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"父子家庭の支援の少なさ"に生きづらさを感じている <支援家庭インタビュー>
チャリティーサンタは困窮世帯の「思い出格差(体験格差)」解消のための支援に取り組んでいます。
「どのような家庭に支援をしているのか」
「支援をしている家庭はどのようなことに困っているのか」
これらは私たちがよくお聞きする質問です。
また、困っている家庭のイメージを聞く中で「困っていることが分かりにくい」家庭がいることに気がつきました。
家庭が抱える「見えにくい困難さ」を伝えていくために、今回は夏休みの映画支援や自然体験支援などを行ったある父子家庭にインタビューを行いました。
高山さん(仮名)
高山さんは子どもが0歳の時に離婚した父子家庭。
小さな子どもを育てるために、当時の仕事(長距離ドライバー)を退職。しかし、乳飲子を抱えての再就職は難しく、生活に苦しさを抱えるようになる。
子どものためにできることはしてあげたいものの、将来を考えた際、自分自身の体調も含め不安が大きい。
令和3年度調査の結果、母子世帯数は 119.5 万世帯、父子世帯数は 14.9 万世帯。
同じひとり親であっても、数として父子世帯は少なく、社会的に知られていないことから、支援の少なさや社会の理解が不足していることで孤立感を感じている。
今回、小さな子どもを育てる中での父子家庭のしんどさをお聞きした。
子育てのために辞めざるを得なかった仕事
「収入は男性のほうが多い」と思われがちだが、自分自身が父子家庭の生活になった時、実際はそうでもないと感じている。
特に小さな子どもを育てる際、子育てに協力者が得られない場合、「社会で求められる男性像」とのギャップが大きすぎて、社会から見放される感覚を何度も味わった。
我が家は子どもが0才の時に離婚することになった。
原因は元妻の虐待だった。最終的には警察が介入し、子どもと荷物を持って逃げた。
当時、私の仕事は長距離ドライバーをしていたが、0歳の乳飲子を抱えてできる仕事じゃなかったため、やめざるを得なかった。
再就職先を探したが、その壁はとても高かった。
男性の仕事先というのは「働き方」をシビアに判断する。ハローワークに仕事先を紹介してもらって履歴書を送っても「まだ手のかかる乳児を一人で育てている」ーーーーそれだけで、書類選考で全部落とされた。
仕事がやっと決まっても、育児があるので、子どもの体調不良の対応などが重なると、やめさせられることもあった。
女性の場合、マザーズハローワークといった「子育てをする中での仕事」というのを募集している機関で仕事を探すこともできる。父子家庭になって、マザーズハローワークを使ってもいいですよ、と言われたが、父子家庭を想定した仕事は全くなかった。
こういった時に、男性の場合は子どもがいることが(仕事において)大きなネックになることが多いことを痛感してしまう。
つい最近も、そういうことがあった。
仕事が決まり、働きに行ったが、仕事中にケガをした。指が残るか、残らないかの大事故だった。その怪我で休職したところ、「子どもの事もあるから…」と言われてクビになった。このけがで障がい者になった。より、仕事を見つけるのは困難になった。
父子家庭の子育てで感じる孤独感
学校でも保育園でも「父子家庭」という存在は馴染みづらいものだと感じている。
母子家庭は母子家庭同士でつながっているし、行事で顔を合わせても他の家庭のお母さんと話をすることができない。何を話せばいいのかも分からないし、参観日に来るのは夫婦か母親が多くて、父子家庭の自分は肩身の狭さを何度も感じた。
学校で、子どもがトラブルに巻き込まれたことがある。内容は自分の子どものランドセルを壊されるというものだった。
子どもは悪くない中で一方的にされたことだったため、何故そのようなことが起きたのか、しっかりと話し合いがしたかった。相手の保護者とも直接話をしたかったが、「相手のご家庭がお母さんしか時間を取れず、男性と対峙して話あうのが怖いそうなので」という理由で学校側から断られてしまった。
我が家の親は自分ひとり。父親しかいない。他に対応してくれる人はいない。なぜ、そのように言われなくてはならないのか。
そんなこともあって、はたからは白い目でみられるような気持ち、学校側から除け者にされるような気持ちーーーそんなものが積み重なって、子どもには悪いが、参観日などの行事には行っていない。いや、いけなくなったに近いと思う。
運動会は小学校に入ってから1回も行けておらず、親子競技は先生に無理を言って頼んでいた。
「何を言われるかわからない、自分が行かない方が子どもにとってもいいんじゃないか」という気持ちからだった。
父子家庭向けの支援は少ない
子育てが始まった時、仕事だけじゃなくて、家事を覚えることから始まった。自分の世代の男性は家事ができない人も多いんじゃないかと思うが、家事を覚えることも一苦労だった。だけれど、助けの求め先が全くない。相談する機会も、情報もなかなかない。
「母子家庭」で検索にでてくる支援活動も、キーワードを「父子家庭」に変更するとあっという間に少なくなる。検索欄には殆ど無かった。
仕事を辞めて、子どもと逃げるように入居した新しいアパートでは、夜泣き問題に苛まれた。夜泣きの度、河川敷まで子どもを連れてあやすなどを頑張っていたものの、それでも難しくて、子どもの夜泣きを理由に入居2ヶ月後に追い出された。
繋がりがないので、頼れる情報も支援制度も分からなかった。本当に情報に辿り着けなかった。家も仕事もなくなって、生活保護の申請をようやくだした。
2〜3歳のときは、子どもを保育園に迎えに行って、子どもを連れて会社に戻って仕事をしてた。寝る時間はなかった。家でも仕事の電話がかかってきた。どんなにブラックな環境でも働くしかなかった。子どもと生活を守るために必死だった。
そんな生活を続けていたところ、ドクターストップがかかって、また仕事を辞めざるを得なくなった。
眠れなくなって、心療内科に通ったこともある。
体も心も、辛いことが続き、助けを求める先がなくて、ノイローゼで一家心中しようとしたことは何回もある。
一度、子どもの前で手首を切って、子どもと一緒に死のうとした時、なんとか踏みとどまった。踏みとどまれたけれど、それでも正直言えば、心は今もしんどい。
そんな中、この春先に、仕事中のケガで、入院が必要になった。
親の入院時、子ども自身も追い詰められた
この入院で、一番しんどかったのは子どもだと思う。
実家の親は重度の鬱があったので頼れなかったし、ずっと疎遠だった。
それでも、自分自身の入院となって、親も少し落ち着いたタイミングだったので、子どもを預けた。
ただ、自分が入院している間、子どもが祖母に刃物を向けるという事件が起きた。
小学生の子どもが祖母に刃物を向けるなんて、よっぽど追い詰められていたんだと思う。父親がいなくなるかも、死んでしまうかも、という不安感も大きかったのではないか、と思う。
祖母も「もうこの状態では預かれない」ということになった。それでもすぐに相談できる先がなく、預け先もなく、結局、児童相談所で保護されることになった。
子どもを早く安心させたい気持ちもあって、その時は無理やり退院した。
本来は2カ月入院してリハビリしないといけないところをすぐ退院したので、今は指が動かなくなった。
子どものためにしてあげたいことと、必要な世の中の理解
自分自身も、親の愛情を知らない。親父も戦争孤児で、親の愛情を知らない人だった。そんな親に学校の行事に来てもらったことはない。
そんな中で、自分がどれだけ子どもに親らしいことをできているのかも分からないし、子育てをする中で、児童相談所と福祉事務所に電話で相談しながら、一生懸命聞いて育児をしていた。
ただ、それでもやっぱり子どもにできることはしてあげたい。
親の愛情のかけ方が分からないなりに、それでも子ども時代に、楽しい思い出も色々つくってやりたいと思っている。
ただ、自分の今の状況を見た時、どこまでできるかが分からない。
子どもの進学費用より自分の医療費がかかる時もあって、高いときは10万円かかる。医療費補助も、前年の収入で計算されるため、今は補助制度を使うことができなくて、生活がカツカツだ。
今年の夏休みは、自分自身の体調不良や物価高も重なって、大変だった。
チャリティーサンタで行っている企画で夏休みの思い出の体験の企画を活用させてもらった。
夏休み中は休職していたこともあり、いつも一緒にいた。
夏休みも、自分自身の通院に一緒についてきたけれど、病状についてあまり知られると心配をかけるので、説明室とかには入れなかった。なので、自分の体調について詳しいことはわかっていないと思うけれど、それでも子どもが不安そうにしていたのが気がかりだった。
だからこそ、夏休みに親子で「子どもらしい」思い出ができたことは、少しでもその不安を払拭できたのかな、と思っている。
子育ての支援を受けられることは、父子家庭だって同じ親だって、認められているような気持ちになる。こういったいろんな支援を父子家庭も必要としている。
今、世の中には伝えたいのは父子家庭でもしんどさを抱えている家庭はいるということ。
もがき、子育てをする中で、支援を必要としているということ。
子育ての孤独を感じている父子家庭も多いということ。
父子家庭の存在を知ってほしいということ。
様々な家庭のしんどさがある中で、どんな状況であっても親であることを頑張り、支援を必要としている家庭もあるのだという理解が広がってほしい。
NPO法人チャリティーサンタ ルドルフ基金:
ルドルフ基金は、様々な事情(経済困窮、被災、病気など)で「思い出不足」が課題視される子どもたちに、チャリティーサンタが「特別な思い出」を届ける為の基金です。
クリスマスや誕生日の支援の他、思い出格差の増える夏休み等長期休みなどの支援にも取り組んでいます。
https://www.charity-santa.com/project/rudolf/