見出し画像

正直村の活性化興味ないはなし

こないだまで2019年だった気がするのに、気付けば2021年も終わりに近付いている。なんとなく社会全体の閉塞感があるなかで、移住、起業、結婚をした私にとってこの2年弱の期間は本当に一瞬だった。あまり村ライフを振り返ることがなかったので、ちょっとこのタイミングで振り返ってみることにしようかと。


1. 南牧村ってどんな村

そういえばあまり村の紹介をしていなかったので。群馬県の南西部にある村で、人口は1600人ほど。村の面積の9割ほどが森林で、戦後の大規模植林もあって、近隣自治体と比較しても相当スギ率が高いように思える。電車の駅はなく、最寄りの駅(下仁田駅)から一日数本バスが出ている…。と言うと相当秘境の村のようにも思えるけど、下仁田市街地から村の入り口までは車で10分ほど。意外と便利だよ

高齢化率が日本一だったり、中学生以下の人数の割合が日本最少だったり、民間シンクタンクでの「消滅可能性都市」という指標で日本一だったり…。とにかくデータだけを見ると結構なワースト記録ばかり叩き出している。

画像1

しかしながら村民はその事実に悲観的になって暗い雰囲気で生活しているのではなく、むしろ明るく前向きで、村暮らし特有の知恵をたくさん活かしながら楽しく生活している人がとても多い。本当は村の歴史の話もし始めると富岡製糸場との繋がりとか色々あるんだけど、今回は割愛。


2. 古川と南牧村とのつながり

大学生のときに先輩に連れていかれたのがきっかけ。2015年3月のこと。大学2年の終わりかけっていうタイミング。そこで「村暮らし特有の知恵」をたくさん学ぶことのできる環境と、川のせせらぎと小鳥のさえずりで目が覚める世界に感動し、実家の横浜から頻繁に村に通うようになる。結局2020年7月に住民票を移したけれども、それまでの5年4ヶ月で70回以上は村に行った。マジ

画像2

↑こちら初南牧村のときの私の投稿。まさか5年後の生活拠点になるとは全く思っていなかった。

2016年から「なんもく大学」という名前で団体を運営。村民を先生として、田舎暮らしの知恵や生きる力を学ぶというイベントを、月ごとにテーマを変えながら開催しまくった。メープルシロップ作り、アップルパイ作り、ツリーハウス作りなど…。まあ色々。そんなこんなで色々きっかけがあって、結局2020年1月から横浜と南牧の2拠点生活を開始、2020年7月に通いなれた村に正式に移住した、のである。


3. 何をしに村に移住したのか

どうしても村の知名度(高齢化率や消滅可能性都市)的な面で、移住したと言うと「地域おこし」「地方創生」「村の活性化」みたいなキーワードを言われることが多い。村の住民からもそれを期待するような声をよく聞く。まあ全く思っていないわけではないけれども…という感じ。また今でこそ林業を会社作るまでしてやっているけれども、当初は林業にもそこまでの興味はなかったのである。

ではなぜ移住したか。それは、「前向きな空気感」と「都会にはない自由度の高さ」から、「この村ならなんでも夢が叶う気がする」という感触を持てたからだ。「なんもく大学」を運営していた頃から薄々その感触はあったが、なんとなく乗るしかないビッグウェーブな直感がしたのでそれが決め手となった。

この私の行動のどこにも「地域を元気に」なんて言葉はないし、「限界集落をどうにかしたい」というビジョンもない。(というか人様が長年積み重ねてきた生活そのものを限界呼ばわりってなんとなく気に入らない。)強いて言うなら、文化や伝統、先人が生きてきた証が失われるのは勿体ないなというあたり。だがそれも強引に残し続けるのが正解だとも思っていない。

結論、移住の理由なんてポジティブなものばかり。だって、そうじゃないと続かないっしょ。


4. 村の活性化についてどう思っているか

繰り返し言うけれども、村を活性化しようと思って来ているんじゃない。というより、何ならそんな程度の理由でモチベーション維持して活動できませんって感じ。日本は人口が減るいっぽう、高齢化率が高まるいっぽうの、少なくとも私が生きているうちは衰退し続けるような国。残念ながら。そんな国で自分の住んでいる村の活性化だけ考えていても、他の自治体と人の取り合いになるだけで結局無駄な戦いを生むのである。そんな単純な話じゃないとは思うけど。

我々世代が直面するこの衰退への道のりをいかに軟着陸させるかっていう戦いに今身を置かれているんじゃないかと思っている。それを経済、テクノロジー、政治、教育、いろんな分野で戦っている人がいるんだろうな。

このご時世なので、最近よく「テレワークの人たちをいっぱい村に呼び込めばいいじゃないか」という案を言われる。これ、どう思う…?村には耕作放棄地が山ほどある。手入れもろくにされない荒れた山林も山ほどある。そんななか、耕作放棄地と荒れた山林に囲まれた団地に、テレワークの人が大勢ゾロゾロ移り住んで、家に引きこもって仕事をしている。人口は増えて、奥さん連れてきて、子供も税収も増えた。これって地域活性化したって言える、んですか、ね…。

確かにデータだけでは活性化したように見えるかもしれない。でも元からの村の住民がそれを本心から喜ぶとは到底思えないし、そもそも昔からその地で育まれてきた文化や生活を無視し過ぎじゃないですか…と。(勿論、極端な変動でなければそういった移住者がいることはとてもいいことだと思うが…)

人が増える、金が増えるというのはどちらかというと都会的な理想の追求の仕方かなと思っていて。必ずしもその価値観が田舎にマッチするかというとそうでないこともあるのかなと。地域には地域なりの維持や発展の形がある。それを各地域が見つければいいのであって、比較し他の地域と戦うべきものではないということ。勿論人もお金も増えたら嬉しいことも多いけれども、それでも意外と田舎ではススキだらけの畑に農作物が植わるのを期待している人は多いし、伸びすぎたスギで遮られた木漏れ日や景色を欲している人は多いということ。この感覚は住んでみないと正直わからなかった。

画像3

ま、この村にももう少し若者増えたら、子供も増えたら楽しいだろうなというのは思うんですけどね。でも総人口減るのある程度わかっていながら、人がどこからでも湧いてくるみたいな期待をしてはいけないなと思うんですよね。正直それが現実であって、極端な移住者探しをするのは住民にとっても移住者にとってもヘルシーではない。

というわけで、村「だけの」活性化にはとても興味が湧かないもんで。地域なりのカタチを探すのみだ、というのが基本的な考え。土地柄や歴史、文化や伝統をリスペクトしながら、その「地域なりのカタチ」を追い求めるということが今すべきことなのかなと思う。決して活性化しなくてもいいので。


5. 林業と地域活性化

林業という仕事については前回の記事でも説明しているんだけれども…

超手短に言うと、森林の手入れは土砂災害の発生に強く関係している。これはだいぶ前の映像だけど、南牧村が災害の原因となったと言われた話。あまり林業に馴染みのない人は一度見てほしい。

これが現実である。国土の広さってあまり変わらないものだと思うけれども、国土に関わる仕事である第一次産業の従事者は年々減ってきている。(林業は近年に限っては微増らしい)そして第一次産業従事者の高齢化率もそこそこ高いので、数年から十数年くらいしたら技術的に成熟した上の世代が一気に抜けてしまうおそれもある。そうなったときに、誰が畑を守るんですか、誰が山を守るんですか。時代の変化でお金の稼ぎ方が変わったから放棄されてもしょうがない、で済ませられる話ではない。山は田舎の村だけの持ち物ではないから。川で下流に繋がるすべての地域やその住民に関係するものだから。

大量の山林を抱える自治体の住人として、先ほどの地域活性化における「地域なりのカタチ」に山林の手入れは切っても切れない関係。村での日常会話でも山の話はよく出てくる。「あの山のスギは夫が植えたから、夫は心をこめて手入れするんだけど、息子はそんなん知らないから興味ないんだよねぇ」とか。「昔は自分の家は自分の山の木使って建てたもんだけど、今の若者はそんなの興味ないよねぇ」とか。資本主義だとか価格競争だとかっていう強敵はいるけれども、「地域なりのカタチ」の追求のヒントって地域の人の日常会話の節々にあると思う。そしてこの山村では、林業がそのキーワードのひとつになると思える。

画像4

一応株式会社を作ってしまった人間として、金稼ぎはどうしてもしないといけない人生なのが若干むず痒くもなるんだけれども、金や数字では測ることのできない豊かさを感じ続けて生きていたいし、その世界を子や孫世代、後世とシェアしたい。

これは事実に少し基づきながらも半分直感だけれども、大規模植林、大量の移住者受け入れ、山林開発してメガソーラー大量に建設など…何かを解決するために極端なことをするって長い目で見るといいことではない気がする。多少時間がかかってでも、現状を悲観的に見ず、少しずつ地道に物事を進めていくというのが、長い目で見たときの正解に一番近いんじゃないかなぁ、とか思う。みたいな話に林業ってとても相性がいいと思っている。目先の利益に目が眩むことなく進んでいきたい。


6. 要するに何がしたいのか

正直自分が猛烈にしたいことは林業でもないし、金稼ぎでもないし、高い地位を得ることでもない。金に頼らない豊かな生活の実現というのは個人的に叶えたいことではあるけれども、それ以上に一番思っているのは地球に恩返しがしたいということ。(過去記事でも書いた)地球内、あるいは日本国内におけるさまざまなアンバランスな仕組みを是正したい。(もう少しかっこいい言い方を研究したい)

というのは、満員電車やタワマン群などの人口集中が引き起こす、心的負担や災害対策などの問題。第一次産業従事者数の少なさの問題。針葉樹の多さによる花粉症や土砂災害などの問題。食糧自給率。人口ピラミッド。労働時間の長さ。人種差別から教育に至るまで…。ありとあらゆるアンバランスな状態がこの世に存在して、そしてそれが金や数字で価値観が固まりがちなことが原因になっていることも多い気がしていて。なんとかならんかなぁと思うわけですよ。村の活性化でも林業の活性化でもなく、その根本にある見えない敵と戦うため、日々手足を動かし続けている、つもりなんですよ。

見えない敵との戦い方として、大学院などで研究したり、データと睨めっこしたりという戦術もあるんだろうけれども。私の場合はフィールドを持ち、実際に自分がプレーヤーの一人として戦いたい。それは自分の技術力が上がるという感覚が好きだから。そして現場を知らずにあーだこーだ言うのなんかカッコ悪いから。みたいな。(あと、あんまり勉強が好きではないのでたぶん机に座ったアプローチは長続きしない)今後も手足を動かしながらの経営、頑張りますよと。

ちなみに余談だが、高校時代(9年前)に卒論で「もののけ姫」を深読みするみたいなことを書いた覚えがあるんだけれども、結構今の自分と繋がっているなぁと思う。里山(人工林)と原生林の対比だったり、自然と産業との狭間だったりの話がかなり濃い。まさに今の自分じゃんと思える。もう9年前から進路は決まっていたんだな。


7. まとめ

昨日(9月30日)で会社の第1期が終わり、今日から2期目がスタートした。自分の行動指針の方向性と会社の経営指針の方向性は別ものだけれども、改めて確認したくなって7割くらい自分のために記事を書いてみた。

・南牧村は生活の知恵がたくさん詰まった村
・この村ではなんでも叶う気がする
・衰退を軟着陸させるために、「地域なりのカタチ」を追求
・地球に恩返し、アンバランスの是正、見えない敵とのバトル
・南牧村に遊びにおいで

そんなところかな。相変わらずまとめ方総じて微妙な文ですんません。読んでいただきありがとうございましたー。

画像5


いいなと思ったら応援しよう!