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大宮公園で野点の茶会をしました-前編: 企画-

Hi there!
シンガポールクッキー専門店Changi CookiesのMarinaです。

ご無沙汰しておりました。
あれやこれやと奔走してるうちに
あっという間に師走を迎えてしまいました。
皆様、いかがお過ごしでしょうか?

先日、12月1日日曜日に大宮公園の池で
お茶の先生、本田宗友氏を亭主とする野点※の茶会のお手伝いをさせていただきました。
※野点とは、屋外で行われる茶会のことで、美しい自然の景色や季節の風物とともにお茶を楽しむことを目的としている。

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麗しい姿の本多先生


いいアングルを求めて撮影する私


実は今回の茶会
先生の謙虚な姿勢をがっつり無視して
私がゴリゴリに「絶対に開催すべきだ!!」と
半ば強引にイエスと言わせて
今回先生に開催していただいたのだ。

しかし、私から言わせてみると
そのきっかけをつくったのは先生であり
私ではない!
(責任転嫁)



先生からお借りしたへうげもの

野点を知ったのは、先生からお借りした
漫画「へうげもの」がきっかけである。

蚊も殺さぬような、温和なほほえみを絶やさない美しい先生がまさか
男性の読者層を中心とするモーニングコミックス系の漫画を
読まれていることに少し驚きを感じ、早速お借りしたのだ。

お茶について、右も左もわからないほどの初心者の私からすると
「へうげもの」に出てくる野点のシーンは
特に印象的でいつまでも心に強く残った

ある日、先生とマンツーマンのお稽古を受けた際に
「今よりさらに発展させていきたい」という
先生のお言葉をきっかけに
パーン!!!と野点をされる
美しい先生のイメージがわいてしまったのである

折しも、大宮ボートーハーバーの五十嵐社長と
「ボートハーバーでいろんなイベントがしたいね」
話していた直後だったので
もはや必然としか言えないほどのタイミングだった

24年ぶりに復活した大宮公園のボート池。夜はパリピモード

発展と冒険

早速五十嵐社長に相談をしてみると、
一も二もなく私の提案を受け入れてくださった

戸惑う先生を無視して早速3人で顔合わせ。
謙虚な先生は
「そんな恐れ多い提案を受け入れがたい」
と、断る姿勢を見せていた

2回目の打ち合わせでは
先生に断られないよう外堀を埋めるために
事前に五十嵐社長と段取りを決めていた
(ごめんなさい、先生)

打ち合わせ開始早々

「『恐れ多い』という理由で断る方が失礼にあたるのでは。
冒険なしでは何も発展しない。
先生である以上、茶道の美しさを教える役目を担っているので
今回の野点は開催すべきだ」
と強引に五十嵐社長と共に熱く語った

鼻息の荒い二人に断る方がよっぽど身の危険を感じたのであろう、
先生はようやく野点の提案を受け入れたのだ。


主菓子の悪夢

シンガポールクッキー専門店として
茶会開催のサポートをさせていただくために
主菓子を是非やらせてほしいと自ら提案し
先生は快くそれを受け入れてくれた

しかしその道のりはなんとも険しいものだった
主菓子にはこんなルールがあったのだ

・バターやクリームがたっぷり使われた洋菓子
・香料が入った菓子
・極端に甘い菓子
・色合いが派手すぎるもの
・硬い食感のもの

つまり、ギーを使ったクッキーなどは論外である。

そこで、シンガポールの伝統的な菓子Kuehで開拓することにした。

Kueh


"10 Places to Get The Best Traditional Kueh In Singapore," Lifestyle Asia

Kueh(クエ)とは、シンガポール、マレーシアやインドネシアなどの地域で
親しまれている伝統的な菓子のことで、
材料としては、もち米、ココナッツミルクや砂糖などが使われる。
その料理方法も様々ではあるが、蒸しているものが多い。

シンガポール帰省時にはMust Eatのリスト入りするほど好きなのは
Kueh Lapis(クエラピス)

パンダン、シナモン、カルダモンやクローブが
ふんだんに混ぜ込まれた層状に焼かれるスポンジケーキは
驚くほどしっとりしていて、噛むごとに味が深まる。
層ごとにぺりぺりと剥がして食べるのも楽しく
幼少期からよく食べていたお菓子だ。

Kueh Lapis, Bengawan Solo

だが、Kueh Lapisは
バターは使うし、香りも甘みも強く
お茶の主菓子には適しているとは決して言えない

そういえば母もKueh Lapisをよく食べていた。
それも蒸したものだ

蒸しバージョンのKueh Lapis。材料も手法も異なるのに、菓名を変えないあたりが東南アジアらしい

材料は、米粉、ココナッツミルク、砂糖、と
シンプルな材料で、甘さも調整がきく。
食感もういろうのようにもちもちしていて、香りもほとんどない。

そこで、蒸しバージョンのKueh Lapisを試してみることにしたのだが

うまくいかない

何度も何度も試みても

う ま 
く 
 い 
  か
   な
    い
     

5回目の試作のころには
もはやゲシュタルト崩壊を起こし
味がわからなくなり、
口にすることさえ嫌になってしまったのだ


先生に現状をお伝えし
あれやこれやと二人で軌道修正を試みたものの
希望の光は一方に見える気配がなかった

じっと先生と目を合わせること数秒

「今回は主菓子の提供を諦めます」

と、すべてを諦めた。

冒険をするのは大事だ、と先生に言った手前
どうしても完成させたかった。
諦めることは、「敗北」であり道が断たれる可能性もある。

「諦める」
と、口に出すのはすごく恐ろしいことで、
がっかりさせたくなかったのだが
私の恐怖やプライドよりも優先すべきものがたくさんある

刻一刻と迫りくる時間の中で
これ以上先生にご心配をかけたくないし
完成度の低いものもできれば誰にも食べてほしくない

「そうしましょう」
先生は責めることもなく受け入れてくれた

お茶会のお客様に最高のおもてなしをしたい、
という先生のハードルはもちろんだが、
失敗続きで心の平穏をなくし日に日に自信をなくす姿に
きっと先生もお気づきになられたこともあり
優しく受け入れてくれたのだろう

怖かったはずの「諦める」という道には
恐怖を覚えるものなんてなくて
結局自分の頭の中でつくりあげた虚構のものでしかなかった

ただただ申し訳なさを覚える一方で
正直なところ、肩の荷が下りたのも事実である

そんなこんなで、茶会も当日を迎える。


後編に続く

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