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二項対立から「二項対立の破壊」へ
今まで自分は、自分の成長を、「普通であること」と「ユニークであること」の両方への欲望という矛盾の克服から説明しようとしていた。
普通のファッションで、普通の人間関係を持ち、テストで普通の点数を取る自分を求めていた。
しかし、それと同時に、一目で自分と分かるような外見をし、すごい友達を持ち、テストで目立つ点数を取りたいと思っていた。
抽象的で、どうやっても達成し得ない欲望を持っていたのだ。
しかし、いつの間にか自分の思いは、普通と特殊の二項対立を破壊することに向いていた。
目前に迫り、ようやく発見されたその隕石は、二項対立の地表を散り散りにせんと、静かにその星へ接近する。
その隕石が放つ光は、普通と特殊という二項対立の矛盾を明々と照らす。
普通とは、人々の盲目性からもたらされる概念である。この世界の全ての人間に当てはまる特性など存在するはずがないからだ。
逆に言えば、普通とは、事実に対して積極的に盲目となり抽象的な他者を仮定しなければ、成り立つことのない概念である。多様性という事実は、普通というヴェールに覆い隠される。
普通というヴェールが隠すのは、他者の多様性だけではない。普通は存在しない以上、必然的に、個人が普通を恣意的に定義する部分が出てくる。
ヴェールは、見る角度により、その色と質感を変える。私たちは誰も、同じヴェールを見ていないのだ。
一部の人間は、そのヴェールから、なるべく遠くへ逃げようとする。それは、ヴェールへの大きな理由のない忌避感から起こる行動だ。
地表をどこまでも走り続ける。振り返り、まだ遠くへと走り続ける。そして、一部の人間はあることに気がつくのだ。その地表自体が、普通というヴェールで出来上がっていると。どこまで走っても、靴裏に張り付くようなヴェールの感触は無くならない。
さらに貪欲な者は、飛び跳ね、ヴェールを蹴り、一瞬の逃避を味わう。しかし、残酷な重力により再び地表へ押し返される。負けじと跳び続ける者は、遠くから見れば、布地を跳ねるノミのように見えるだろう。
この星では、無数の疾走と無謀な跳躍が繰り返される。その行為はもはや、特殊と呼ばれるだけのクリシェに成り下がる。
そして、普通というヴェールの信者は、その失踪と跳躍を「多様性」と呼び始める。地表の下に隠れた本当の多様性に、人類は未だ到達していない。
そんな星の歴史にターニングポイントを。地表を渦巻く苦しみを燃やしてしまおう。
隕石の熱と光は、星の大気への影響を強めていく。