引きこもりはウチにもいるぞ!
最近中高年の引きこもりが世間を賑わせている。
聞くところによると、日本全国で61万人以上もいるというではないか。
核家族の中に最低一人いるとしたら、少なくとも120万世帯ほどの家族に引きこもりが存在してることになる。
よかったぁ〜、うちにはそんな人間がいなくて。
なんて、思いながらテレビを観てる人間がどれだけいることか。
わたしの家族は、例外者が多く、
もちろん、今回の主役になる、引きこもりキャラもしっかり存在している。
うちの場合は、
お兄ちゃんが引きこもっていた。
約5年間。
その間、彼と会話した回数は、片手で数えられる程度ではないだろうか。
なんせ、会わないから、同じ屋根の下に暮らしていても。
彼は絵に描いたような、引きこもり人間でした。
ある日、そぉーっとお兄ちゃんの部屋を覗きに行ったことがありました。
当時、睡眠薬を服用していたこともあり、
一日の大半は寝ていました。
その寝顔をみたら、
彼はまるで、
イエスキリストのような優しい寝顔で
息も立てず寝ていました。
そんな寝顔みてたら、妹の私はなんとも言えぬ気持ちになったのを覚えています。
幸い、お兄ちゃんは、家族に手は出しませんでした。
しかし、何か少しでも彼にとって不都合があったら、親のせいにして言葉で親を罵っていました。
今思えば、それはきっと彼なりの防御策だったのでしょう。
ある日、ずっと寝ているお兄ちゃんに嫌気がさして、父親に、おにいちゃんはどうするつもりなんだ!と問いただしたことがあります。
すると、父は、
あの子は、生きているだけでいいんだ。人を殺さなければそれでいい。
そう、言いました。
きっと、我が家庭だけでなく、
引きこもりを抱える家族はきっと誰しもがそう思っていると思います。
わたしは、ずるいと思いました。
わたしは、生きている以上を強いられて生きているのに、なんで兄だけは生きているだけでいいのか、と。
別に誰も何も言ってないのに、
いつの間にか、お兄ちゃんがあーだから、わたしは2人分頑張らなきゃっ。と、無意識にそう思うようになっていたのかもしれません。
しかし、兄はわたしの知らないところで、ちゃんと親と向き合い、話をしていたようで、
30になるまでには何かする、と。約束をしていたようで。
彼が、引きこもりになったのには、ちゃんと理由がありました。
当時心酔していた生まれて初めてできた彼女が編入で医学部に学士編入で入り、
彼も彼女を追って医学部に編入試験を受けていたそうです。
しかし、彼の場合は、当時通っていた大学すら二浪して入り、筆記の一次試験は通っても、必ず二次試験でどこの医学部にも引っかからず、挫折を味わっていました。
その間に、周りの優秀な同級生たちは、優良企業で勤めはじめたり、医者や弁護士になって働いていたり、次第に何者でもない自分から逃げたくなったのかもしれません。
結果、彼は、徐々に自分の無力さを感じてか、目標を見失ってか、引きこもりがちになりました。
私の兄の場合は、こんな感じの流れで引きこもりになりましたが、
今も引きこもり中な方も、何か心を砕かれるような、何か心に傷を負うような出来事があったに違いないと思います。
そして、それを見守るしかない家族の気持ちもわたしには痛いほどわかります。
長年引きこもっている人間を、
外の世界へ引っ張り出すのは、
親や周りも相当の努力と根気が必要だと思います。
幸い、わたしの兄は、
一応の目標であった、医学部に進学することをやめ、ひと段階下げ、歯学部を受験し直すという、
彼が無理しない程度のレベルを探し、挑戦させたこと。
で、結果自信を少しずつではあるが、取り戻し、日常の生活を、取り戻すことができました。
いまでは、一人暮らしもでき、
彼女もできたそうです。
親の過度な期待が、時に子供にとてつもない精神的負担を与えることがある。
ということを、子供を持つ親は常々考えて子供と接しなければなりません。
子供は時に親の期待に応えることが辛くなることもあります。
そういうときは、
ちょっと時間をあげましょう。
羽を伸ばす時間をあげましょう。
そうすれば、
今よりも必ず中高年になるまで引きこもる人間は少なくなるはずです。
そして、もし、親自身が道に迷ったら
親自身も休みましょう。
子供と少し距離を置くことも互いの大事さを知るために、大事な作業です。
それから
子供の可能性は無限大です。生きているだけで子供は宝です。なんでもいいから、可能性やチャンスをあげてみましょう。そして、見守ってあげましょう。
人間誰しもトライアンドエラーで、
自分の向き不向きがわかるものです。
それを自分自身で気づかせてあげることも、時に親として大事な行動です。
なのでお願いです。
決して、責めないでください。認めてあげてください。生きているだけでいいんだよ、と。
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