元リクルート社員が語る 仕事への向き合い方/『SHEmoney』松尾真里
・松尾真里さん
SHE株式会社で女性向けのマネースクールSHE moneyのブランド責任者を務める。新卒でリクルートに入社するも20代でキャリアチェンジを決意し退職。その後はSHE株式会社に転職し、さまざまな新規事業の立ち上げなどに携わっている。
・マネースクールSHEmoney
自分らしい資産形成を学ぶマネースクール。お金を稼ぐ・増やすのではなく「自分にとっての豊かさ」に焦点をあて、コーチングを通して深掘りをしていく。金額のような定量的な指標ではなく、自分が感じる豊かさを基準として一人一人に合わせたプランニングが可能なマネースクール。
今回は女性向けマネースクールSHE moneyのブランド責任者を務める松尾真里さんへ「仕事をする上で大事にしていること」をテーマにお話をうかがいしました。
20代でのキャリアチェンジ「紋所をつくる」
ーリクルートからの転職は大きい決断だったと思いますが、なぜ20代でのキャリアチェンジを決断されたのでしょうか?
松尾さん 私の場合は、20代で何かをやりきったキャリアを積みたいという思いがもともとありました。私は結婚をしていますが、今後妊娠・出産となった場合キャリアから一瞬離れたとしても復帰がしやすいような実績作りとしてですね。私はここまでやってきている!という紋所。実際にキャリアチェンジをしてSHE moneyに取り組むことは、私の紋所になりつつあります。
大事なのはブレない指針と振り返り
ー日々チームのマネジメントをされているかと思いますが、メンバーとのコミュニケーションをとる上で大事にしていることは何でしょう?
松尾さん 一番大事にしているのは心理的安全性です。リクルートで働いていたときは、理詰めされる厳しいコミュニケーションでした。そういったコミュニケーションも大事な観点ではありますが、今はメンバー同士で意見の出しやすい雰囲気作りをしています。特に新規事業は、思いつきのものが当たる可能性もありますし、普段からさまざまなアイデアをどんどん出していけるように心がけています。新しいメンバーが入ってきたときには「未来を考える会」というものも開きました。
ー熱そうですね!
松尾さん 新規事業は本当にカオス。その中でも頑張っていける指針になるのはSHE moneyの事業としてやりたいwil、個人が持っているwillが重なり合う部分だと思っています。言われたからやるのでは続きません。「この事業に関わって私はこうしたい!」という自身の意思や、なぜSHE moneyに関わりたいと思ったのか、ここで成し遂げたいことは何か、コミュニケーションは社員に限らず業務委託の方など全員に対して行っています。ほかには毎月オンラインでミートアップも行なっています。みんなで先月の自分と比べて今月の自分がどうだったかを振り返り、内省できるような場を設けています。
「基本的に休みたい人間」だからこそ「強制的な場」を設ける
ーちなみに、松尾さんが先月から今月でレベルアップしたと思うことはありますか?
松尾さん 個人的な話ですが結構新規事業をやっているとき、n=1を見過ぎてしまうことがあります。その母集団がまだ少ないというところと、その中で上がってきたn=1の声が大きく見えてしまい、特に丁寧に対応してしまい……。そこだけに注力しないよう、全体を俯瞰した上でどこが課題なのかを特定して推定していくことは先月よりできるようになったと感じています。
ー何を心掛けてレベルアップしたのでしょうか?
松尾さん まず一人でやろうと思ったらできなくて。私、基本的に休みたい人間なんですよ。
ー正直なところがでましたね!
松尾さん 休んでいた方がいいじゃないですか。そんなに一生懸命仕事しなくていい、それで消費するくらいだったら休んだ方がいいと思っているんです。なので一人でやろうと思ったらまずできないので、経営層を交えてディスカッションをする場を週に1回設けるようにしました。経営視点でアドバイスをくれる人たちと、週に1回全体俯瞰をする強制的な場を設ける感じです。
ー自分以外の目が常にある場を構造的に作ったということですね。自分のマインドだけでは惰性だと。
松尾さん そうです!全然、無理です!
「何のためにやっている?」辛いときは目的に立ち返る
ー新規事業に携わる中で体力面やメンタル面でも苦しい状況はあるかと思います。過去に「本当に折れそうだった!」といったエピソードはありますか?
松尾さん SHEmoney立ち上げるにあたって、最初の仲間集めがとても大変でした。私はリクルート出身ですので、金融関係へのツテは全くありませんでした。そんな中で金融のプロフェッショナルたちに話をつけに行くところまでが大変。今回は完全中立のプロと一緒に教材作成をしたかったので、個人で独立されている人たちを意地で検索して、片っ端から何百件とメールを送りました。
その中で話を聞いてくださる方がいらっしゃってアポを取り、ビジョンをお伝えしました。ですが先方はもちろん金融のプロですから、「ポッと出の素人がきたぞ」といった感じでした。中には「新参者が参入する領域ではない」と厳しいお言葉をいただいたり、2時間くらい説教されたりしてしまうこともありました。アポイントを繰り返していた時期は、辛かったですね。
ー2時間も!辛さは1人で抱えていらっしゃったんですか?
松尾さん そうですね。そもそも立ち上げのときのコアスタッフが、私のほかに1名しかいなかったので二人三脚でした。そのメンバーにちょっと吐露しながら、「私たちが掲げていることは絶対に間違っていないはずだから、走りきろう」と励ましあいながらやっていました。
ーほかにも辛い日々があると思いますが、どうしても心が折れそうになったときは、どのように乗り越えていかれたのでしょうか?
松尾さん モヤモヤや不安をノートに書き出したり、モヤモヤした状態をそのまま人に話して誰かに整理してもらったりします。そして最後には必ず目的に立ち返るようにしています。「心が折れそう」「もうやりたくない」と思ったときに「そもそも今、目の前でやっていることは何のためにやってるんだっけ?」「これって、必須?非必須?」と考え、「目的があるし、これは必須だよね」となったらやらない理由がないので、そこで自分を奮い立たせます。
仕事はバトンパス。失敗から学んだ「想像力」
ーこれまでのリクルートやSHE株式会社などでの経験から、松尾さんの中で働き方や意識が変わったなと思う出来事はありますか?
松尾さん ありますね。今の仕事の教訓は「想像力を持って働く」です。これに紐づくエピソードがありまして。新人のリクルート社員だったころ、想像力を一切持たずに働いていたことがあるんです。自分のタスクしか考えずに「これが終わったらあとは知らんぷり」といった感じ。そのため期日も守らない、期日を勝手に伸ばす、次の人へは期日ギリギリに仕事を渡すなどをしていました。その結果クオリティが下がってしまい、加えて周りの人達からの信頼を失ってしまったんです。とても怒られて……上司や周りからは「今松尾の信頼は残高ゼロじゃなくてマイナスだから」「松尾と仕事すると事故る」などと言われてしまい、ものすごく辛かったです。それ以降、タスクはバトンパスリレーなんだと思うようになりました。バトンの渡し方もできるだけ走りやすいように渡すっていうことを、当たり前に考える必要があるのだと学びました。
こんな思いはもう2度としたくないと思い、最初にやったのはスピードで勝つことです。日々のメール返信や本当に小さいところから一瞬で返すようにしました。スピードでまず信頼貯金を作ってから、その間にスキルを身につけて早くクオリティが高いものを出すということを地道に1年ぐらい続けた結果、マネジメントを任せてもらえました。
ーなるほど。失った信頼を貯め直すのって本当に大変ですよね。日々コツコツと速いレスポンス、相手のことを考えてバトンパスをまわすということですね。
今回はさまざまなお話をありがとうございました!
厳しい環境でさまざまな経験をしてきた松尾さん。モチベーションの保ち方や実際の失敗から学ばれた教訓、仕事に向き合う姿勢などを真摯に語ってくださいました。この機会に自身の仕事への姿勢を振り返りつつ、松尾さんの「環境を整える」「想像力を働かせる」などの工夫をみなさんも取り入れてみてはいかがでしょうか。