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【連載小説】いのちをいただく

チャリツモでも執筆をしてくれているともちゃんの小説第二弾。

第一話はこちらから

ともちゃんの夢の中

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これは、ともちゃんの夢の中でのお話です。

ともちゃんは夏の暑い日、すもぐり体験をしに海沿いの町に旅行に来ました。
千葉県の海では、色々なお魚や貝がとれて、どれもおいしいものばかりです。

ともちゃんは透き通った青い海の中、食べられるものを一生懸命探しました。
ともちゃんにとって、すもぐりは初めてのことで、なかなか見つかりません。

やっとのことで、小さな色とりどりの貝を3つ見つけました。
ともちゃんは、大喜びで3つの貝を持って海底から上がっていきました。
とってきた貝を浜辺に置いて、近くにもっと何かないかなと思い、ともちゃんはまた同じ場所のあたりに戻っていきました。

すると、さっきは見当たらなかった少し大きな貝がそこにいました。
ホタテのような形で、白い貝殻にピンクの線が入っています。
貝は何やらワァワァ騒いでとびはねていました。
ともちゃんは、はっとしました。
その貝は「私の子たちがいない!」と言っているのだと感じたのです。

ともちゃんは急いで浜辺に上がりました。
浜辺では、さっきとった3つの貝が、えんえん泣いていました。
まるで「暑いよう」「お水がほしいよう」と言っているようです。
ともちゃんは貝たちを抱えて、元の場所に戻っていきました。

海底の大きな貝のもとに戻って、3つの貝は「ママ~!」と言うかのように喜びの声をあげました。大きな貝も安心したようです。
「ごめんね…」
ともちゃんは泣きながらそう言って、大きな貝を抱きしめました。
「ちゃんと子どもたちの面倒を見るんだよ」
ともちゃんは大きな貝をまっすぐに見つめて言い、浜辺に上がっていきました。
その日、ともちゃんは何もとらずに宿に帰っていきました。


海辺のお魚屋さん

2日後、ともちゃんはおうちに帰る前に海辺のお魚屋さんでお昼ごはんを食べることにしました。

「お待ちどお!」
注文したほたての素焼きが出てきて、ともちゃんは息をのみました。
白い貝殻に入ったピンクの線は、間違いなくあの貝のものでした。
目がうるうるしてきて、ともちゃんは下を向きました。

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「ん?お姉ちゃん、どうかしたかい?」
お料理を持ってきてくれたおじさんが聞きました。
「いえ、何でもないです」
ともちゃんは顔をあげて、おじさんに笑顔を作って見せました。
「いっぱい食べてくれ。うちでとれたのは、貝も魚もおいしいよっ!」

おじさんが厨房に戻った後、ともちゃんの両目から涙がぽろぽろとこぼれました。
この貝は、最期にどんな気持ちだったんだろう?
あの3つの子どもの貝たちはどうしたのかな?まだ海の中にいるのかな…?

ともちゃんは、貝もお魚も、大きくなったものをとるのだと気づきました。
3つの貝たちは、まだきっと海の底で生きている。
でも、あの子たちもいつかは人間たちにとられて食べられちゃうんだろう…。

ともちゃんは、ほたての貝柱を箸でとって口の中に入れました。ここまで長い年月を生きてきた貝。
おじさんが心をこめて料理してくれた貝。

その味は、最高においしいものでした。


あとがき

こんにちは。お読みいただきありがとうございます。

ちょっと前に見た夢が、ぐっと来たので何か形にしたいと思い、お話にしてみました。
実際に見た夢では、大きな貝を抱きしめたところで目が覚めました。ちなみに夢では、サンリオキャラで一番好きなキキララちゃんが一緒にいました。

よく言われるように、「命をいただく」ということについて意識する人は、現代とても少ないと思います。お魚もお肉も、切れてパック詰めされた状態、料理された状態でお店に出ているからです。
そのお魚や動物が生きているところを見ていたり、それを自分の手でとらえて食べたりすることで、多かれ少なかれ「他の命を犠牲にして自分は生きている」という感じがしてくるものです。

私はかなり繊細な方で、はまぐりを下ごしらえで塩水につけている時に、貝たちが動いているのを見て料理しづらくなったこともあります。

ちょっと心が痛むけれど、人間が食べるために神様が作ってくれた生き物たちであると信じて、感謝していただく。そんな気持ちをいつも忘れないでいられたら、素敵だなと思います。


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