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変わること、変わらないこと、各々への恐れ

推していたお笑い芸人さんが解散する。

1月17日にお笑いコンビのパンプキンポテトフライが解散を発表した。
解散をするというポストを目にする前、私は一週前に配信された2人のラジオを聞きながら帰宅していた。
マイペースな山名さんに、悪態をついてヘラヘラ笑う谷さん。
高校の同級生だったという2人の絶妙な距離感のトークが好きだ。
なんだかめちゃめちゃおもろい同じクラスの男子の会話を盗み聞きしている気分になる。
そして、谷さんから出る鋭い言葉に時にハッとする。
彼は本当に頭がいいんだろうなと思う。
本当にいつもどおりの楽しいラジオだった。

解散はその一週後に配信されたラジオで発表されたらしい。
解散の経緯も話しているというネットニュースを目にした。
すぐに聞こうか迷ったけれど、ずっと楽しみにしていた旅行が2日後に迫っていることが頭をよぎる。
私はお笑いやロックバンドが好きだから、解散でショックを受けることは何度かあったけれど、その時一番推している芸人さんが解散するのははじめてだった。
それによって自分の心がどう動くかわからず、怖くなって、旅行後に聞くことにした。


2日後、大学時代の友人2人と鹿児島旅行へ向かった。

今回の旅行の目玉は、お宿。
雑誌で何度も目にしていた憧れの旅館。
少しお値段は張るんだけど、セールで飛行機の搭乗券が安くとれそうだったので思い切って誘ったら、快く来てくれた。

2人は大学卒業後もとても仲良くしてくれていて、月1回のペースで会い、年に1、2回はこうして泊まりの旅行に行っている。
こんなに仲がいいのに意外と趣味や好きなファッションはバラバラ。
だけど、不思議と話は絶えない。
きっとみんな好きなものは違えど、本だったり、映像作品だったりコンテンツによく触れているからだと思う。
そしてその中で色んな考え方に出会うから、日々の出来事も深く考えてしまう。

旅行中も話は絶えなかった。
今回の旅行は、旅館を楽しみたいこともあって、いつもよりゆったりスケジュール。
レンタカーを借りたのもあって3人だけの空間が多くなり、話す時間はいつもより多かったんだけど、それでも話は尽きなかった。

2人と話すのは本当に楽しい。
性格が違うからこそ、日々の何気ないエピソードトークでも深く考えた彼女たちの思いを聞けて新たな発見がある。
鹿児島の雄大な景色を一望できる温泉に浸かりながら、ダラダラと話していたら1時間以上経っていた。
少しのぼせながら、私は2人の変わらなさに感謝していた。

少し前に別の友人と会った。
彼女も好きなものがしっかりある人で、深く語れる友人の一人。
いつもほわほわと人生に悩んで語り合っていたんだけれど、久々に会ったら、仕事だったり恋愛だったりに対して前より安定志向になっている気がして驚いた。
よく話を聞くと色んな出来事が重なっての結果で、納得はしたんだけれど、なんだか寂しい思いもした。

2人は彼女と比べたら、自分自身の生活スタイルは激しく変化しているわけではないと思う。
私もそうだ。
仕事も恋人もここ数年は変わっていない。
でも、コンテンツには幅広く触れているし、世の中で起きる出来事へのアンテナも同世代に比べたら高い気がする。
こういうことに費やす時間をこの年齢になってもしっかり確保していることに尊敬するし、私もそうしなきゃと思わされる。

毎回2人との旅行の帰路では、またこうして旅行したいと思う。
お酒を飲みながらダラダラと話す月1回の定例会もなるべく長く続けたい。
そのために、私はコンテンツに触れることを続けたいと思う。
そして、わがままを言うと2人にもできるだけ変わらないでいてほしいな。



旅行から帰った今週、パンプキンポテトフライの解散報告ラジオを聴いた。

いつもどおり、山名さんのマイペースなエピソードトークと谷さんの鋭い合いの手から話が広がるオープニングトークからはじまる。
ひと段落して、タイトルコールが終わったのち、谷さんが突然、解散すると告げた。

山名さんがヘラヘラと笑ってくれるが、2人に気まずい空気が流れて、BGMも止まる。
谷さんが解散報告をポストだけして、理由をしっかり言わない芸人さんたちに毒づきながら、
「俺、ちゃんと言えやって思うんで…」
と、解散することになった経緯を話しだした。

解散の理由は、「山名さんが変わっていかないこと。」

これが適切なまとめ方なのかわからないけれど、私はそうやって理解した。

ネタを作って、平場の対応も評価されている谷さんに比べて、うまく立ち振る舞えず、それを改善するような努力もやれない、継続できない山名さんのキャラクターはラジオでお馴染みのことであった。
大きな課題なんだけど、ファンとしてはそれがパンポテのおもろいとこでもあるのかなと勝手に思っていた。

でも、ずっと一緒に仕事をする谷さんにとってはそれはすごく大きな重荷だったよう。
山名さんがなにもしないところ、仕事でうまく立ち振る舞えないところをピントを合わせないかのようにずっと目をそらしていたけど、自分も気付かないうちにそれがストレスとして蓄積していったと言っていた。
それが爆発しそうになって、これまでも何度か解散の話が出たとのこと。
その度に山名さんが「次はがんばる!」と言って、止めてきたんだけれど、結局変われず、谷さんが限界を迎えて、山名さんも止められなかったタイミングがこの解散のようだった。

谷さんの言葉は素直で、憎いくらい正直で、その人間臭さが愛おしかった。
彼の言葉で印象的だったのは、
「同級生コンビというのがまた弊害だった」ということ。
きっと養成所で出会った相方だったら、能力差によって上下関係が生まれて、谷さんは山名さんに強く指摘できたし、山名さんももっと闘争心を燃やせたのではないか。
でも、ビジネスパートナーである前に友達だからこそ、それがお互いできなかったという。

私の中で、好きなことは仕事にしないほうがいいという持論がある。
持論っていうか、よく言われることかもだけど…
やっぱり、人は自分の気持ちが入るものは冷静に見ることができなくなると思う。
だから、その好きなことを失敗したときの扱いがうまくできなくて、より大きなストレスになる。
谷さんの言う、同級生コンビの弊害はこれに近い気がしている。

鹿児島旅行に行った友人を思う。
彼女たちと私はビジネスパートナーとなったらうまくやれるだろうか。
いや、そんな余計なことは考えずに今の関係を変えず、みんなの雰囲気も変わらずこのまま仲良くしたいな。

パンポテの2人は解散したら、もう会わなくなるのだろうか。
こうして一緒に仕事をしなかったら、きっと不満に思うこともなく仲良くしていたんだろうな。
てかむしろ私が友人に思うように、谷さんも山名さんに変わってほしくないと思っていたかもしれない。

もやもやと色んなことを考えながら、ラジオを聴き終え、2人がこれからも仲良くいられますようにと願った。


こんなかっこつけたことを言ったけど、全然冷静じゃない。
まだまだ2人の漫才が見たかった、ラジオが聞きたかった。


変わらないでいてほしかった。


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