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【連載】私の妻は元風俗嬢②

 筆者はとんでもないエロである。少子高齢化が嘆かれる昨今、筆者のようなエロは税金を控除してしかるべきである。「扶養控除」「住宅控除」「医療費控除」「エッチな大人控除」…。給与明細に並んでみることを想像する。自分の雄々しさに思わず感服してしまうであろう。

第2話 君はダメ社員を見たか

 筆者は入社から3年目を迎えていた。上司との折り合いは悪く、仕事も干されていた。しかも、割と自由の仕事なのでとにかくヒマなのだ。
 仕事中にパチンコに行くなんていうのは序の口。ママさんたちに混じって料理教室に参加することもあった。知り合いの古着屋で品出しを手伝ったりもした。それでいて高給取りなのだ。なんて世の中は不平等なのだろうか。叱責されつづけ、まともな判断が出来ずにひげが伸びっぱなしで、起床と共に催される吐き気と戦い、夜な夜なベッドで泣いてさえいれば、自由な人生を手にしていた。

 当時、お付き合いをしていた女性がいた。おっぱいが大きい女性である。そしてとてもかわいかった。なぜ付き合えたかというと金を持っていたからである。それ以外の理由などない。彼女とは同棲していて、「東京に戻るときには結婚しようね」なんて言い合っていた。

 彼女はトリックスターだった。彼女が筆者宅から通勤するというスタイルだったのだが、彼女にも自分の住む寮があった。同棲しているのだから、他の男性と逢い引きなど無理だと高をくくっていたが、なんと彼女は2度も浮気を繰り返し、そのうち1回は妊娠するという荒技に出たのだ。それはマラドーナの神の手、達川のデッドボール、那須川天心のバックブローと同等の技術が求められた。しかも、「誰の子どもか分からない」といった調子。筆者も心当たりはあったので、「結婚しよう」と言ったが、彼女の答えはノー。中絶してしまったのだ。

 超初期での中絶で姿形は見えなかったが、さすがの筆者もこれにはまいった。自分の子どもであったかもしれないのに、自らの意思で中絶を選んだのだ。経済的にも余裕があったし、それなりに将来のことを考えていたつもりだった。収入はあるが貯金は無かったので、カードローンで費用を借りた。

 手術当日。病室で同室を求められた。カチッカチッという金属音は今でも耳から離れない。一瞬で終わっても全身麻酔は解けず、死んだように眠る彼女の顔はどこかこの世のものとは思えなかった。本当に悲しい出来事だ。

 筆者は収入は多くとも貯金が無いタイプの人だった。手術費用は40万円ほどで事足りる予定だったが、カードローンで一気に200万円を借りた。ギャンブルや酒におぼれるようになり、「もうどうなってもいいや」と狂ったように散財した。

 金も無くなり、借金漬けになった筆者は彼女にとっても用なしだった。あっさりと筆者の家からいなくなった。その頃には、筆者はボトルキープした焼酎をその日に飲みきり、帰りにたこ焼きを買って、食べずにリビングのテーブルに並べ、それを朝捨てるという謎の習慣を身につけていた。

 ある朝、いつものように朝日で目覚め、テーブルのたこ焼きを捨てていた時のことだ。ゴミ袋たまった数日分のたこ焼きを見つめながら、久しぶりの休みに心が躍った。だが、パチンコに行くのは飽きた。そこで筆者はいかにして、この貴重な休日を過ごすかを考えた。前述の通り、筆者の毎日は多忙を極めており、休日は貴重だった。専業主婦との料理教室やら、古着屋の品だしやら、書類の枚数チェックやら、シュレッダーのゴミ処理などで忙しい。この多忙極まる毎日に一服の清涼剤がひつようである。

 そうだ。3Pしよう。

 名案であった。発明といっても良いくらいだった。すぐにデリヘルに電話をかけまくった。しかし、そこはクソ田舎。どこも3Pには対応していない。「もう仕方ない、エロマッサージ屋でいいや」と舵を切り、地元の最大手のエロマッサージ屋に電話をしたら「今すぐ大丈夫ですよ」というので、大学時代の親友の実名で会員登録して、安ラブホテルに車を走らせた。

 さぁ、どんなエロマッサージ屋がくるのか。エロマッサージ屋のサイトを30秒に1回更新して見ていると、ある嬢が日記を更新した。

 「今から3Pコースにいくよ~!どんな変態さんなのか楽しみ!」

 どんな変態さんなのか楽しみ――妻が私に対して初めて贈った言葉であった。


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