弱き俺と弱きアイツ 前編【人間関係改善係#3】
三密を避けろ言われ始めて早2年。
炎天下でもマスクを欠かさない不審者コーデが最先端になって久しく、かつては当たり前にあった憩いの場が次々と姿を消していきました。
わたしもここに引っ越してきて10年以上経つんですが、昔ながらの定食屋とUCCの看板が出ているレトロな喫茶店。
まあ両方とも普通に消えましたね。
それこそわたくしが生まれる前から続いていたであろう老舗がある日突然、
「お世話になりました」
と張り紙一枚と空っぽのテナントだけを残して去っていったのです。
なんとも寂しい世の中になりました。
こんな世界は間違っています。
間違っているので明日地球を消滅させます。
心配するなみんなも一緒に連れていくからな(審判の日)。
粋な計らい
憩いの場といえば、
会社の歓迎会やら忘年会やら、いわゆる「飲み会」もすっかり減ってしまいましたよね。
令和の日本において、アルハラはもはや死語なのかもしれません。
でも完全に無くなったわけではないようで、
つい先週末のこと、わたしの勤務先でもこのコロナ禍に飲み会が開かれました。
定年退職を迎える人達の送別会でした。
いくらソーシャルディスタンスとはいえ、長年勤めてくれた人達への餞も無しではあんまりだという上司の粋な計らい!
いやー心を動かされますね!!
どれくらい心を動かされるかと言うと、
せっかく稼いだ残業代がたった一夜の飲み代に消えるのと同じぐらい心を動かされます!!!5000円返してほしい。
しかし今振り返ってみると、あの夜の出来事に5000円の、いやそれ以上の価値はあったんじゃないかと思っています。
頑張ってるキミとダメなあの人
全員分の飲み物が行き渡ってからの乾杯。
主賓からの挨拶。
そしてしばしのご歓談。
2年ぶりの飲み会は、驚くほどいつも通りの流れで進行していきました。
飲む人と飲まない人で温度差が生じてしまうのもいつも通りだし、仕事への愚痴や不満がこぼれるのもいつも通り。
そして、その矛先がわたしに向くのもいつも通り。
やれ自分の頭で考えろだの、お前のためを思って言っているだの、
(まーた始まった)って感じになる。
これもいつも通りでした。
でも人生とは悪いことばかりではなく、
「えんちゃは礼儀正しくて挨拶もしっかりできるとこ良いよなー!」
「それに比べて異動したあの人は・・・ねぇ(笑)」
「あー、あの人・・・(笑)」
このように、頑張っている分だけの評価をしていただける部分もありました。
えんちゃは礼儀正しくて挨拶もしっかりできる。
自己肯定感が激烈に低いわたしは、「俺は周りよりデキる奴だ」なんて思い上がることはほぼありません。
むしろ、「学ばせていただいている立場だ」「自分なんてまだまだだ」という意識が強いので、
必然、こうして周囲への感謝と尊敬を意識するようになるのです。
なので、わたしが普段から礼節を重んじて生きている姿勢を評価していただけると、素直に嬉しくなってしまいます。
異動した人の悪口とセットなのはたぶん気のせいです。
(でもなー・・・・・!!!)
でもわたしはこういう褒められ方をしたとき、
モヤモヤというか、
なんとも割り切れない気持ちになりました。
押し寄せるロールケーキ
お酒の席で自分がageられて、他の誰かがsageられる。
お前はよく頑張ってるけど、それにひきかえアイツは・・・。
それ自体は、別にいいんです。
飲み会ってそういうイベントだと思うので。
でも問題は、その悪口を言われていた人のことが、
わたしも大嫌いだった。
ということです。
「ん?嫌いな奴が悪口を言われてるなら別にいいじゃん」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
まあ実際悪い気はしなかったですよ。
個人的に気に入らない人物が思わぬ形でこき下ろされ、間接的に、自分がその人を嫌っていることを肯定される。
むしろもっと言ってやれとさえ思ったほどです。
でもわたしはその話を聞いているうちに、
なんだか追放もののラノベを読んでいる気分になっていきました。
勇者様御一行(めちゃくちゃ性格悪い)に突然クビにされて拾われた先で、
「いやーこんなに能力高いのにねー」
「クビにしたアイツ等バカだねー」
ってなる、たまにTwitterの広告とかで流れてくるアレです。
自分が離れるか相手が離れるかの違いこそありますが、
イヤな奴と距離をとって
自分は成功!
アイツは・・・ち〜ん(笑)
という意味では全く一緒だと思います。
なんかこういう持ち上げられ方をされると、居心地が悪いとまではいかないまでも、
ロールケーキいっぱい食べていいよ!
ピーマンは食べなくていいよ!
って言われてるのに似た、
「なんかコレ甘やかされてるだけだよなぁ・・・」っていう感覚というか、
「この状況に溺れちゃダメだ・・・!!」
という、じんわりとした危機感を憶えます。
弱き者
わたしはずっと長い間、「自分が生きていることに価値は無い」と思っていました。
何も生み出さず、何も救わず、
「どうせ価値が無いのなら、好きなように生きさせてもらう」とただ会社から給料泥棒をし続ける日々。
そんなわたしがガラリと生き方を変え、
会社に、同僚に、上司に、全てに感謝をしながら生きられるようになった、
その経緯はここでは割愛しますが、
生まれ変わったわたしは、今の勤務先での仕事に真面目に取り組むようになりました。
それでもやはり、現実は厳しいものです。
先ほどは「全てに感謝」と言いましたが、本当に全てに感謝をできているとはまだまだ言い難く、
前述の異動された方のように、嫌いな奴も普通にいます。
真面目に働いていても気がついたらウトウトしてしまって、上司に叱られることもあります。
それだけに、
「えんちゃは礼儀正しくて挨拶もしっかりできるとこ良いよなー!」
飲み会の席で、いつもは厳しい上司からそういうロールケーキが飛んできた時は、なんというか救われるような思いがありました。
仕事ぶりこそ評価されませんでしたが、少なくとも自分の生き方は間違ってはいない。
そう思えるようになったんですね。
それだけでも十分救われたんですが・・・
「それに比べて異動したあの人は・・・ねぇ(笑)」
わたしが特定個人を嫌っている、その感覚までついでに肯定されてしまいました。陰口ロールケーキBLACK。
何もそこまでしなくても・・・。
わたしは思いました。
「わたしは、ここまでお膳立てされないと、ダメなんだな」
もしこの世に神様が居て、わたしの為にこういう粋な計らいをしてくれたんだとしたら、
これは甘やかしでも何でもなく、単純にわたしにはそれだけのヨイショが必要だったってことになります。
良いとか悪いとかじゃなく、ただただわたしはそれだけ弱い人間だった。
植物が育つのに水が必要なのと同じように、
わたしには、自分を肯定してくれる身近な存在が、
これでもか!
というぐらいたくさん必要だったんです。
ロールケーキの物量暴力。
絶滅するピーマン。
流石に情けない気持ちになりました。
しずかちゃんに憐憫の情で結婚してもらえるのび太くんと同じ気分です。
もっと強い男にならねば。
少なくともジャイアンが足腰立たないくらい震えながら「もうぶたないでください・・・」って土下座するくらいには。
相手は小学生なのでたぶん楽勝。たぶん。ジャイ子を人質にすればワンチャン。
そんなことを思いながら帰路に着きました。
しかし、
「あー、やっと終わったー・・・しかも明日から三連休・・・」
などと連休にうつつを抜かしながら湯船に浸かっていた21時頃。
わたしは不意に、何年も前に起こったある出来事を思い出していました。
(後編に続く)
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