カスタマーサポートのためのエンジニアお取扱説明書
「スタートアップの"オペレーター"に届けるCSノウハウBook」の11回目の記事です。前回最後の記事と言っておきながら、追加で作成いたしました!CS HACKのイベント当日にも、ベラの方から直接言及もあって、ニーズも高そうだったエンジニアとのコミュニケーションの取り方ご紹介いたします。
スタートアップに大きく分けて3つの傾向の者がいるものです。
推進する者:
とにかくいけいけドンドン!「前に前進しろ!」とうるさいひと
(以下、「代表」と呼ぶ)
要求する者:
理解はおろそか、要求ごとが多く、面倒なひと
(以下、「オペレーター」と呼ぶ)
拒否する者:
冷淡にお願いを断るひと
(以下、「エンジニア」と呼ぶ)
出だしから、敢えて悲観的にはじめました。この中で、「オペレーター」は、事業開発、プロジェクトマネージャー、カスタマーサポート(CS)はこのポジションにあてはまります。代表に前進あるのみ!いけいけ〜!と指示されつつ、開発者には拒否される運命...なんだかかわいそうな立場ですよね?
カスタマーサポート、特にオペレーターとして、社内に顧客の答えを届けなくてはならない立場として、開発者というのは愛憎のパートナーです。カスタマーサポートに入ってくる顧客の声から、プロダクトやサービスの改善点をみつけ、開発チームに改善要求をします。開発者は、顧客フィードバックをもとに、より市場や顧客に求められるプロダクトへとアップグレードできます。共生関係にある2者ですが、どうしてこんなにも近づきがたい存在なのでしょう?
スタートアップCS請負人のベラは、オペレーターの重要な力量の一つとして、開発者とのコミュニケーションがあげられると言っています。彼女は、コード一行も書けないのにも関わらず、どうやってエンジレーター(エンジニア + オペレーター)なになることができたのでしょうか? 20年のCS経歴のベテランが説く、開発者のとのコミュニケーションノウハウ12つを紹介します!
エンジニアの傾向を理解して
コミュニケーション方法を変えましょう
1.バグや問題の伝え方を変えまししょう
カスタマーサポート: 決済ができないようです。直してください。
エンジニア: 無理です。(決済コードが5万5千種類もあるのに、一旦どれのことだよ...)
エンジニアは、ロジックの世界の人です。アウトプットを出してもらうためには、正確にインプットしましょう。問題が起きた瞬間に、ふと訪ねてラフな情報共有だけで直してくださいと言っても、「それは、どれくらい重要な問題なのか...他にも開発タスクは山ほどあるのに...」と理解できなければ、優先順位は下げられます。
しかし、伝え方を変えるだけで、コミュニケーションが10倍早くなる方法があります。
メニューAで、Bをクリックすると、ポップアップCが表示されるんだけど、ここで「決済に失敗しました」とエラーが出ます。
このように問題が再現される条件とフローを正確に伝えてください。そして、お客様から不具合報告があったとしても、いきなりバグだとは決めつけずに、まずはiOSやAndroid、デスクトップで同じ状況が再現されるかを確かめたあと、できればスクリーンキャプチャの画像や動画と一緒に共有しましょう!ここまでしてくれると、エンジニアも嬉しいどころかCSに感謝してくれますよ!
2. 開発者は深掘りが得意な職人、
オペレーターは広く把握するジェネラリスト
カスタマーサポート: アプリの動作が早くなりましたね!すごいです!
エンジニア: (徹夜して性能改善したんだけど、細かいところまでよく気づいてくれるな...よかった!)
開発者は意外とプロダクトの全体像を知らなかったりするものです。プロダクトを深くは知っていても、多くは知らないと言ったりもします。自身が開発した機能以外は、知らないことも実は多いのです。
そこで、オペレーターが広い視野でプロダクトについて把握して、プロダクト全体の中で問題になる部分を見つけてあげる役割をしましょう。そのためには、誰よりもプロダクトをユーザー目線で使い倒しましょう。プロダクトのプロのオペレーターに、エンジニアも信頼を寄せます。
あれ?と思ったら、「バグじゃない??」「バグがあります!!」と軽々しく言ってしまうオペレーターではなく、開発に役立つ情報を提供できるようになりましょう。
3. 引きこもりがちのエンジニアを、外の世界に連れ出そう!
カスタマーサポート: え???バグのせいで、5百通もメッセージが送られてしまっています!!
エンジニア: (うむ...どうしてこのコードが勝手にマージされたんだ...)
エンジニアは、バグがあると問題の本質から考えます。以前、ある顧客セグメントに、数百件のメッセージが送られてしまったことがあるらしいです。エンジニアは、顧客の立場よりも黒い画面を眺めて問題の在りかを探していたそうです。普段から顧客の声を伝えてあげる役割をしましょう!
難しい言葉ばかり使ってきて理解できない!
と悩まなくても大丈夫です
4. 開発者は"わざわざ"難しい言葉を使って喋っているわけではないのです!
カスタマーサポート: 〇〇社の〇〇さんがログインできないそうです!
エンジニア: managerId教えてください
カスタマーサポート: (managerId?えっ〇〇社の〇〇さんは一人しかいないけど?...)
開発用語や開発チーム内で使う単語を、きちんと正確に理解しなければと焦る必要はありません。まずは、正確に具体的に伝えるという意識で少しずつ真似れば良いです。この例で言えば、次からは「managerIdが〇〇の人が...」、と言ってみましょう!結局は、具体的で正確な情報を知りたいだけなのです。
"事業開発の人が、「青色にして」じゃなくて、
「#2C2EAEにして」って言ってくれたら良いな"
"わかる!"
5. 開発用語を少しずつ混ぜて話せるようになろう!
カスタマーサポート: 連携したユーザー情報をバルクでゲットするAPIはデプロイされました?
エンジニア: (お?開発のことわかる人なのか?)
もちろん「連携したお客様情報を一括で取得するAPIは使える状態ですか?」と聞いても十分でしょう!ただ、開発用語を勉強しておくのをおすすめします!開発者同士の会話をより理解できるようになります。また、小さな仲間意識、信頼関係を産む役割にもなります。
6. 話が理解できなくても大丈夫!普段から声をかけよう!
カスタマーサポート: 今回のリリース大変でしたよね?お疲れ様でした! エンジニア: いやあまだ、やむをえずペンディングした部分があるんです。使っているライブラリが意外とイケてなくて、クエリの形式が独自に決まっていて柔軟にできないので、うちのサーバー側でクエリをライブラリに合わせてマッピングする処理をしなくてはならないのですが、それがうちの元々のDB構造と合わないので処理が複雑になるのを、より疎結合にリファクタリングすることで...
カスタマーサポート: (ぬおお>< 途中からよくわからない!)
日常でオペレーターが開発者と深く会話をすることはあまりないでしょう。しかし、開発者に積極的に声をかけられるようになりましょう。理解できなくても良いのです!普段から、開発者のプロダクトへの貢献を讃えたり、声をかけることで信頼を積み重ねましょう。
開発者にももちろん心があります
7. 開発者もロボットではありません
カスタマーサポート: 作業進捗票の記入、期限までに作成お願いします。
エンジニア: (コマンドラインか...)
親しくない開発者についこんなお願いの仕方していませんか?むしろ、エンジニアのために簡潔な言葉で伝えていると思っていませんか?エンジニアのコミュニケーションがなんだか冷たく感じられるかもしれませんが、もちろんロボットではありません。意図や脈絡を一緒に伝える方が、エンジニアも仕事がしやすいです。開発案件も、目的が納得いかなければモチベーションを持って取り組むことはできません。無味乾燥なドキュメントや表でのコミュニケーションだけでなく、口頭で意図や背景を伝えましょう。当初の予定よりも早く開発してくれるかもしれませんよ^^
8. バグは、叫ぶものではありません
カスタマーサポート: バグだ!!!バグがあります!!
エンジニア: (まさか...私が書いたコードではないはず...🙏)
エンジニアが大嫌いなこと。誰かの「バグだ!」と叫ぶ声です。オペレーターは、久しぶりに問題を見つけ出したぞ!と貢献したい気持ちなのかもしれません。でも一生懸命そのコードを書いた開発者の立場からは、嬉しくはありませんよね?精神的ダメージも多少なりとも受けます。本当にバグなら良いものの、オペレーターが操作ミスをした可能性もあります。
バグを見つけた時には、まず落ち着いて、もう一度操作を繰り返して再現されるか確認しましょう。再現されたら、叫ぶのではなく、開発者に再現できる条件やスクリーンキャプチャを添えて、報告しましょう。
9. 集中できる時間を与えてあげよう
カスタマーサポート: あ、新しい顧客フィードバックをもらいました!
エンジニア: (あ~今新規機能の作業に取り掛かろうとしたのに...😭)
エンジニアが顧客フィードバックの反映だけしているわけではないですよね?同時により中長期的なマイルストーンでの新規機能の開発もしています。顧客フィードバックやバグは、緊急度の高いものでなければ、優先度をつけてまとめて報告するようにしましょう。
緊急度の高いバグであれば、前述しているフローや再現条件、キャプチャーとともに、顧客から何回リポートが上がっているかなどの数値で緊急度を伝える必要があります。
信頼関係は普段から積み上げるものです
10. 雑談は"スキル"です。親しくなければ仕事も難しいです
カスタマーサポート: すみません!お客様が質問をされているのですが、教えてくれませんか?
エンジニア: (良いけど、あなたはだれ...?)
雑談は、特に社内やお客様とのコミュニケーションが重要なオペレーターにとっては、必須スキルです。恥ずかしがったり怖がる前に、声をかけて近づけるビジネスパーソンになりましょう。まずは、開発者に興味を持ちましょう。プロダクトのことや、普段のこと、なんでも良いです。優秀な開発者であるほど、話してくれるはずです。普段からの信頼のクレジットを貯めることが、あなたを救ってくれます。
11. 厳しいときほど、助けましょう
カスタマーサポート: 今日の深夜リリース応援しています!
エンジニア: (なんでこんな時間まで残ってるのか分からないけど...カレーは美味しいな!)
深夜のリリース作業は、緊張もストレスも高まります。助ける方法は人によって様々ですが、ベラのオペレーターチームの場合には、リリース日に40人分の夜食を作って、ふるまっていたそうです。辛い時には、一緒に戦う姿勢で戦友になることもおすすめです。
12. 時には体を張ることもオペレーターの美徳だと思っています
エンジニア: 今回のバグで顧客対応大変ですよね?本当にお疲れ様です
カスタマーサポート: 誰かが火消しをしなくてはならないものですし、開発に比べたら大したことではないですよ
カスタマーサポートは、前線に立ち、予測不可能なことに最初に体を張るのが役割でもあります。どんな問題でも、依然と立ち向かうことこそオペレーターの底力の見せ所だと思っています。火事が起きたらまずは火を消すのが先です。火を消し終わったら、開発チームに同じことを繰り返さないように報告をしに行きましょう!
まとめ
エンジニアとコラボレーションできるオペレーターになるノウハウ
1. エンジニアも問題を解決したいのです
→ 事実と数値でコミュニケーションしよう
2. 正確なコミュニケーションがしたいだけなんです
→ 開発用語を"理解"する必要はないです。少しずつ彼らの言葉を使って話し始めてみよう
3. ロジックで動きますが、ロボットではないです
→ 普段から信頼を積む努力をしよう
エンジニアとカスタマーサポートが仲良くなり、プロダクトをアップグレードしましょう!!💪💪💪
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