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HRBPを始める人事の方へ 〜そうだ、スクラムを学ぼう〜
2024年ジンジニアアドベントカレンダーの記事です。
Scrum Inc. Japanで人事兼アジャイルコーチとして活動しています、庭屋と申します。元エンジニアではないですが、アジャイルコーチとしてエンジニア文化に触れることが多く、人事とエンジニア文化の橋渡しができたらと思い活動しています。
ここ数年人事領域で「HRBP(Human Resource Business Partner)」という役割が注目されています。HRBPは経営戦略と連動した人事戦略の実践者、と言われています。
これまでにない役割なので「どのようなスキルが必要か」そして新しいスキルを身につけるにあたって「スクラム」の知識が有効だと考えています。
「新しくHRBPの組織を作りたい。」「HRBPとして活動することになったけど何が必要かわからない」そんな方に対してこのブログでは「人事のメンバーがHRBPの役割を新しく担うにあたってスクラムの知識が有効だ」と考えているポイントをお伝えします。
HRBPの役割の整理
書籍『Mastering the Cube(最強の戦略人事―経営にとっての最高のCAO/HRBPになる)』ではHRBPの役割を以下の5つに分解できると述べられています。
ビジネス戦略の統合者
HR戦略をビジネス戦略と一体化させ、組織の成功に貢献する。
リーダーの信頼できるアドバイザー
リーダーやマネジメント層と連携し、意思決定をサポート。
組織変革の推進者
組織文化や構造を変革し、柔軟で競争力のある状態を実現。
エンゲージメントの向上支援者
従業員の意欲やパフォーマンスを高める施策を実施。
タレントマネジメントの専門家
採用、育成、評価、報酬といった人材管理を最適化。
この中で、4と5は当然これまでも人事組織が担っていた役割です。
1、2、3に関しては、もちろん今までの人事組織のミッションとして掲げている組織は少なくないと思いますが、HRBPとして活動するにはより具体的で組織に役立つよう実践力が求められると思います。具体的な実践力をつけるために「スクラム」の知識が有効と考えています。
補足:スクラムとは
「アジャイル」な考えを持った組織の業務運営手法の一つ。
自律的に活動するチームを作り顧客価値を素早く届けることを目標とするフレームワーク。
中でもスクラムマスターという役割は組織、チームにこのフレームワークを適応させ、ハイパフォーマンスな組織を作る役割です。
HRBPの新しい役割とスクラムマスターの共通点
スクラムガイドでは、スクラムマスターは「スクラムチームと、より大きな組織に奉仕する真のリーダーである」と定義されています。この使命は、HRBPの新しい役割として挙げられる「1.ビジネス戦略の統合者」「2.リーダーの信頼できるアドバイザー」「3.組織変革の推進者」と深く共通しています。以下、それぞれの役割とスクラムマスターの活動との繋がりと、スクラムマスターとしての実際の活動例を示すことで人事がHRBPとして新たにやるべきことの具体的なイメージをしてもらいます。
1. ビジネス戦略の統合者
HRBPがHR戦略をビジネス戦略と一体化させ、組織全体の成功に貢献する役割は、スクラムマスターがステークホルダーとチームの間にある障壁を取り除き、双方が円滑に連携できる環境を整える活動と一致します。
スクラムマスターは、チームがビジネス戦略の実現に向けて効率よく動けるよう支援します。
具体的な活動例:
チームの成果をHRの代表者、ビジネスリーダーなどと具体的にディスカッションする場を定期的に(例えば月次で)設けてHR戦略とビジネス戦略、実際に実施していることのすり合わせをしていきます。
2. リーダーの信頼できるアドバイザー
HRBPがリーダーやマネジメント層と連携して意思決定をサポートする役割は、スクラムマスターがチームの事業ゴールを明確化し、その達成に向けた管理方法や計画の策定を支援する活動と重なります。また、スクラムマスターは複雑な環境においても経験を活かし、柔軟で実践的な事業計画をリーダーとともに策定します。このように、スクラムマスターはリーダーが組織の目標を達成するための重要なパートナーとなります。
具体的な活動例:
戦略とやるべき仕事の策定はビジネスリーダーの役割です。計画を作るために現状ややるべきことを可視化して組織全体に浸透させたり、整合性を議論できるように情報を整理することでビジネスリーダーの意思決定をサポートします
3. 組織変革の推進者
組織文化や構造を変革し、柔軟で競争力のある状態を目指すHRBPの役割は、スクラムマスターが自己管理型で機能横断型のチームをコーチし、組織全体でのスクラム導入を支援する活動と類似しています。スクラムマスターはチームが変化を受け入れ、柔軟に対応できる能力を高めるためのトレーニングやコーチングを行い、組織変革を実現します。
具体的な活動例:
スクラムマスターは組織の戦略策定部分の支援だけでなく、実際に戦略を実行するチームの活動支援も行います。計画をただこなすのではなく、チーム自身が自律的に考え、事業ゴールの達成に向けて成果を上げるチームになるようスクラムを中心とした様々なフレームワークを適用しハイパフォーマンスなチームを作ります。
いかがでしたでしょうか?
(自分はスクラム信者なので多分なポジショントークもありますが)ご参考になれば幸いです。