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もしも、こんな奴がいたら【第2話 親友の定義】

今日は、14歳のサクラに会いに行った。

サクラは中学3年生。部活動はソフトボールをしていた。運動神経が悪すぎるサクラは、試合になんて1度も出たことがなかった。でも、サクラは頑張っていた。自分にできることを常に考えて。ベンチで何ができるだろう。やっぱり声だしかな。サクラは、全力でベンチから声を出し続けた。

そしたら、それを見ていた監督が言った。

監督:「サードコーチャーをしなさい。」

野球やソフトボールを知っている人なら分かると思うが、サードコーチャーって大事な役割なんだよ?サクラは嬉しかった。その日からサクラのポジションは「サードコーチャー」。

あまりにも頑張り過ぎて、地元の中学生の間で有名になっちゃったもんな。ソフトボールをやってる女子中学生は、みんなサクラのことを知っていた。「サードコーチャーの子」って。

サクラ、あんたはかっこいいよ。


「美優(みゆ)」っていう、サクラと同級生のチームメイトがいた。美優は、美人でソフトボールも上手くて、性格もとびきり良くて。みんなの人気者だ。1年生から3年生まで、ずっとクラスも同じだったのに、サクラは美優と全然話したことがなかった。どこか別の世界に住んでいるような気がしていたんだ。

秋になって、サクラたちは部活動を引退した。完全に受験シーズン突入。部活で推薦をもらう人もいた。地元の進学校には、ソフトボール部がないから、頭の良い人はソフトボールを辞める。本格的にソフトボールをしたい人は私立に行く。でも、地元に1校だけ “自称進学校” みたいな高校があった。そこにはソフトボール部があったから、サクラはその高校に少し興味を持っていた。ある放課後、私たち3年生の元ソフトボール部員が監督に呼び出された。

監督:「“自称進学校さん”から見学に来ないかと連絡がきた。ただし見学に行けるのは、いつも試合に出ているレギュラーだけだ。」

サクラは心の中で泣いた。見学に来いというのは、素質があれば推薦で取ってやるという意味だ。サクラは、もちろんレギュラーじゃなかったから、みんなの1歩も2歩も後でその話しを聞いていた。

監督:「ちょっと美優、こっちへ来い。」

ああ、監督は美優に行ってほしいんだ。そりゃ、そうだよな。美優、ソフトボール上手いし、愛嬌もあるし。当然だよ。

美優:「帰ります。」


え??美優は今、最大のチャンスを貰おうとしてるんだよ?なのに帰るだと!?


美優:「サクラと約束あるんで、もう帰ります。」


今度は、心の中じゃなくて本当に泣きそうになったよ。美優を抱きしめたかったよ。誰よりも強く。なんていい奴なんだ。ほとんど喋ったこともない美優との約束なんて、もちろん何もなかったけれど、美優はサクラの手を取って玄関に向かった。お互い何も喋らずに、ひたすら玄関に向かって歩く。

サクラ:「見学、行かなくていいの?」

美優:「え?」

サクラ:「だから、今の、、」

美優:「あの学校、別に行きたくないんだよね。」


この子だ。美優だ。一生大事にしよう。サクラは心の中で、そう誓った。

親友とは何だろう。こういう言葉にできない感情を感じさせてくれる人。サクラにとって親友は、そんな存在なんだ。


私は、14歳のサクラに優しく微笑んだ。

素敵な親友に出会えて良かったね。サクラ。


あなたにも、あなたを見守る妖精がいます。きっと、今日もあなたを見守っているはずです。

いつか、あなたに届きますように。
そして、あなたの素晴らしさが世界中のみんなに伝わりますように。

私の心の陽射しへ感謝を込めて。

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