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八重咲きの桜たち
萌黄色の御衣黄、カレー色の鬱金と、珍しい花色の桜の話題が続きました。今回は桜につきものの儚さをあまり感じさせない、華やかな八重咲きの桜たちをご紹介します。
花笠(はながさ)
私が通勤に使っている遊歩道には、珍しい桜がまとまって植えられているところがあります。
でも、行きはダッシュで通り過ぎ(気になる桜だけ急いで撮影、それでも電車に乗り遅れる)、帰りは暗くて撮影できず。
そんな中で、この花笠だけは、真後ろに明るい大型ドラッグチェーン店があるために、夜でも撮影することができます。
お店のあかりを借りずとも、花自らが光を発しているような華やかさです。記事冒頭の写真は昼間の姿です。
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花びらの数は30枚から40枚。
七福神の名前を持つサトザクラの代表選手フクロクジュと、野生種のカスミザクラをかけあわせたもので、桜研究家の浅利政俊さんが、フクロクジュの実生株から選抜した品種です。
この花を見ていると子供の頃、お花紙で作った紙の花を思い出します。
ピンクのお花紙一色、それもないときはチリ紙で紙の花を作った記憶がありますが、この紙の花、本気で作ると結構いろんなことができてしまうらしいのです。
タンポポ、カーネーション、シャクヤク…。
芸術センスがあれば、もっといろんな花ができそう。
花笠もできそうな気がします。
妹背(いもせ)
京都の平野神社に原木があります。
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花の外側が盛りになる頃、花芯に小さなつぼみが生じ、外側の花びらがしぼむ頃にそのつぼみが開く、二段咲きになることも多いとか。
雌しべを2本持つ花もあり、果実も2個できることから、親しい間柄の男女を意味する「妹背」と名づけられました。
近所の妹背は、段咲きや仲良しの二つの実を見せてくれるでしょうか。
ちょっとわくわくします。
紅華(こうか)
花笠と同じく浅利政俊さんが作出した桜で、オオヤマザクラとサトザクラの雑種と推定されています。開花期間が長いそうですが、これだけ見事な八重咲きの花がいつまでも咲いているとちょっと重そう。桜の木にがんばれと声援を送りたくなります
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楊貴妃(ようきひ)
花色が美しく豊満な姿から、楊貴妃を連想して名付けられたといわれます。花びらは20枚前後、花びらの先が細かく切れ込んでおり、可憐な雰囲気が漂います。傾国の美女ならぬ傾国の桜、でしょうか。
かなり古い品種で、江戸時代に著された日本初の園芸書「花壇綱目」に、既にその名が見られます。
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ソメイヨシノと交代で咲き始める個性派の桜たち。
花の名前を追いかけているだけで、古典、中国史、民俗学、神話と、いろんな勉強ができてしまいます。
妹背の意味は仲良しの二人。
二段咲き、二つの実のハッピーセット。
よし、覚えたぞ。