もしも、こんな奴がいたら【第22話 大恋愛がしたかった①】
一人ひとり、違う人生がある。だからあなたとサクラを比べてはいけないけれど、サクラもあなたと似た経験をしたことがある。今日は、そんな若きある日のサクラに会いにいこう。
サクラよりも長い人生を生きてきた人が言う。愛かお金か。答えはお金だと。
一人だけサクラに現実を教えてくれた人がいた。彼もお金と言う人だった。嗚呼、これを現実と呼ぶのか。サクラはそう思った。
~19歳のサクラ~
金木犀の香りは、いつの間にかどこかへ行ってしまって、気づけば冬になっていた。次第に朝の空気が冷たいのがあまり前になってきて冬、本番になった。
冬。冬というと何をイメージするだろう。雪、クリスマス、正月、節分、みかん、お餅。色々ある。サクラの冬のイメージは、バレンタイン。サクラはバレンタインが大好きで大嫌いだ。
19歳のバレンタイン。ずっと幼馴染みで、仲良しだった彼に想いを伝えた。
答えはYESだった。嬉しかった。嬉しすぎた。ずっと好きだったから。お互いの親同士も顔馴染みだったから、少し恥ずかしさはあったけれど将来のことを考えれば最高の関係性だと思う。
19歳の若造が、何を恋だの愛だのって語っているのだと言ってしまったらそこまでだけれど。サクラは彼と結婚しようと決めていた。お互い学生だったけれど、二人で貯金もした。結婚の挨拶という程のものでもないけれど、ご両親に挨拶もした。大学が休みの日には、彼の家で過ごして、半同棲のような生活を送っていた。
大学を卒業したら結婚しよう。そう決めていた。収入を言い訳にしたくなかったから、お互い公務員を目指した。私たちは無事に公務員になることができた。
大学卒業が目前となったある夜、彼から電話がかかってきた。いつもの様に「もしもし?」と電話に出たが、返事が返ってこなかった。もう一度「もしもし?」と言うと、小さな声で「ごめん。」と言われた。
私:どうしたの?
彼:ごめん。本当にごめん。
私:何?
嫌な予感がした。嫌な予感しかしなかった。
私:何?言って?
彼:別れたい。
嫌な予感が的中してしまった。
私:どうして?
彼:ごめん。
私:、、、
普段は理由まできちんと伝えてくれる彼が、「ごめん。」とだけ言い続けていた。
私:、、、。わかった。今までありがとう。
自然とそう返事をしてしまった。若造の夫婦ごっこが終わった。サクラはどっと疲れた。悲しいとか寂しいという感情ではない、虚無感のような感情になった。後日、荷物や貯金の半分を引き取りに彼の家に行った。淡々と支度をし、「ありがとう。」とだけ言って合鍵を返した。
誰とも結婚はしないと決めた。疲れるだけだ。
けれど、26歳のある日、サクラはある選択をすることとなる。
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この続きはまた今度。サクラ、あんたは強い女だよ。
あなたにも、あなたを見守る妖精がいます。きっと、今日もあなたを見守っているはずです。
いつか、あなたに届きますように。
そして、あなたの素晴らしさが世界中のみんなに伝わりますように。
私の心の陽射しへ感謝を込めて。