マガジンのカバー画像

病棟実習話

12
病棟実習で起こったあれこれをまとめています
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

医師の価値はコーラ1本分くらい

『私たちの国は日本よりも貧しいから。』 実習に行くたびに必ずと言っていいほど言われた言葉です。 ずっと嫌味なのかなと思っていました。 しかし、後日、私はブルガリアの真の貧しさと医師の地位の低さを目の当たりにする事になるのです。 ある日のこと。 一般内科の実習終了後に荷物をまとめていたら、内科指導医がずんずんと近づいてきて、『ねえ、これどう思う?』と1枚の紙きれを見せてきました。 指導医の手に握られている紙には大きく10 レバと書かれていました。 (ブルガリアはレバという

ある少女の強がり

『私、Cystic Fibrosisなの。』 その日の小児科実習に定刻通り参加したのは、スウェーデン人のYちゃんと私の2人だけでした。 その日の私達が紹介された患者は15歳のブルガリア人少女でした。 思春期特有の背伸びしたい感とちょこっと強気な雰囲気をまとっているけれど、体は小学生低学年ほどでとても小柄な少女でした。 私もYちゃんもブルガリア語は大の苦手。 そんな私たちを察してか、彼女は流暢な英語で自分の病状を説明してくれました。 本当に自分の病気に対する理解が良い。

パンツくらいみせてやれ!

ドアを開けると眼前にはブルガリア人男女のイケイケボディーが!!! ブルガリアの大学病院の更衣室はなぜか男女兼用でした。 仕切りもないし、カーテンもなし。 外科病棟の更衣室には1つだけ試着室的スペースがあって、なぜかトルコ人男子Aが愛用していました。 男女共用更衣室は異文化なインターナショナルクラスの学生の中で物議を醸していました。特にムスリムの子たちは異性の肌を見る機会のない子たちもいるわけで、そういう子たちにしてみれば異性が目の前で着替えているのは、一種のポルノを見てい

ブルガリア人のワイルドすぎる優しさ

『Отворете!! (開いたよ)』両手にハンマーとドライバーを持った警備のおっちゃんが、最高の笑顔でぶっ壊したドアの前に立っていました。 朝1番の呼吸器内科の病棟実習。 いつも実習の時に荷物を置く講義室にその日も荷物を置いていまいた。 実習が終わり、荷物を回収して帰ろうと、講義室のドアを開けようとするも開かない!! 鍵が閉められてる!!! すぐに警備のおっちゃんに事情を説明し、鍵を開けてくれるように頼みました。しかし、残念な事に、警備のおっちゃんが持ってきた鍵でド

脳外科病棟ではブルガリアンジョークはジョークではなかった

ブルガリアにはラキヤ/Ракияという、発酵させた果実から作る伝統蒸留酒があります。 アルコール度数は40%以上で、飲むとのどが焼けるタイプのお酒です。 最近のブルガリア人の若者はあまり好んで飲まないようです。 ブルガリア人の友人がラキヤにまつわるジョークを教えてくれました。 多くのブルガリア人はラキヤを薬だと思っているんだ。 飲んだら痛みも忘れるし。 心の苦しみも和らげてくれる。 のどが痛んだらラキヤを飲むし。 寒かったらラキヤで暖を取るんだ… 確かに私も寒い日やスト