御年賀

あけましておめでとうございます。本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

という文章を始業してからの数日間で何度言い、何度メールに書いただろうか。新年が明けた事はとても素晴らしいが果たしてそれを他人と「おめでとうございます」と言い合うのが正しいのかと不安に感じる事もあるのだが、日本に限らず世界中て「Happy New Year」と祝っている姿を見ると、新年を迎えるという事はホモ・サピエンスにおける普遍的な出来事なのだろうと思う。何はともあれ、昨年は地震などで落ち着かない新年だった事を思うと、快晴に恵まれ何事もなく年を越せたという事は喜ぶに値する事なのだろう。そう思いながらおせちのあまりの昆布巻きを頬張る。


「御年賀のおつかいを頼む」

と言われたのは客先の新年挨拶前日、しかも夕方に差し掛かる午後3時頃の事であった。気まぐれでその場凌ぎの対応が多い上司ならではの言動ではあるが、もちろん営業職という立場上、客先訪問かつ新年の挨拶となるとこれは少しばかりは気合を入れなければならない。というわけで、若手社員らしくお使いを仰せつかり、夜の新宿高島屋へいざ出陣したのである。


仕事柄百貨店は商談や視察でよく行くので見慣れた風景ではあるものの、御年賀おつかいというミッションを与えられた視線で見る地下1階のお菓子売り場は新鮮に感じた。予算は¥3,000〜¥5,000。先方の営業所は人数がそれなりにいるのでなるべく個包装のお菓子が好まれるであろう。という目線で商品が陳列されている棚を見るが中々選び抜くことができない。というより自分が食べたいものばかりに気が入ってしまう。

コロナ禍を経て贈答文化が少しずつ衰退し、贈答やギフト、進物も「買う側が選ぶ」から「貰う側が選ぶ」ような商材がじわじわと主流となる昨今。百貨店に行き「リアル」な御年賀を買うというのは反時代である一方、古典的というか、カッコよくいうとクラシックで粋な行為である。

と思いながら、やはり自分もちゃんとしたモノ-例えばワインやネクタイ、革靴、香水など-を買う場合は百貨店に行く場合がほとんどである。最終的にネットで買うにしても、やはり実物を見ようとなると、文字通りなんでも揃っている百貨店は少なくとも商品吟味の場所としては最適である。


そんな事を感じながら地下一階の食品コーナーを回っていた訳なのだけれど、「実際には御年賀として買わないけど、買ったら喜ばれそうな食べものランキング」というものを勝手につけ始めてしまっていた。これは、御年賀のお使いを頼まれたのにも関わらず買ってしまったらとんでもない場違いだけど少なからず喜ばれるだろうと思える(極めて個人的な)ランキングである。早速第三位から。

第三位:くりきんとん

正月ボケがまだ収まらないのだろうか。でも栗きんとんってやっぱり美味しいですよね。あの大粒の栗を、餡と一緒に頬張る瞬間は何にも変え難い。

続いて第二位

第二位:バームクーヘン

普通、御年賀というものは小分けで会社や営業所の人に配りやすいものがよいとされている中でホールのバームクーヘンというのは変化球すぎるかも知らないけれど、貰った側もそれなりに嬉しいのではと想像する。ショーウィンドウに並ぶバームクーヘンを見ていると、香ばしいバターの香りが漂ってきた気がしてたまらない。

そして映えある第一位。

第一位:酢豚

そんな訳、と思う方。一回試してみてください。都内百貨店地下の惣菜コーナーで照り輝く豚肉とタレを見た瞬間、よだれが垂れて来るはずでしよう。というのは半分冗談なのだけれど、そのもう半分ではスポットライトに照らされた輝かしい酢豚とそこから彷彿される甘い香り、それを頬張る自分を想像するだけでとても幸せになれるしできればその幸せを他の誰かと共有したい念にかられる。もちほん御年賀に酢豚なんて言語道断、史上稀に見るというか初レベルの出来事かもしれないが、要するに百貨店の酢豚はとても美味しそうだし(買ったことはないけれど)、貰って嫌な顔をする人もそんなにいないのではと勝手に想像しているだけである。


そんな妄想を抱きつつ、ヨックモックのお菓子セットに御年賀をつけて買いました。

皆様、改めて明けましておめでとう御座います。

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