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きっかけは高校生のアクション! 神奈川県立高校の全135校が再エネ電力に切り替わるまで

「ちょっと残念。こんなに素晴らしいのに、県立高校で今学んでいる高校生たちがそのことを知らない」

2025年1月11日、横浜市内で開催された気候変動のイベントで、元環境大臣の小泉進次郎氏がそう言及したのは「学校で地球にやさしい電力を使いたい」と題したオンライン署名。

2021年に、当時高校1年生だった「ふきたろう」さんが開始して、2.3万超の署名を集め、神奈川県内のすべての県立高校135校の電力を再生可能エネルギーに切り替えることを実現したという取り組みです。

「『今みんなが使ってるエネルギーは再生可能エネルギーになってるんだよ』『アクションを起こしたのは高校生だったんだよ』ということを、神奈川県の中でちゃんと知らせていきたい」(小泉氏)

パネルディスカッションには、現在は大学生になったふきたろうさんも登壇して、当時のことを振り返りしました。フォーラムイベントでのふきたろうさんのお話をミニレポートします。

【YouTube動画】ふきたろうさんのイベント登壇ミニレポート

きっかけは高校生の提案

この日、開かれていたイベントは神奈川県主催の「かながわ脱炭素アクションフォーラム」。専門家による気候変動のレクチャーや、気候変動に取り組む企業などへの表彰が行われ、会場には関心のある市民や企業担当者が参加していました。

シンポジウムには、神奈川県の黒岩裕治知事、小泉進次郎元環境大臣、京都芸術大学の竹村 眞一教授、ふきたろうさん、県立有馬高等学校の生徒2人が登壇。

ふきたろうさんは署名を始めた背景として「小さい頃から動物や自然が好きで、地球環境について学んでいくにつれて、自分が化石燃料による電気を使うことで温暖化に加担してしまうことに違和感があった」と語りました。

ふきたろうさんはまず、自宅の電力を再生可能エネルギーによる発電所から送られるように変更。その後「自分の通う高校の電力も同じように変えられたら」と考えるようになります。

当時を振り返るふきたろうさん

「2021年、私が高校1年生の時に、神奈川県立高校で再生可能エネルギーを使いたいという署名を始めた最初の動機は、私自身が学校で再エネを使いたいという、私自身の思いでした。その思いに賛同してくれる人がたくさんいることを神奈川県知事に示したら、ことの大切さ・思いが伝わりやすいかなと署名をしました。署名が集まらなかったら、私の意見に賛同してくれる人少ないんだなって思っておこう、ぐらいに思っていたのが、実際23,000人以上の方に賛同していただいて、同じ思いを持った人の多さに気づき、すごい勇気をもらえたのを覚えています」(ふきたろうさん)

署名を立ち上げたのは3月。その後、8月に知事に直接署名を手渡した後の県庁の動きはとても早く、10月には県立川崎高校で再生可能エネルギーの試験的導入が始まりました。まずは1校で試してみて、問題がなければその後拡充していくという方針でしたが、2023年4月には135校ある神奈川県立高全校が、再生可能エネルギーに切り替わりました。具体的には、再生可能エネルギーで電力を供給する企業と契約する形に切り替わったのです。

2021年、署名を提出した際の写真

「自分が使う電力を変えたから、神奈川県立高校が変わったからといって、地球温暖化を解決できるかと言われると、そうではないと思う。でも、自分の周りを変えていくことがたくさん続いていくことで、たくさん輪がひろがって変化につながっていくと思っています」(ふきたろうさん)

声を上げることの大切さ

このアクションが、みんなに知られていなくて残念だと語った小泉進次郎氏。「署名提出の記事を読んで、すぐに黒岩県知事に連絡した」という裏話も明かしつつ、伝えることの重要性を強調しました。

「こんなに素晴らしいのだから、地元の県立高校の生徒たちには、ちゃんと、今みんなが使ってる電力は再生可能エネルギーになっていること、それは高校生がアクションをして実現したことを伝えていかなくてはいけない」

(小泉氏は、以前にも、お菓子メーカーにプラスチックごみ削減を求める署名活動を始めた高校生に連絡を取って「このようなアクションをしてくれてうれしかった」と活動を励ましたことがありました)

「行政は、すべての人に関わるたくさんの問題を扱わなくてはいけなくて、優先順位もあり、その中で、もっと大きな結果を出すように市民から求められて、とても大変だと思う。先日も、気候変動に関するワークショップに参加したけれどもっと行政の人たちとお話しがしたいという声がとてもたくさん聞こえてきて……。行政の立場から見て、市民からの要望はありがたいものなのか、うるさいものなのか、興味があります」

パネルディスカッションの最後に、ふきたろうさんがこう問いかけると、黒岩氏は「全然うるさくないです。逆に、本当に対話したい。そういう場もちゃんと用意してあります。県民目線で、名前の声を聞くことは大切にしているから活用してほしい」と応じました。

ふきたろうさんと知事の2ショット

毎年、気候変動に伴う異常気象や災害が話題になる中で、環境問題への危機感を持つ人たちも増えているように感じます。Change.orgでは、ふきたろうさんのような若い世代も含めて、「変えたい」という想いを持った人たちがアクションを起こせるプラットフォームとして、これからも小さな一歩を踏み出すことを応援し続けていきたいと思っています。

* ふきたろうさんの署名活動「学校で地球にやさしい電力を使いたい」についてもっと詳しく知りたい方は👇