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語っても語りきれない銭湯の魅力(たち) -名古屋出張

去年1年間は"出張記"なるものをつけてnoteを更新してきた。今でも時々読み返しては「ああそんなこともあったな」とか、「こんなもの食べたな」とか楽しみながら読み返している。平均して月に1.5回〜の出張の中でこまめに記録をつけるのはそれなりに大変だったけれど、それなりに楽しい作業であった。

名古屋駅新幹線ホームの立ち食いきしめん屋さん。11時過ぎについてここでサッと昼を食べるのが丁度良い。

年が明けて2025年、営業2週目にして早速新年初の出張に出ている訳なのだけれど、今年は"どこに行った"とか"何をした"を綴るダイアリー(日記)としての出張記ではなく、"何を感じた"とか"こう考えた"みたいなもう少し内面的な記録を書いていこうかと思う。

もちろんそうする理由はいくつかあって、"出張の中に旅的なものを見つける"というのが自分の基本的な出張マインドであるのだけれど、個人的な考えとして旅には「目的地に行く/着く」という物理的な移動と、「考え方や心情の動き」という精神的な移動(=つまり、旅をする前後で自分の精神状態がA→Aダッシュへと変化するような感覚)が発生すると思っている。かたや自分も、出張はもちろん仕事目的の行為ではありながらもその移動時間やホテルでの時間、孤独のグルメな夜などに様々な思考をめぐらせている訳で、そのような時に自分が考えたことを備忘録のように残しておきたいなと思ったのである。

名古屋駅地下「エスカ」のモーニングの定番、喫茶「リッチ」のあんバタートースト。

随分と前置きが長くなったけれど、記念すべき2025年初の出張については語っても語りきれない銭湯について今まで感じていたことを書こうと思う。


昔からお風呂に入るのは好きで、歳を重ねると同時に温泉や銭湯に行くのも好きになった。学生の頃は毎月のように登山に行っていたので下山後に銭湯に行くのが何よりの楽しみであったし、特に山梨や長野辺りでは結構な数の銭湯に行ったと思う。そして、昨年は出張に行く旅にその街の銭湯に行くという個人的な趣味を続けて、北は札幌から南は博多まで、数多くの銭湯に行った。

銭湯の魅力というのは本当に語り尽くせなくて、その魅力達をランキング付けるというのは自分にとっては結構ハードな作業となる。それらの魅力の共通点を探してみると、ありきたりにはなってしまうけど「とにかく雰囲気が好き」という所に終着すると感じている。公衆浴場という名の通り、老若男女が集い浴場を共にするという世界、番台という銭湯という場所のためだけに作られる独特なカウンター、ケロリン桶、大小様々な浴槽、風呂上がりの冷たい飲み物・・・全てが愛おしく、どこか懐かしさを感じる。

名古屋、大黒湯

一つ具体的なことを書くと、銭湯でいいなと思うのはいわゆるタトゥーをしている人達と浴槽を共にする瞬間である。詳しいことはよくわからないが、いわゆる街の銭湯ではタトゥーを入れているから入場禁止というわけではないみたいだ。そして個人的にも、銭湯はその街のコミュニティにとって欠かせない場所だと思うし、なるべく多くの人に開かれた場所であってほしいと願うばかりである。何もタトゥーを入れている人が全て悪い人や怖い人というわけでもない気がするし、それくらい懐の深い場所が世の中に少しはあっていいと思う。

ではタトゥーの人たちと共に過ごす銭湯の何がいいって、「結局、人間というものは皆平等で同じ仲間なのだ」ということをこれ以上に実感する場所がないと思っているからである。一概には言えないが、例えばそのタトゥーを入れている人がどこか社会に反する組織の一員であったとしても、彼らとしても何もそのタトゥーを自慢したり、縄張り争いのために先頭に来ているわけではないと想像する。逆にそういう人たちが生まれた姿のまま「ああ気持ちい〜」といって湯船に浸かっている姿にどこか人間味を感じるし、同じ人間同士、お互い心を開いて平和な気持ちでゆっくり疲れを癒しましょうよと思うのである。そして疲れが癒やされたら洋服を着て、風呂上がりにビールでも飲んで、また各々の属する狭い社会に戻っていくという一期一会は非常に小さい場所で世界の広さを感じる、ミニマルな旅のようでもある。


そしてなぜだかよくわからないけれど、僕は銭湯でタトゥーを入れている人から声をかけられることが多い。地元の駅前の銭湯に常連客のタトゥーの兄ちゃんがいるのだけれど、初めてその人と湯船で隣り合った時、「お兄ちゃん、風呂っていうのは気持ちいいねえ」と急に声をかけられた。流石に僕も初めてタトゥーの人と話したのであまり関わらないように「そうですね」と軽く答えると、タトゥー兄ちゃんは続けて「本当に気持ちいいねえ。ふぅ〜。気持ちいい、気持ちいい」と続けた。これ以上返すことがないので簡単に相槌を言うったけれど、結局そのタトゥー兄ちゃんと3分くらいだろうか、本当に中身はないけれどただただ風呂が気持ちいいねえと言う世間(?)話をした。

信じてもらえるかわからないけれど、そのような経験が今までの人生で4回ある。

ちなみにその兄ちゃんは背中全身に風神雷神みたいなタトゥーが入っていた。最近行っていないけど元気にしているだろうか。

名古屋、地蔵湯

また山登りの帰りに長野県松本市の銭湯にいたときは石鹸を忘れてしまったのでどうしようかと悩んでいたら、隣で身体を洗っているおじさんが石鹸を貸してくれた。その人は地元の交通会社のタクシー運転手で、松本市を起点によく登山客を乗せているとのことで、山の話で盛り上がった。また結婚はいいぞ、家族というものは持っていた方が人生が豊かになるということを話していた。

松本市、塩井の湯

群馬県桐生市の銭湯に行ったときは、そのときたまたま鈴木英人氏が書いた大瀧詠一のアルバム「A LONG VACATION」の絵がプリントされたTシャツを着ていたのだけれど、銭湯に入るや否や「お、大瀧詠一じゃないか」と声をかけられ、結局風呂に入るまでと出た後にいかに自分が大瀧詠一が好きであるかを熱弁してくれた。それ以降、銭湯に行くと頭の中で「Pap-pi-doo-bi-doo-ba物語」が流れている。

銭湯に関する魅力、というか個人的なこだわりとして風呂上がりのビールがある。あの味わいというのは本当に格別で、家の風呂上がりのビールにはない感傷的なうまさがあのビールにはある。そして僕はのビールをなるべく街の酒屋さんで開くようにしている。といっても大体銭湯に行くのは夜遅くになるので酒屋は当然¥しまっているのであるが、その酒屋の前のお酒の自販機で買うのである。きっかけは忘れたけど、お酒の自販機という珍しさ、今後おそらく無くなるであろう自販機での購買体験、普通ではないビールの買い方、そして何より少しでも長くビールの自販機がこの世の中に残って欲しいという願いと応援の気持ちを込めて、銭湯に行く前は近くの酒屋を調べ、自販機があるかを調べてから行くようにしている。

暗闇の中ポツンと佇むお酒の自販機

しかし、お酒の自販機って結構危ないですよね。誰でもお酒が買えちゃうし訳だし、全国各地で買っているけど免許証とかを入れる部分が動いている機械を見たことがない。あれは結構マズイ気がする。

そういう銭湯巡り、人との出会い、その後のビールを飲む瞬間をなるべく多く持ちたいと思う。そして今回の名古屋出張は新しい銭湯1個、前にも行ったことがある所、合計2ヶ所に行った。そしてそれに付随してお酒の自販機も2個利用させてい頂いた。今年も多く出張に行くことになる気がする。その度に新しい銭湯に出会うことがとても楽しみである。


ケロリン桶についての記事を見つけた。この桶、あまりにも深いストーリーと巧妙な企業戦略の賜物だったのだ・・・


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