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HamCup学園 oipy回顧録2

【第二部 - 会議への準備】

HamCupプロジェクトが注目を集める中、学校では重要な会議が開かれることになった。議題は、プロジェクトを公式に認めるかどうか、そしてWeb3時代の教育のあり方について。

私は、この会議にHamCupメンバーも同席させるべきだと考えた。彼らは問題の当事者であり、議論を聞く権利があるはずだ。しかし、他の先生方の中には、生徒の出席に反対する意見もあった。

「会議の内容は、高校生には難しすぎる。彼らを混乱させるだけです」
はんじょも先生が、真っ先に反対の意を唱える。

「いえ、彼らは自分たちの未来を決める権利があります。議論を聞くことで、プロジェクトの意義と責任をより深く理解するはずです」
私は、生徒の同席を主張した。

議論の末、ケイティ校長先生の判断で、HamCupメンバーの出席が認められた。会議の準備を進める中で、私は生徒たちに注意点を伝えた。

「君たちは、自分たちの言葉で思いを伝えてほしい。ただし、先生方の意見にもしっかり耳を傾けること。会議は、学びの場でもあるんだ」

ほんてぃ、むら、らーめん太郎、じゃむ、オズ、ほしこ、せん、丸腸、フクロウ、あこ、ぽんた。彼らは真剣な眼差しで頷いた。

会議当日、HamCupメンバーは緊張した面持ちで会議室に入ってきた。教師だけでなく、Web3の専門家も参加するこの会議が、彼らの運命を左右することになるのだ。

会議室には、ケイティ校長先生をはじめ、はんじょも先生、ひぐま先生、じんぺー先生など多くの先生方が集まっていた。さらに、ブロックチェーン技術に詳しいエンジニアや、NFTアーティストなどのWeb3有識者も招かれた。

「それでは、会議を始めます。まずは、HamCupプロジェクトについて、oipy先生から経緯を説明してください」
ケイティ校長先生の言葉で、会議が始まった。

私は、これまでの生徒たちの活動を詳細に報告した。NFTアートの制作過程、ブロックチェーン技術の学習、チームワークの醸成など、プロジェクトを通して生徒たちが成長してきた様子を伝えた。

「確かに、生徒たちの熱意と成長ぶりは評価できます。しかし、NFTやWeb3については、まだ課題が多いのではないでしょうか」
はんじょも先生が、懸念を口にする。

「NFTの価値は不安定で、暗号資産の扱いにはリスクもある。高校生がそこに深く関わるのは、危険が大きいと思います」

はんじょも先生の意見に、一部の先生方がうなずいた。しかし、私は生徒たちの可能性を信じていた。

「確かにリスクはあります。しかし、リスクを恐れるあまり、新しい挑戦を躊躇していては、教育者としての責務を果たせません」
私は、生徒たちの挑戦を支持する意見を述べた。

すると、ひぐま先生が私に賛同した。
「oipy先生の言う通りだと思います。生徒たちが自ら学び、成長する機会を奪ってはいけません」

議論は白熱していった。Web3の有識者からも、HamCupの取り組みを評価する声が上がる。

「HamCupは、教育現場でのNFT活用の先駆的事例になるでしょう。生徒たちの創造性を育むことは、Web3時代の教育に不可欠です」
NFTアーティストの一人が、力強く主張した。

議論が進む中、はんじょも先生が重要な指摘をした。
「NFTの売買には、暗号資産のウォレットが必要になる。しかし、高校生が個人でウォレットを管理するのは、非常にリスキーだ。マネーロンダリングや違法取引に巻き込まれる可能性もある」

はんじょも先生の言葉に、会議室が静まり返った。

じんぺー先生が口を開いた。「確かに、高校生個人でウォレットを管理するのはリスクが高すぎますね。では、どうすればいいでしょうか?」

ひぐま先生が意見を述べた。「まず、保護者名義でウォレットを作成し、管理してもらうというのはどうでしょうか?」

「それは一案ですね」はんじょも先生が応じる。「ただ、保護者の方々がWeb3やNFTについて理解していない可能性が高いです。説明と同意を得るのが難しいかもしれません」

「それに」ケイティ校長が付け加えた。「全ての保護者が協力的とは限りません。生徒間で機会の差が生まれる可能性があります」

じんぺー先生が別の案を出す。「では、生徒たちに専用のデビットカードを発行し、それを使ってウォレットを管理するのはどうでしょう?」

「良案ですが、未成年者名義でのカード発行には制限があります」はんじょも先生が指摘。「また、デビットカードと紐づけることで、過度の支出のリスクも生まれます」

「セキュリティの問題も考慮しなければなりません」ひぐま先生が言う。「個人で管理すると、ハッキングや紛失のリスクが高くなります」

「そうですね」ケイティ校長が同意。「また、取引限度額の設定や、取引内容の監視も必要になるでしょう」

議論が行き詰まりかけたところで、私が意見を述べた。

「これらの問題を考慮すると、個人でウォレットを持つのは難しそうです。では、別の視点から考えてみましょう。学校名義のウォレットを作成するのはどうでしょうか?生徒たちの活動を学校がサポートする形で」

「それは面白い案ですね」ケイティ校長が賛同の意を示す。「ただ、いくつか検討すべき点がありそうです」

「まず、保護者への説明が必要になりますね」はんじょも先生が言う。「暗号資産やNFTについて、保護者の方々にも理解していただく必要があります」

「それが一番の難関かもしれません」私が深刻な表情で言った。「暗号資産について理解していない人が多いのが現状です。生徒たちにやる気があっても、保護者の理解を得るのは難しいかもしれません」

「そうですね」ケイティ校長が頷く。「ただ、学校名義のウォレットを使用することで、全ての生徒に平等な学びの機会を提供できます。これは教育の公平性の観点からも重要です」

「なるほど」はんじょも先生が理解を示す。「個人のウォレット管理ではなく、学校の体制として取り組むことで、生徒全員が安全に学べる環境を整えられるわけですね」

「その通りです」私が付け加えた。「学校名義のウォレットを通じて、生徒たちは実践的にWeb3技術を学べます。これは将来的に彼らの大きな強みになるでしょう」

「それなら、保護者向けの説明会では、このプロジェクトが生徒全員に均等な学習機会を提供することを強調しましょう」ケイティ校長が提案する。「新しい技術を学ぶ機会を公平に設けることが、学校としての責務でもあります」

「そうすれば、個々の保護者の理解度に関わらず、全ての生徒が最先端の技術に触れられるわけですね」じんぺー先生も賛同の意を示す。

「では、学校の法人ウォレットに加えて、生徒個人のNFT保管用ウォレット、カストディアル・ウォレットと呼ばれるものも作成してはどうでしょうか」私が提案した。

「カストディアル・ウォレットですか?それはどのようなものですか?」はんじょも先生が興味を示す。

「カストディアル・ウォレットは、管理型ウォレットとも呼ばれます」私が説明を続ける。「これは通常の個人ウォレットとは異なり、NFTの保管専用で、取引機能は制限されます。学校が技術的に管理し、セキュリティを確保します」

「なるほど」ケイティ校長が理解を示す。「つまり、生徒たちは自分のNFTを'所有'できるが、学校が安全性を担保するということですね」

「その通りです」私が頷く。「これにより、生徒たちはウォレット管理の基本を学べます。さらに、卒業時のNFT移行もスムーズになるでしょう」

「素晴らしいアイデアですね」じんぺー先生が賛同する。「安全性を確保しつつ、生徒たちに実践的な学びの機会を提供できます」

「それと、セキュリティの問題もあります」じんぺー先生が指摘する。「学校名義とはいえ、誰がどのように管理するのか」

「複数署名ウォレットを使用してはどうでしょうか」私が提案した。「生徒代表と教師で共同管理する形で」

「それなら、一人で勝手に取引することもできませんしね」はんじょも先生も同意する。

「取引限度額の設定も必要でしょう」ケイティ校長が付け加えた。「過度な取引を防ぐためにも」

「あと、金融教育も重要ですね」私が言う。「暗号資産の仕組みやリスク、ウォレット管理の基本などを、きちんと教える必要があります」

議論が一通り出尽くしたところで、ケイティ校長が総括した。

「では、以下の条件で学校名義の暗号資産ウォレットとカストディアル・ウォレットを作成し、HamCupプロジェクトに使用することとしましょう。一つ、保護者向け説明会の開催。二つ、複数署名による共同管理。三つ、取引限度額の設定。四つ、暗号資産に関する特別授業の実施。これらの条件が整えば、生徒たちの活動を安全にサポートできるはずです」

全員が頷き、この案に賛同した。

議論は、次の論点へと移っていった。

「卒業後のNFTの所有権について、どのように扱うべきでしょうか」
私が、新たな課題を提示する。

「卒業後は、NFTの所有権を生徒たちに完全に移譲するのが筋だと思います」
ひぐま先生が、意見を述べた。
「彼らが制作したNFTアートは、彼ら自身の財産であるべきです」

「ただ、そこには法的な問題もあるでしょう」
弁護士の先生が、指摘する。
「未成年者の財産管理については、慎重に検討する必要があります」

「税務上の問題もクリアしなければなりませんね」
会計士の先生も、重要な論点を提示した。

技術的な課題、リスク管理の問題など、NFTの移譲には様々なハードルがあることが浮き彫りになっていく。

「移譲のプロセスを間違えると、トラブルに巻き込まれるリスクがある」
はんじょも先生が、危惧を口にした。
「卒業までに、しっかりとした移譲プランを作る必要がありそうだ」

「僕たちも、先生方と一緒に移譲プランを考えていきたい」
じゃむが、前を向いて言う。
「ブロックチェーンの勉強を重ねて、技術的な問題をクリアしていきます」

「移譲のルールづくりにも、積極的に関わらせてください」
らーめん太郎も、意欲的だ。

「卒業までに、移譲の問題を解決できるよう、みんなで知恵を出し合おう」
ほんてぃが、仲間たちに呼びかける。

「そのためにも、私たちがNFTやWeb3について深く学んでいく必要がありますね」
あこが、自覚を持って発言した。

教師たちは、生徒たちの成長した姿に感心していた。
彼らなら、きっとこの難題を乗り越えていけるはずだ。

そう確信した私は、生徒たちにエールを送った。
「君たちの熱意と才能を信じている。一緒に、最高のNFT移譲プランを作り上げよう」

生徒たちの瞳が、希望に輝いている。
彼らの挑戦は、まだ始まったばかりなのだ。

「本日の議論を踏まえ、HamCupプロジェクトを学校の公式プロジェクトとして認めることとします」
ケイティ校長先生が、最終的な判断を下した。

「ただし、ウォレットの管理は学校と生徒が協力して行います。そして、卒業時のNFT移譲については、専門家の意見を取り入れながら、綿密な計画を立てることを条件とします」

校長先生の言葉に、会議室が大きな拍手に包まれた。
HamCupプロジェクトは、新たなステージに突入したのだ。

会議後、私はHamCupメンバーを集めて話をした。

「君たちの未来を、心から楽しみにしている」
私は、生徒たちの奮闘をねぎらった。

「でも、これからが本番だ。Web3の知識を深め、リスクに備えながら、素晴らしいNFTアートを生み出し続けてほしい」

「そして、卒業後もその作品を守り抜く力を身につけてほしい」

「先生、ありがとうございます」
ほんてぃが、メンバーを代表して礼を言う。
「僕たちは、HamCupの精神を胸に、Web3の未来を切り拓いていきます」

「卒業後もNFTアートを守り続けること、仲間と助け合いながら前に進んでいくこと。その両方を、ここに誓います」

むらの言葉に、全員が力強くうなずいた。

放課後の教室には、新しい時代を担う若者たちの熱い思いが満ちていた。
彼らの瞳には、希望と決意の光が輝いている。

私は、生徒たちの未来を心から信じていた。
彼らとともに、Web3時代の教育の地平を切り拓いていく。
そう決意を新たにした私は、また歩み始めるのだった。

【第二部 完】

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