文字数、量
最近再びnoteを書くようになった。一年ちょっと前に、毎日何か書くことを目標にしていた時期があって、1か月ほどは続いていたんじゃないかなと思うが、その時はとにかく毎日アップロードしなければならないので、文字数は少ない時で700字程度で上げてしまっていたんじゃないかと思う。
その時は文字数が少なめだな、1000字は書きたいなくらいにしか思っていなかったけど、今、2000字以上書けなければ上げないというルールで書いてみてることで文字数の重要性を初めて知った。
単純に考えれば当たり前だが、文字数が多ければ含まれる情報量も多くなる。しかし僕らは実は、文字数の多さを敵視していないか。
確かに、小学校や中学校くらいの頃は、文字数を埋めることを教育された。しかし、理系的傾向があったからか、その当時から文字数重視の指導には懐疑的だった。中2中3の時の国語教師が海城出身の割と頭の良い人で、その人が文字数多くたって中身が悪ければ意味ないというスタンスだったこともあって、文章は内容が大事だという確信を持つに至ってしまった気がする。わかりやすいのが因数分解で、ax+bxと書くより(a+b)xと書いた方が良いとされるのが数学の価値観で、重複するならまとめた方が優れているし、そもそも意味のないようなことなら書かない方が優れているという感覚がどこかまとわりついたところがある。学生に限らず、社会人でも、というかむしろ社会人こそ重複や煩雑さを避けるべしとの強迫観念とともにあるかもしれない。
しかし、書いてみてわかったが、どれだけ無内容な助詞や助動詞が多かったとしても、内容が重複しているように思われたとしても、書き上げてから読んでみると意外に優れている感じがする。無駄な文字数ではなくて、文字数が膨らませられているだけ情報量もちゃんと増えていることに気づいたのだ。むしろ、量さえ多ければ内容の質などあまり気にする必要はないのではないかと思いたくなる。
やはり当然ながら、質を厳しく考えると何も書けない。量を増やそうとすると、質に対しては寛容になり、どんなことでも思いついたこと書きたいことを書くことができる。その結果できた文章がともすれば質が低いとみなされかねない文の集合体でしかないはずなのに、分量が多いことによって豊かな情報量が持たされており、読み応えのある文章に感じるのだ。
2000字でこうなのだから、文字数をさらに増やせばどうなるか、というのは興味がある。もちろん、何を書いても良いと思っても、実際に書ける量には限りがあるので、基準の文字数を増やせばそれだけ難易度や必要な時間は増えていくが、それでも1万字とか10万字とかにしても不可能な文字数ではないので、やってみる価値はあるかもしれない。
今までは全く想像もしていなかったが、2000字には2000字の個性があるような感覚を覚えた。ある一定の文字数が持つ情報量にはそれがもたらす感覚に特徴がある。2000字には2000字なりの色がある。3000字ならもう少し鮮やかな色が出てくるのかもしれない。
ということに気づいて、それまで量を軽視あるいは敵視していたことに気づいた。冒頭述べたように数学的類推で、あるいは社会の必要性として、できる限り文字数を縮約して節減することがすっかりインストールされていたが、そうではない世界があることに初めて意識的に気づくことができた。
文字数の敵視はザックリ言えば理系的思想と言える。僕は文系の科目も理系の科目も興味があったのでそういう感覚になったことはないが、中には理系を敵視する文系、文系を敵視する理系がいる。文系の理系敵視は割と俗な会話で頻出して、三角関数学んで何に使うんだよ〜式の文句だが、理系の文系敵視は割に根深い問題がある。
例えば歴史を学んで意味があるのか的な文句がそれだが、これはまさに文字数敵視の思想である。歴史というのは具体例の列挙。だから、例えば現代の日本政治史を学ぶんだったら政治学や法学を学べば事足りるんじゃないかという文句があり得る。過去の具体例を見るのではなく、それを出力してきたシステムについて学べば良いはずというわけだ。だが実際にはシステムを学んだだけでは不十分である。具体例を学び、覚える意味があるか怪しい人物や事件をひたすら暗記していくことに意味はある。量こそが大事なのである。量を吸収していなければ、システムの理解も不十分であり、量を吸収した人間だけに可能な技術があることに気づく必要がある。
ただ、吸収するなら問題ないが、書くとなると量を出すのはそこまで簡単な話ではない。技術が必要だ。自分が書く際の言葉のハードルを下げる必要がある。なんだか文法的に変だとか、事実関係が微妙だとか思っても書き直さない。言葉が出てくるままに書いてしまうということ。そうして量を膨らませていった先に量がもたらす効果としての質が生じる。そう。量が質を生じるのだ。
なんとなく、ありがちな考えとして、質の高いものをできるだけ多く積み重ねていって量を出せたら最高だと思う。しかし、実際には質の低いものでいいからとにかく量を出して、その結果なぜだか質が発生するのだ。
量を書こう。
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