36 ラストラリー 最後の回復
死が迫っているように見える人の症状が、一時的に回復することを「中治り現象」「ラストラリー」と言う。
その原因は、脳が長く生きようと、幸福感を生み出すホルモンが分泌されるためと考えられている。
そして、それは長くは続かない。
あくまでも一時的な回復である。
例えば、何も食べられなかった人が突然好きな物を食べだしたり、起き上がることのできなかった人が立ち上がり歩き出したり。
それは数時間〜数日だけの特別な回復とのこと。
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母にもそんなこと起きるのだろうか?
この状態の母が、急に元気になったりするのだろうか?
そんな気持ちで「中治り現象」についてのサイトを眺めていた。
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母の実家に行った翌朝5時。
母が、突然何かを言い出した。
私はモゾモゾ布団から起き上がり
どうしたの?と声をかける。
また痛みかな?痛み止めするかな?と思ったがどうやら違うらしい。
姉も、父も起き出す。
「水飲みたい!もってきて!」
「冷蔵庫にちゃんと団子しまった?!」
・
・
「みんな!もう寝ていいからね!」
……なんだ!?
確かに昨日、死を感じたはずだ。
殆ど喋らず食べず動かず、意識もはっきりしなかった母だ。
なのに今。。ハキハキ喋ってる!!?
寝ぼけながら察した。
もしかして、これが中治り現象…!?