上初となる日本武道館での単独公演を開催。作曲家としてドラマ・映画・舞台の劇伴やテーマ曲を手掛けるほか、Eテレ「クラシックTV」ではMCと番組監修を務め、斬新な切り口で幅広い音楽の魅力を伝える。ピアニストとして次々と新しいフィールドへの挑戦を続け、常に話題と注目を集めている。

公式HP:http://tristone.co.jp/kiyozuka/

シェアケーキ公式HP:
NPO法人チャリティーサンタは、子どもの貧困や家庭問題における思い出格差の課題解決に取り組んでいます。その中のプロジェクト『シェアケーキ』は、誕生日にケーキを買うことができない(お誕生日のお祝いが難しい)家庭の子どもたちへ、寄付によって誕生日ケーキを贈る活動をしています。

ケーキのWA公式HP: 
シェアケーキで取り組むお誕生日支援を広めるために、村上信五さんがプロジェクトリーダーとなりスタートした『ケーキのWA』は、世の中には見えづらいこの社会課題に対して、著名人の方々と協力して、幅広い年齢層の方に関心を持っていただくことを目的の1つにおいています。


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