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シンギュラリティ #0

「一つ、昔話しをしようか。
まだ人類が実際に天国地獄を作り上げる前の話。」

身体の感覚が全く無い状態で誰かが話し掛けてくる。
真っ白な世界をモニター越しに覗いてるだけの様な感覚だ。

こいつは誰だ?俺何故ここにいる?少し前の記憶があやふやになっている。
それでも構わず男が話を続ける。

「一人の男が命がけでブロックチェーン技術に関する初歩的な技術を世界に向けて発信した、初めは新しい通貨を管理するものに使われ広がった。」

この違和感の正体がわかりつつある気がした、この声は耳からの情報ではなく、鼓膜を通さないで直接脳に入ってくるようなそんな感覚。
気味が悪い。

「彼にとって富を手にすることなんてどうでも良かった、目的の第一段階としてネットワークを大規模に広げる事にあった、そうこれからお前が住むであろうこの世界の基礎となるネットワーク。
彼が手に入れたのは「不死」人類で初めて「不死」を手に入れた人物である。」

そしてこれは自動で再生されてるメッセージのような一方通行な口調だ。
不死?不老不死の人間が居るって?

「当時、ビットコインなどと呼ばれた暗号通貨が一般的に広がる頃には彼の物質的な肉体は存在せず、記憶や判断パターン、感情パターンなどのデータとして新しい人類へと進化していた。
炭素ベースの脳から、シリコンベースの脳へとアップグレードしたわけだ、今のお前と同じ、彼が一番最初だった。」

まて、さらっとすごい事言ってる、夢?
だとしたら、相当酷い悪夢だな。

「それから、アメリカなどの大企業の創設者なんかが真似しだして人類は肉体を持つ者と持たない者に二分した、簡単な話だ金持ちは死なない死後の世界がある者と死後の世界が無い者に分かれるだけだったのだが、一部の者は、肉体を捨て地球までも捨てた。これが新宇宙時代の幕開けとなった。」

この声の正体は誰なんだ?
新宇宙時代って一体何のことだ?

「と、ここまでは目覚ましい人類の発展に思えるが、シリコンベースの脳になっても人間の支配欲は衰える事なく、全宇宙を我が物にしようと目論む勢力が現れ始め「ブラックホールエネルギー」の奪い合いから3つ大勢力による三つ巴の戦争が続いている…。」

ブラックホールエネルギー?初めて聞いた、一体なんなんだ。

「少し昔話に花が咲いてしまったが、お前のこれからの話に移ろうか。」

この瞬間、男が目の前に現れ、自分の身体に感覚が戻ったのがわかった、フワッと室内の温かい温度が伝わり少し痺れているような自分の両手掌を広げて見てしまった。

「肉体を失ったお前は、三勢力の代表者による競売にかけられる、それから「適所」へ配属になる。」

「代表者って誰だよ!適所ってどこだよ!」

やっと声が出せる様になった。しかし、男は話を遮るように続けた。

「ちなみに、通称「天国」へと配属になった場合はいろいろと条件付きではあるがデリートし完全に命を絶つ権利がある。
「地獄」へと配属された場合はこの宇宙がなくなるまでは落札した勢力が所有するモノという扱いになり「ブラックホールエネルギー所」などでの労働となるからな。まだ競売が始まるまで時間がある何か質問はあるか?」

「何故、俺が他人に死後?の人生を勝手に決められなくてはいけないんだ!」

なんだか咄嗟にこんな質問しか出来なかった、こんな事を聞きたいんじゃないと思っていたらすぐに答えが返ってきた。

「一言で言えば、お前が貧乏人だからだな。」

一瞬頭に血が上ったが夢だと言うことを思い出し大人しく話を聞いてみることにした。

「誰かに雇われて生きる、今までと変わらないだろう、ちなみに天国と言われる領域には三勢力とも七階層あるらしいが容量が決まっているため、誰かが抜けない限り入る事は出来ない。」

いろいろと情報が多くて混乱はしているが、少し間を開けて言った。

「俺は、死んだのか?天国に行けるのか?」

男は少しニヤッとした表情でこう言った。

「まあ、安心しろどこへ配属になっても。住めるストレージやコントロール出来るアバターも用意される。
それに、大規模な戦争が起こっている天国から人が減って居るのも事実だ。」

その瞬間、ピーピーピーとアラームが鳴り、男が背中を向けて歩き出すと振り向きこう言った。

「さあ、競売の開始時間だ。」

※2019/07/16、修正

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