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結局僕たちはコバタケの手のひらの上で転がされているだけなのかもしれない
数ヶ月おきに読書会に参加している。書店員である友人(往来堂書店の髙橋店員。Xで時おりバズっている)から誘われて参加し、最初は皆初対面だったが、今では街ですれ違ったら声をかけるくらいの関係性にはなっている(と僕は思う)。メンバーは、書店員×2、文芸誌の編集員、文筆家、そして僕なので、唯一本に携わる仕事をしていない僕は少しだけ肩身が狭い。一般的に見ると本を読んでいる側の僕だが、彼らと比べると足元にも及ばない。
読書会と言っても、時にはお酒を飲みながら話すこともあるほどラフなもので、課題本を決めて当日までに読んできて感想を話す、という体で進めている。ひとつルールでおもしろいものを挙げるとするなら、その作品から連想される作品を持参して関係性を語ることだろうか。まだまだよく知らない他のメンバーのバックグラウンドや普段の読書志向が窺い知れて、好きなテーマだ。
今回の課題本は高山羽根子『パンダ・パシフィカ』。初読時にはスルスル読める割に、どういう感想を持ったらいいか掴めず終わってしまった不思議な作品で、「読みはしたけど・・・」という感情を持て余してしまった。それだけに自分が持っていく感想にも不安があり、一段と心細さを抱えて臨んだ読書会になったが、さすが本読みに精通したメンバーが集まっているだけあり、帰る頃には「一番楽しい読書会でした」と興奮しながら帰ることになった。
会の中で、本の装丁の話になる。前々回の課題本だった松永K三蔵『バリ山行』でも、カバーを外したところに物語のモチーフのひとつであるマスキングテープが描かれており、憎いですね〜と話していたのだが、『パンダ・パシフィカ』も帯を外したところに仕掛けがあり・・・ちょっとギョッとするので、実際に確かめてみてほしい。
調べてみるとどちらの作品も川名潤さんが装丁を手掛けていた。川名さんは他にも佐藤究『テスカトリポカ』や白石一文『一億円のさようなら』など、今思えば装丁が印象的だったなあと思う作品を手がけており、ここ最近目に留まった覚えのある作品でよく名前を目にする方だとわかった。この感覚どこかで感じたことあると思ったが、すぐ合点がいった。コバタケだ。
コバタケこと小林武史は日本を代表する音楽プロデューサーで、サザンオールスターズやMr.Childrenとの共同作業者として名前を目にした人が多いかもしれない。高校時代ミスチルにどっぷりだった僕からすると、コバタケの作風に耳が慣らされてしまっているのだろう。ふと耳にして「いいな」と思う曲を調べるとコバタケが関わっていると判明する機会がここ10年ほどあまりにも多い。
back number『ヒロイン』や『手紙』、SEKAI NO OWRI『RAIN』、映画『あやしい彼女』の劇中音楽・・・挙げ出すとキリがない。結局僕たちはコバタケの手のひらの上で転がされているだけなのかもしれない。その心地いいリズムで。
いつか言語化したいと思っていたコバタケとの切っても切れない関係性について、書いてみるきっかけとなった『パンダ・パシフィカ』読書会であった。